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スマホアプリで俺が創った女神様そっくりの美少女が転校してきた。  作者: 坂井ひいろ
第四章

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052 彼女にひかれた瞬間

 僕の名前は富山修とみやま しゅう。県立山瀬南高校二年一組に在籍している目立たない男子高校生だ。クラスメイトにはネクラ、ボッチ、オタクと陰口を言われているようだが、まあ事実だから、今更、そのことについてどうこう思うこともない。


 勉強は大嫌いだし、スポーツはもっと嫌いだ。正直、リアルの世界なんてまるで興味がない。こんな僕は、実は裏の顔を持っている。ハンドルネーム『クマキチ』。僕が日常のほとんどを過ごすネット上の名前だ。


 何故『クマキチ』かと言うと、保育園の時に、周りにそう呼ばれていたからだ。丸っこい体がクマの縫いぐるみみたいでキュートだと、近所の女子高生に良くハグされたものだ。坊主刈りの頭をナデナデされて『気持ちいいと』うっとりするお姉さんたち。


 思えば、あれが僕にとっての唯一のモテ期だった。クマの縫いぐるみの体系のまま成長した僕に、小中高と興味を示すリアル女子はいない。だが、寂しくなんかない。僕には僕だけのことを愛し続けてくれるバーチャル美少女、僕が作った黒木くろきアイがいるからだ。


 決して僕に愛想をつかすことも、裏切ることもない存在。歳をとることもなく永遠に僕を愛し続けてくれるアイドル。僕はそれだけを求めて続きて、遂に永遠の美少女育成アプリを開発した。


 今も僕のスマホの中でバーチャル美少女、黒木アイがすやすやとお休みしている。少し釣り目の子猫みたいな切れ長の瞳を持ったツンデレキャラ。黒々とした長い髪とファッションモデルのような長い手足。絶世の美女とはまさに彼女のことを指す。


 リアルな世界なら近づきがたい存在が、僕のゲーム話やアニメ話にうんうんと楽しそうに頷いてくれるんだぞ。キモイとかオタクとか罵られることもない。そんな夢のような世界を僕が創ったのだ。


 アプリの公式販売サイトで売ったら大ヒット。預金口座にお小遣いが目の飛び出すくらいの金額で溜まっゆく。一石二鳥って言うのはまさにこのことだ。あーあ、くだらない授業を終えて早く家に帰りたい。僕のアプリのデフォルトキャラ、黒木アイと早く遊びたい。


「二年一組のみんな。今日は転校生を紹介するぞ」


 教壇に立った担任の横にネクラそうな女子が一人、立っている。牛乳瓶の底のような厚メガネ。ひざ下、十センチの野暮ったい制服の着こなし。髪を丸めて無造作に後ろに束ねただけの田舎女子みたいなヘアスタイル。彼女が黒板に名前を記した。


「黒木アイ」


 まったく興味も抱かなかったリアル女子の転校生。だが、その名前だけは許せない。僕の天使様と同じだと。しかも、僕の黒木アイとは真逆の地味っ娘だ。ふざけやがって、これだから現実は嫌いだ。僕の夢を壊さないでくれ!


 彼女は、挨拶もそこそこに背中を丸めてササッと自分にふられた席についた。ぬっ。転校生なのに全く注目されていない。空気みたいなやつだなー。まあ、ネクラ、ボッチの僕も似たようなもんだけど・・・。


 休み時間も、お昼休みも黒木アイは一人ぼっちで過ごしている。気がついたら、大胆にも僕は彼女に話しかけていた。なんとなく彼女から流れ出るオーラが僕と同類の気がしたからだ。


「あのー。黒木アイさん。ゲームとかする?」


「しません。私に話しかけてこないでください」


 牛乳瓶の底のような厚メガネの奥の瞳が、キッと僕を睨み付けてくる。あれっ、ツンキャラだったか。でも、なんだろう。田舎臭いカッコして素顔を隠しているけど、近くで見ると凄い美人じゃないか。


 僕は美少女育成アプリのパラメーターを変換するみたいに、妄想上で彼女のメガネを取り去り、束ねた髪を解いた。うーん。僕のバーチャル黒木アイにそっくりだぞ。小中高と、リアルな女性に興味を持つことが無かった僕がはじめて彼女にひかれた瞬間だった。

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