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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第7章
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80話 狂乱前と覚醒




「.......疲れた。」


「そりゃあ、あれだけ動き回って奇声発してれば疲れますよ。」


「奇声?」


「あ、うーん。そう聞こえる音声だったっていう事です。実際何喋ってるか聞こえなかったもんで。」


「ふーん。」



聞いた癖に興味無さそうな返答を返すノトさん。別に私も気にならない様子ならば何も言う気はないけれど。




時間は少し遡りスイッチが入ったノトさんと割かし互角の戦いを見せているレイトさん。そして、いつの間にか駆り出されたルピさんはレイトさんと息の合ったコンビネーションで戦いに臨んでいる。


それを見ながら考え事をする。


実際に当事者から聞くというのは現実的に不可能である。私はそう考えていた。


被害者からも加害者からも聞いた情報はメディアによって面白おかしく報道されるものだ。その方が視聴者が増えるから。ただの偏見に聞こえるかもしれない。


でも実際を聞いてしまった以上はそう感じさせる。良い事も悪い事も分からない子供という事実さえ知りえなかったのだ。誰しもが口を揃えて外見上でしか見ていない。可哀想だの、自分たちは悪くないだとか。


物心ついて色んな角度から物を見れるようになって。


何て勝手な物言いだろう。そう思った。その時は背景を知らなかったというものの自分なりに考え疑問を持ってはいた。結局正しいことなんて分からなかったけど。


現実は何時だって楽しいことや嬉しいことばかりではない。



「産まなきゃ良かった。」



そうも言われたそうだ。その言葉はあまりに残酷だ。子供は親を選べない。好きで生まれてきた訳では無いのだから。選択権が無い状況でそんな事を言われて平常通り生きられる人は少ないと思う。


それなりに両親に気に掛けられている私にとっては想像しにくい事ではあるがそれでも学校では孤立していた私は何となく気持ちは分かる。


孤独は辛い。特に周囲に温かく手を伸ばしてくれる存在がいなかったなら尚更だ。心無い言葉は見えない傷を作っていく。見えない以上はどうすることも出来やしない。


彼の母親は分かっていたのだろうか?


世間からの糾弾をされにくい方法を。


何て残酷なんだろう。



まあ、当事者じゃないから何とでも言える。私も、誰も彼も本当は何も言えない。言ってはいけない。まだ子供だっただろう?と言ってくれる人達がいても私はその言葉をただ受け入れることは出来ない。





「......ナ、ユリナ?」


「え?」


「何度も声、掛けたんたぞ? まあ、考えてることは想像つくけどな。気負わなくていいぞ。」



苦笑い気味な表情を浮かべて頭をポンポンとしてくる。



「理不尽ですよ。」


「この世の中、理不尽だと感じない奴の方が少ないだろうさ。」


「確かにそうでしょうけど。」



いつの間にか城の最上階に着き和風な雰囲気の趣ある庭園の端に設置されたベンチに向かう。私に腰掛けるよう促し、ノトさんは向かい合うようにして手摺りに寄りかかりじっと見てくる。



