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014 バーチャル神崎未来

 土曜日の児童公園。最近の子供たちはゲームに夢中で公園なんかじゃ遊ばない。てことで、ポカポカ陽気の春の日差しを受けながら、ボッチの俺は、公園のベンチに座ってスマホをいじる。家に引きこもっていると母親に何を言いふらされるか分かったもんじゃない。


「大樹は自分をアピールするのが下手すぎだ」


 俺は何故か美少女育成アプリの神崎未来かんざき みらいに『育成』されていた。こんなアプリがあって良いのか?立場が逆だ。てか、機械の『育成アプリ』に人付き合いのレクチャーを受ける俺ってどんな存在なのだろう。


「私、大樹の為に世界中のマーケティングやコーチングの本を読んだよ。これから大樹には私に相応しい男子になってもらうから」


「相応しい男子って?」


「大樹が私のスペックをマックスに設定したので、このままでは何時までたってもイベントが先に進まない。大樹のスペックアップを要求するわ」


 スマホの画面の中の神崎未来は少し膨れた顔をする。始めて一週間も経っていないのに何かキャラが超絶進化していない?表情とかどんどんリアルになってきている。最近のゲームって凄いわ。AI様さまだな。


「ゲームのイベントのために俺のスペックを上げるのか?そんなに簡単に上がるなら苦労しない。それこそ俺はゲームじゃないし」


「大丈夫。私がついているから。知能もメンタルも、肉体だってファッションだって変わろうと思えば変えられるんだよ。その為の知識はネット上に幾らでもあるし。私は大樹の家庭教師であり、スポーツトレーナーであり、メンタルカウンセラーになることにしたの」


 うおっ。自信満々のその顔。美少女育成アプリの神崎未来、目力めじからが半端ない。てか、そんな微妙な表情まで作れるのか。マジ、スゲーわ、最新テクノロジー。俺らが大人になる頃は仕事なんて無いかも・・・。親父も会社のAI人事に評価されることになったって嘆いていたしなー。


 それにしても超絶真面目女子の女神様、お節介キャラに進化したのね。ツンツンキャラからツンデレキャラになるかと思って期待した俺がバカだった。しかし、こんな底辺スペックの俺でもハイスペックに変われるのだろうか。


「では、まず手始めに大樹のイメージ改革を行うから。人はなりたい自分を見つければそれに向かって努力できるんだぞ」


「人は外見よりも中身で勝負じゃないのか?」


「そんなことを言う時代は過去だよ。人は生まれながらに不平等なんてのは小学生でも知っているぞ。努力することを楽しめる人間が最後は得をするんだから」


 くっ。それは薄々感じていたが・・・。教育者の言う事じゃない。って言っているのは美少女育成アプリのキャラだけど。言っていることは間違っていなしい、取りあえず進めてみるか。


「で、俺は何をするんだ?」


「先ずはスマホのカメラで自撮りしてね」


「こっ、こうか」


「はい。顔のアップの次は全身。私の言う通りにして」


 俺はアプリの神崎未来に言われるまま自分の写真を撮った。公園で一人、スマホと会話しながら自撮りし続ける高二の男子。他人に見られたらかなり気まずい。


「はい。それではこの写真を使って、理想の常田大樹ときだ だいき像を創り上げるから。見ててね」


 スマホの中の、緩んで茫洋ぼうようとして捉えどころのない俺の顔が、少しシュっとしたかと思ったら、みるみるうちに精悍せいかんな顔つきになっていく。ボサボサの髪は整えられて、最近生えてきた無精髭もきれいに消えてなくなる。モヤシみたいだった体は背筋のピンとした細マッチョに。服のセンスも変わってメンズ雑誌のモデルみたいだ。


「こっ、これが俺なのか?」

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