047 未来の寝顔
リアル神崎未来とリアル黒木アイの持つ二台のモンスターマシン、スーパーコンピューターはネットにつながるあらゆるインフラを監視している。AIの黒木アイだけじゃなく、クラッカーやテロリストからの深刻な攻撃を防御して駆逐している。その事実は現代社会でのほほんと暮らしている人々は誰一人として知らない。
この世界は既に未来から来た二人によって守られているのだ。そればかりか、この先人類が投げ出す、環境問題やら人口問題、地域戦争やテロの問題までリアル神崎未来とリアル黒木アイは対処しようとしている。二人は未来から訪れた人類の救世主なのだ。
あれから夏が過ぎ、秋が訪れた。俺は両親を説得して未来のマンションで暮らしている。どんな説得をしたかって?それは俺のプライバシーにかかわる問題なのでほっといてくれ。まあ、父さんは、こんな美人が・・・、と未来を見てのけ反ったけど、母さんはノリノリで送り出してくれた。
結局二人は、食費やら何やら口減らしをしたかったのか、俺の親権をあっさり放棄して未来に託した。俺に対する信用は未だにゼロだが、未来のチートで俺が様変わりしたことにより彼女に対する信頼は絶大なものがあった。
まあ、こんな出来た嫁を逃したら、オタクボッチになりかねない俺なんかを、この先に好きになってくれる女子なんて現れないと踏んだのかも知れない。高校生の同居生活はネットのラノベあたりでは人気になっているが、実際にはそんな暮らしをしているやつは、そうそういない。
「良いよなー。同居生活なんて羨ましい」
イケメンの幸田一馬と遊びに来ている幼なじみの矢島萌奈美に俺は反応する。
「同居生活じゃない。俺と未来は結婚しているから新婚生活と言ってくれ。法的にまだだが親も認めているし、なにより心の絆でガッチリと結ばれているから問題ない」
「あーあー。一馬、萌奈美、もう待てないよ。早く結婚しよ」
萌奈美が一馬に駄々をこねている。ほんまうざいわ、こいつ。一馬が萌奈美の成長を待っているのも良くわかる。一馬が適当に萌奈美を扱うものだから、かまって欲しい彼女は未来へと。
「ねー、未来ちゃん。大樹と未来ちゃんの赤ちゃんは何時見れるの?」
ぶっ。俺は口に入れたコーヒーを吹き出してしまった。
「あれれー、その反応。大樹、まさか、まだ未来ちゃんに何にもしてないとか。夫婦なのに変じゃない」
俺は顔を真っ赤にしてうつむいている未来の顔を覗き込んでから、悪戯そうに小動物の笑みを貼り付けた萌奈美と対峙する。
「他人の夫婦生活に口を出すな、萌奈美」
「だって、大樹がいなくなって寂しそうにしている大樹のお母さんを相手にしているのは私だぞ。大樹のお母さんは、そりゃーもう、首を長くしておめでたをまっているんだから。昨日なんて大樹のお母さんに付き合わされてベービー用品店に行ったんだぞ」
くっ。俺の母親は何かと言うと、俺より萌奈美を頼る。萌奈美は兄妹でも、彼女の娘でも何でもない。単なるお隣の娘だと言うのに。
「大樹、気にすることないから。ご近所づきあいは大切だもんな。で、大樹のお母さんからの未来ちゃんに伝言」
萌奈美は俺の方からプイっと顔を逸らして未来を見つめる。
「未来ちゃん。大樹はヘタレだから男の子の相手は無理。女の子の孫をよろしくね、だって。大樹のお母さん、娘みたいな孫を抱いて近所に自慢するのが夢だって言ってたよ」
未来の顔が益々赤く染まる。萌奈美のやつ言いたい放題だ。一馬、何とかしてくれよ。萌奈美の手綱はちゃんと握ってくれ。暴れ馬になっとるぞ。
「俺も未来ちゃんの赤ちゃんが見たいなー。美人の未来ちゃんの赤ちゃんならテレビで見る子タレなんかよりも可愛いんだろうなー。楽しみだ」
目じりが垂れて一馬はイケメン顔が台無しだ。どんな時でもイケメンをキープするあの一馬がだ。萌奈美の毒が回ってきていないか。いや、それより病気が出たか。
「隠れロリコンの一馬には絶対に見せん」
「ろっ、ロリコンじゃないからな。俺」
慌てふためく一馬の横で未来が一言。
「あのー、大樹。私、大樹みたいな男の子が欲しい」
未来、そうなのか。男の子かー。俺と未来の子供、可愛いに決まっている。って、それ。爆弾発言だよね。今晩こそ夜這いしちゃうぞ!と、言いたいのだが女神様みたいな美しい寝顔を見て手を出せるやつなんかいるもんか。えへへ。未来の寝顔を見たことある奴はこの世で俺だけだ。