「嫌な事実でも受け入れるしか無い。過去は不変だし、そもそも過ぎた事だ。」


「.........。」


「それなりに肩書きが多いものの楽しく過ごせてる。それで充分、いや俺には充分過ぎる。これ以上は何も望むまい。」


「望む事は悪いことじゃないと思いますけど。」


「望んだら何かが欠けそうだ。」


「それは、何かが欠けるのを示唆してますか?」



神妙な顔をしていたノトさんは私の質問にピクッと反応をする。結局何が欠けそうなのかは口には出すことは無かった。空を見上げ真夜中の変わらず輝く星を眺めていた。



「.........多分、俺の事で命を落とすやつがいる。それが誰かも分かっている。」



小さな声で呟きを洩らす一言一言に耳を傾け黙って聞いた。そうすべきだと思ったから。



「さて、朝になる前に部屋に戻ろう。」


「そうですね。明日に支障が....って。もう日が回ってますかね。 」


「ユリナ、先に戻っててくれ。」


「何する気ですか?」


「ただの報せを送るだけだ。戦いに備える準備をするべし。とな。」


「......はい。先に戻ってますから早く帰って来てくださいね。」



私は学習したはずなのに。忘れてしまっていた。神妙な時ほど何をするか読めないし分からない。平気で嘘をつく。


今までは何となく表情や声音で察することが出来たがクラスメイトとそれなりに和解し、神経をあまり尖らせなくなった影響か、ノトさんが隠すのが上手くなったのか。




翌日、部屋にはノトさんの姿はなかった。











「すまない。暫く戻る気は無い。」



誰に言うでもない独り言を呟き手を振ってユリナを見送ると俺は転移を発動させる。



「また何も伝えずに来たのかのう?」


「今回は伝える訳にはいかないからな。」


「可哀想に。」


「嬢ちゃん心配するだろうに!」


「お前らも居たのか、丁度いい。」



俺の師である賢者の爺の元に転移した俺を迎えたのは、三人。


賢者。


同じ魔法使い、サラ。


脳筋機人、ヴェロック。



「今度は何を頼むのかしら?」


「何も。」


「何だ!? お前にしてはしおらしいなあ!!」


「殺し以外の頼みなら聞こうかのう。」



爺が空気を一転させると周囲が息苦しくなる。特に俺へのプレッシャーが半端ない。冷や汗が出る。



「....んな事これから先も頼むつもりはねーよ。」


「なら良い。それでは用件を話してくれるかの? 儂はともかく彼らにはやる事があるんじゃからな。」


「そんじゃ、手っ取り早く状況を見せるわ。」



通常、魔力は心臓に溜まってるというか残留しやすい。魔法を、魔術を使うのに全身を血液と共に巡るからだ。だから『魔』の力は一番影響を受けると言われている。


上半身、とまでは曝け出してはいないものの左側だけ身体を見せる。それに対しサラとヴェロックは静かに喋る。



「魔王の特徴は心臓がある左胸が黒色化、実際は紫色っぽいけれど、変色し、蔓のように全身へと至り、脳を侵食される、だっけ?」


「後は、見境無く襲う化け物と化す。」


「ああ。封印と俺自身の力で留めていたが片方に欠損が出て抑えられなくなった。」


「.......何時からよ。」


「バルディアに来る少し前に気付いた。まだここまで進んで無かったけどな。」



思わず溜息をつき、ドサッと床に腰を掛けると不思議そうな表情を見せる三人。



「焦ってないのね。」


「死ぬつもりかと思いきやそうでも無さそう出しなっ!」


「じゃが、どうするつもりじゃ?」


「さあ、どうするかなあ。過去にこんなこと無いんだろう? 自分の力を高めるしか無いかなと。」


「.....それで此処かー。」



サラが納得顔を見せる。



「覚悟はできておるのかのう。」


「じゃなきゃ来ない。」


「......何を言っても折れそうに無いのう。決意が篭っておるわ。早速取り掛かるかのう。二人とも配置についておくれ。」


「「はい、賢者様。」」



俺を取り囲むように三角の位置で座る彼らをチラリと見てから賢者へと向き直る。



「それでは始めるぞい。『魔力負荷』。」



見えない様々な力で内臓機から全て全身のありとあらゆる所を押さえ付けられ握られ、今まで経験ない位の激痛が走る。耐え忍んでいたあの頃等比較出来ないほどの辛さがある。激痛に倒れ伏し吐血し、のたうち回り、声を荒らげる。


力を緩めようとする彼らに睨みをきかせ続けて貰うようにする。


膨大な魔力を受けることで自身の魔力量上昇とそれをコントロールする力を手っ取り早く手に入れられる。代償としては途轍もない激痛と一瞬でも気を抜けば死ぬリスクも高いということ。


魔王としての力も暴走の一旦は膨大な魔力量に器が耐えられずに暴走してしまうという事だけだ。ずっと封印されていたが為に徐々にとはいえ戻ってくる魔力が思ったより多く日に日に制御出来ていないのは自覚していた。実際多すぎて制御出来ない魔力は魔力を通しやすい剣に吸わせていた。


騙し騙しやってきたものの限界だった。これ以上進行すると無理だと判断した。以前の俺なら一人で何とかしようとしただろう。だからこそ彼らは頼った事を意外に思っていたのかもしれない。


頼るのはもう、今回と。


まだ俺が欠如している記憶の所で一悶着あると確信している。



「何、意識逸らしてるの? 気づいてないなら言ってあげるけど侵食進んでるわよっ。」


「考え事する余裕があるようなら、出力増やしてやるぞっ!!」


「ほっほっほ、言われておるぞ。儂もちと力を強めてみようかのう。」



勝手な事を言うなと言いたいが激痛で喋れないので舌打ちを一回するに留める。


段々と負荷を掛けられる俺の方もそうだが、する方も辛そうな表情を浮かべ始める。











何時までやっていただろうか。


爺の住処は時間の感覚が分かりづらい。



「主の方が意識を保っているとはな。これは意外じゃったな。」


「.....二人は.....見事に伸びてるな。」


「お主はそれ以上に疲弊して横たわっているのが普通じゃぞ。何故、ピンピンしておるのじゃ。」


「あー? 俺だから?」


「そんなお馬鹿な回答を返されるとは思わなんだ。」


「爺さんだって元気そうじゃねえか?」


「生きてる年数が違うからの。鍛え方も違うわい。」


「そうかい。」



何度も血を吐いて、のたうち回っていた為に着ていた服の汚れが相当だったので着替えようとすると爺がじっと見てくる。



「ガン見すんなよ。」


「此処で着替えるからじゃろうて。」


「それ以外も含まれてんだろうが。」


「まさか結果がこんなことになると儂でも予想出来んかったわい。」


「お褒めに預かり光栄ですよ。」


「褒めておらんわ。」



軽口を叩きながら着替えを終えるとやけに頭が重い。立ち上がって着替えている時も思ったが髪が床に付くまで伸びきっている。前髪も幽霊かの様に伸びていて鬱陶しい。



「..........。」



風魔法を発動させバッサリと切ってしまう。



「あ、やり過ぎた。まあ、いいか。」


「眼が見えるぞい。」


「......眼だけじゃない変化が目に見えるから良いだろ。此処からは陥れようとした彼奴らと戦うのに他の一切に気を遣う暇など無いからな。これでいい。」


「戻るかの?」


「ああ。」


「因みにじゃが。」



珍しく言いにくそうに言葉を淀む爺はとんでもない事実を突き付ける。



「何だ?」


「お主が来てから一日程経っておるからな。此処だけ時間操作はちょいと施したがのう。」





「..........は?」



嘘だと言って欲しい。そう思った。












新作品タイトル


『神と共に歩む異世界生活~その正体は天使の名を持つ死神でした~』


投稿されています。此方の小説と交互位に投稿予定です。どちらも是非よろしくお願いします。

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