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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第7章
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81話 代償と事態の加速






「気絶したのを覚えておらんのか?」


「確かに一瞬意識は飛んだ気がしたが。数時間じゃないのかっ!?」


「数十時間以上目を覚まさんかったぞい。」


「.........マジかよ。」



俺は絶句した。実際は外の時間で一日程はピクリとも動くことが無かったという。なので今はユリナと別れたあの夜から一日経った同時刻辺りだと言う。



「狼狽える主は珍しいのう。」


「........。」



今まで見たことがない程挙動不審だったのか爺は最初笑っていたが不思議そうな表情に変わる。



「取り敢えず何か言い訳考えとくか。」



何か爺に言われている気がしないでも無いが一切合切頭に入ってこない。今は目の前の問題を処理するのに精一杯だ。



「っ! 爺俺はやること思い出したっ! 今すぐ行くから二人のことよろしく頼む。」


「分かったのじゃ。」



そそくさと転移を発動させ辿り着いた場所はエルシリラの自宅。急いで地下室に向かい探し物を始める。見つけ出したそれは俺のもう一つの力とも言える。結晶化されているそれを指輪に変化させ身に付ける。魔王として封印していた力を解放する鍵ともなるそれは記憶を思い出した時に存在も思い出した。それは珍しく厳重に箱に入れてあった。



「ああ、そういえばこれは大事なヤツだからとか言ってサラが気を使って入れてくれたんだっけか。」



懐かしさに駆られ箱を眺めていたが急いでいたことを思い出し、動き出すが。



「......どこに飛ぶか。結構な問題だった。」



少し頭を抱えたが他の人から目立たずこっそり戻れそうな所は心を映す、あの庭園位だ。心では無く、魔力と言い換えても問題ないのだが。あそこは基本的に人の出入りが滅多にない。というのも表向きは俺が手入れしていることになっているからだ。通路には面しているが中は隔絶した空間の為、中からは見えても外からは見えないし何も考えず入ろうとすれば表面上の綺麗なところしか見れない別空間だ。幾つもの空間が重なり合い入る人物を必要な所へ運ぶ。そういった裏の設定があったりする。高度な技術が故に言いふらしていない。魔法技術が関わっているからだ。



「空間系の魔法を使えるなんて大っぴらに言えないし仕方ないか。」



ため息をついて転移を発動させ庭園の噴水上に降り立つ。



「って、濡れる、濡れる。」



乱れていた心が落ち着いたせいかあの時の枯れた姿は無く、そこには綺麗な噴水から澄んだ水が滴り落ち、花の蕾が辺り一面に見える。咲いていないのを見ると、まだ完全にはコントロール出来ていない証拠だ。


退避して降り立ちながら噴水をボケっと眺めていた。すると急に後ろからどつかれる。



「ぐっ。」



どつかれたという表現は少し違う。この場合は抱き締められたといった所だろうか。ギリギリと力を入れている気がしないでも無いが野暮な事を言う場面でも無いので自重した。



「.....いつもっ......急に......居なくならないで....下さいっ。」


「今回ばかりは申し訳無いと思ってるよ。それにしてもよく俺だって気付いたな。変わってるのに。」


「見た目は変わってても本質は変わってないですもん。だから分かりましたっ。」


「驚かれると思ったんだけどなあ。」


「残念でしたっ。」



そう言って彼女は離れたので俺は後ろを振り返る。



「おかえりなさい、ノトさん!」


「ただいま、ユリナ。」











「なんで正座させられてんの、俺。」


「それは自分自身が1番わかっているかと思いますが。」


「勝手に居なくなったのは謝っただろう。」


「それが常習だから怒ってるんですよ。何回かやって理解していると思ってた私が馬鹿でした!」



庭園で感動的(?)な再会を果たした後、諸々変わっている事は無視され説教されている。思い当たる節が有るので強くは言い返せない。



「まあ、もう良いです。諦めました。なので、そうなった経緯を説明してもらっていいですか?」


「軽いなあ。」



扱いが今更じゃ無いほど雑になっている状況に何とも言えない気持ちを抱く。深く考えず掻い摘んで話す。



「これはその代償だろう。」













『代償』。長かった前髪も後ろ髪もバッサリと切り落とされ、肌が見えている所には蔓のように不規則に紋様な様なものが浮かび上がっている。それは時折血液巡っているかの如く怪しく光る時がある。身体中を張っているそうだ。それに、魔王である証明になる魔眼を隠しもしないその格好にどれ程の決意を強いられたんだろうか。



「痛みは有ったがなりふり構って居られないからな。必要だと思うことを選択して此処に居る。」


「それ、は。」


「ん?」


「私が強いてしまった事、でしょうか。」



さっきのように面と向かって顔を合わせることが出来ない。俯いていた私にいつの間にか立ち上がっていたノトさんが優しく頭を撫でる。



「俺が二百年程前に先送りにした事のツケが回ってきただけだ。だからこれは俺自身の問題でユリナには関係ない。って言うと突き放したみたいで言い方悪いか。なんて言うか、その、あれだ。」



言い淀んだ後思いついたように言葉を続ける。



「弱いとこを見せたくない、からだ。」



恥ずかしそうにもごもごと言ったその言葉に目をぱちくりさせる。思わずふふっと笑みが零れる。



「そういう所も含めてノトさんですから今更失望とか、悲哀にくれたりしませんよ。」


「良いんだか、悪いんだか。」


「強くなったと言って欲しいです。」


「はいはい。ちゃんと認めてるよ。」


「ありがとうございます。」



そして、もうひとつ。様子がおかしい所がある。何とか平静を装っているがぎこちないその動きは目に付く。



「ノトさん。」


「ん?」


「右手、というか右腕どうしたんですか?」


「.......別に普通だが?」


「普通だったら聞きません。」



違和感。右腕はそこに存在している筈なのに殆ど動きが無い。というのも無理矢理動かしている様に見えたのだ。だが当の本人は理解していない。演技かと思ったが本心から言葉の意味を理解していなかった様子だった。



「......なんでもないです。気の所為だったみたいです。」



静寂に包まれる。私もノトさんも何を言うべきか、どうなるかを覚悟して黙っている、と思う。だが、それは私の大事な事を思い出した事実で破られる。



「思い出したんですけど。」


「何をだ?」


「非戦闘職を含めて召喚された皆がノトさんが不在の間に此処に到着したそうなんです。一同に各国の主賓が集まっているとの事でファーリアさんが計画していたらしくエルシリラの王様達とは別で来たそうです。何でも顔合わせをして世界の危機を乗り越える為の作戦を立てろとの事らしいです。」


「......分かった。」


「やけにあっさりですね。驚かれるかと。」


「いや、ファーリアは昔からそういう所があるからな。何となく予想は付いていた。」


「成程?」



昔から。それはノトさんにとってどれくらい昔なのだろうか。あまり深く突っ込んでいいものか悩む。



「それじゃあ、こんな所で油売ってられんな。」


「.............。」


「どうした?」



立ち上がって伸びをするノトさんは私が黙って動かないのを不思議に思い顔を覗き込まれる。



「いいえ、なんでもないです。」



何も言わなかった事に関して怪訝な顔を見せたが特に突っ込まれなかった。


執務室に戻ると意外にも怒ってないルピさんとレイトさんがいてスっと傅く。仰々しいように見えるが威圧感というか雰囲気が変わったせいだ。勿論さっきも言った通り彼自身の本質は変わらないので分からない訳では無い。今までも強さが桁違いだったが今はそれ以上。底知れない力を纏っているのが分かる。



「今、戻った。準備が出来ていればこのまま向かう。」


「済ませております。」


「何時でも可能です。」


「そうか。では行こうか。」



決意し彼らが集められている場所へ行こうとするとバタバタと執務室の外が騒がしくなりドアがノックされる。



「失礼します!」


「何用だ?」


「地下牢に入れていた黒髪の女4人が脱走し、行方を眩ませました!」


「何だと?」


「街中を捜索していますが未だ発見できず! 大変申し訳ありませんっ!」



脱走。あれだけ厳重に見張られた中どうやって。誰かが協力をした?



「謝罪は要らない。何処にいるかの目星は付いている。放っておいて良い。捜索を取り止めて構わない。」



「はっ! そのように伝達します!」と言って去っていく気配を感じたあと私はノトさんを見て質問をする。



「分かってるんですか?」


「ああ。そして何を企んでいるかも知っている。急く必要性は無い。最後のピースが揃わないと関係ないからな、今は。」



そう言ってノトさんはルピさんとレイトさんに目配せする。その意図を組み2人は姿を消す。



「んっ!?」


「彼奴らには調査に言ってもらった。他にも強者たる奴らは居るし今の俺であれば......大丈夫だろう。」



少し間が有ったが実際の強さを感じるので何も言えない。黙っているとドサッという音と共に椅子に腰掛けるノトさん。静かに目を閉じている。


私は対面式に置いてある椅子に腰掛け目を閉じているノトさんをじっと見る。謁見は良いのだろうか。待たせている筈だと思うけど。



「魔王様。」


「ああ、早かったな。」


「それが.......。」


「魔王様が目星を付けていた場所に行こうとしたんすけどその前に待ち構えていたアンデッド使いが居て邪魔されたっすよ。」


「ほう。」「え!!」



アンデッド使い。それは神楽優君の事だろうか。



「ユウと名乗った彼が魔王様にこれを渡して欲しいと。」


「吃驚するくらい敵意無くて拍子抜けっすよ。思わず受け取って姿を晦ましたのに、追いかけるのを忘れたくらいっす。」


「それはレイトだけです。私は警戒に当たっておりましたが隠れるのが得意なようで見失いました。」


「同僚から裏切られたっす。」



優君。確かにユウとも読める。そんなことを考えているとノトさんはルピさんから渡された手紙を開け中身を読んでいる。


私も脇から見る。意外にもノトさんは見せてくれた。




『魔王様

御存知でしょうが彼女ら異世界人の()()使()()達をお預かりしています。残念ながら贄には魔力量が足りず困っていますが。『魔の叡智』の組織されている構成員は殆どが200年前の生き残りから形成されています。彼ら、彼女らは魔王を渇望しております。勿論それには僕も含まれると考えて頂いて問題ないでしょう。話はそれてしまいましたが貴方様を完全にお迎えする為に足りない欠片を.......』




「今、奪わせて頂きます.....?」



そう綴られた文章を読み切ると手紙を意思が持ったように蠢き始める。それを意を介さずに焼き尽くすノトさん。



「あの悲劇を繰り返すものか。しかも『理』を正しく理解しているか。面倒だな。」


「『理』って魔法使いを隠す為の奴ですよね? 最初の方に教えてもらった『魔女狩り』からの。」


「ああ。正しく言うと.......」



言いかけたその言葉を最後まで聞くことは叶わなかった。最も安全であった場所なのに部屋に一瞬で何かが入って来て私はそれに捕まる。それを一瞬察知出来ず一拍遅れて気づいた3人は何かに囚われた私を助け出そうと動くがその光景を最後に瞬間強い目眩を起こし暗転した。











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