表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第1章
8/103

8話 お昼と憂鬱


 買い物を終え買った物を全部仕舞いバッグを腰に付けてお店を足早に出ようとする師匠を追い掛けて出ようとするとカリナリーさんが声を掛けて私を呼び止めた。



「ユリナちゃん、彼は面倒臭がり屋で弟子を取ったって言うのも驚きなんだけど優しい所も有るから自分が疑問に思った事や聞きたい事、欲しい物はちゃんと伝えなさいね~。言葉って言うのは直ぐに伝えないと色褪せて言えなくなる事が多いんだから~。後悔しない様にするのよ~。分ったかしら~?」


「! はい、ありがとうございました。」


「良いのよ~。また来てねえ。」


「おーい。早く次の所行くぞー。」


「はーい。今行きますー。」



 そう言って私はカリナリーさんに深々と頭を下げてお店を後にした。カリナリーさんは私が出るまで笑顔で此方に手を振り続けていた。それにしてもカリナリーさんは私が考えていた事を見通したかの様に声を掛けてくれた。師匠も然り心を読む力が有るのか、はたまた私が顔に出やすいのか。どっちにしても嫌なんだけど害する事でも無いので素直に言葉を受け止める。でも師匠の人柄だったり性格をもう少し分かったら踏み込んでも良いかもしれない。今は未だ分からない事が有っても良いと思ってる。






 店を出る前、カリナリーに何か言われた後、先程お金の事で沈んでいた様子のユリナだったが吹っ切れた様だ。お陰で少し雰囲気が重くならず済んだ。彼奴も偶には良い所あるな。普段からあまり人との会話をしないので俺では良いアドバイスなんて出来ないから助かったというべきか。いや、本人の目の前で言ったら調子乗るだろうし言わないけどな、うん。内心感謝はしておく。


 少し歩くと街のシンボルとして中心に立っている時計台を見るとお昼を疾うに過ぎていた。行く所は有ったがまずは昼の確保だな。適当な処に入って少しゆっくりするか。



「少し昼過ぎたが飯食いに行くぞ。」


「え、はーい。」


「お腹空いてないか。それとも俺が忘れているとでも思ったか。」


「いえ、そんな事無いです。行きましょう!」



 何かユリナの挙動不審な反応的に少し首を傾げる。そういえばと思い返すと俺は食事に関して割りとテキトーだったのを見たせいか食べないで此のまま街を回るとか思われていたのか? 心外だな。流石に俺もお腹は空くし折角街まで降りて来たのに何も食べないで目的地を回って帰ろうとするほど薄情じゃ無い筈なんだが。一人だったらスルーする事が無い訳じゃなかったけど一緒に人がいればそんな事しませんよ。なので今考えている事を察した様にしてジト目を俺に向けないで下さい。さっきの焦った表情を取り繕うのが早いです。まあその辺考えても無駄だな。ちょっぴりショックを受けていた俺は時計台の時間をボーッと眺めながら止まって(現実逃避して)いたのでユリナからの視線で我に返り足早に歩き始める。その様子を見てジト目を向けていたユリナがクスクスと笑いながら着いてきた。


 それから少し歩いてカフェっぽい雰囲気且つ2階建てでテラスが有った所だった為迷わずそこに入って外の景色が見える2階のテラス席の端の方に腰を掛け軽食を頼んだ。ユリナも食べたい物を悩みつつも注文していた。俺は食べ物が運ばれてくるまでユリナを横目で捉えながら外の様子を眺めつつも昼と言うには遅い時間にも関わらず店内に幾人か座って談笑している人達の色々な話を、聞き耳を立てて興味深い話があるかどうかを見極めていた。その中で気になる話が有ったのでそちらに神経を集中させ聞いた。



「……へえ、それ本当なの?」


「本当らしいぜ。吃驚だよな。俺も城に勤めている友人の兵士や冒険者から聞いたが間違いないそうだ。どういう手段であんなに強い奴らが集まったのかは謎らしいんだが、此処だけの話近い内に魔王が復活する兆しが有ったとかで強者を招集したとか何とかって言っていたらしい。なんか雰囲気が異質だったとかって言ってたぜ。」


「まあ、強いなら良いんじゃないの? てか魔王とかそっちの方が信じられなーい。」


「おいおい、あまり大きな声出すなよ。一般には噂程度で詳細を知ってる奴少ねえんだからよ。で、何か確か7日後だったかな? そん時に御披露目だかしてこの街の外れにある迷宮に行くとかっていう話が有るらしい。よく冒険者が稼ぎに行ってる所らしいから運が良ければ会えるかもな。」


「へえ、気になるし会いに行きたいなあ。勇者がイケメンだったら最高じゃん。」


「ちょ、俺というものが有りながら勇者に靡くなよー。………。」



 後半はそれからただカップルの不毛な談笑だったので聞くのをやめた。


 魔王の復活の兆しと強者の招集、そして勇者、か。懐かしい響きだ。7日後に一般にもお披露目か。多分訓練という名の甘い教育が一段落着くのだろう。召喚してから半月という無駄な時間を使ってどんな風に育ったのか楽しみだな。クククッ。実力なんぞ異世界からの召喚者というアドバンテージを持っていれば、7、8日も有れば実力を付けられると思っていたが、まあ此方の世界の常識を教えたりしているだろうし仕方無いのか。その常識がどう教えられているのか。【魔女狩り】の事も有るし多分ろくでもない教え方をされてそうだ。気になる事もいくつか有るし今後やるべき事も決まったし俺も色々と動かなければいけないな。ちょっと憂鬱な気分になるな。


 それにしても7日後、か。何か引っ掛かる事が有るが。何だっけか。



「お待たせしました。ご注文の品でございます。」



 俺が聞いたことを纏めて今後の計画を練りながら引っ掛かった事をウンウンと唸りながら思い出そうとしていると漸くお昼が届いた様だ。その内思い出すだろうといつの間にか机に肘をついて頭を置いて外を眺めていた視線を真っ直ぐ前に戻すとユリナが俺の事をじっと見ていた。それも結構な呆れ顔をしている。待て、何時から見ていた。全然気付かなかったぞ。考え事に没頭しすぎていた。いつもの事なのだが。俺は居たたまれなくなり食べ物に手を付ける前に少しぶっきらぼうに声を掛けた。



「何だ?」


「いえ、特にこれといったことは無いんですけど。考え事の内容が何となく察せるというか何というか。」


「? どういう事だ?」


「思いっきり怪しい笑みが零れていましたよ。」


「……ああ? 気のせいだろ。」


「何で目逸らすんですか。では、頂きます。」



 顔に出ていた様だ。それをばっちり見られていたという事か。「では」の意味が分からないのだが。まあ、どうせ察したといってもユリナ自身の事で有るという事は分かっていない様だけど。まあその内嫌でも顔を合わせる事が有るだろうし今は特に何も言う気は無いが少しでも吹っ切れてくれる様にしてほしい所だ。無関心とは言え特定の人間に関しては、少しの恨みは持っている様な感じだしな。


 ゆっくり食べていたが朝ユリナに作ってもらった物が美味すぎて食べた物があまり美味しく感じなかった。いや、多分今後の事を考えるのが楽しくて味わえなかったという事も有るだろうが。久々にワクワクしている自分がいる。



「師匠、そう言えばこの後は何処に行くんですか。」


「そうだなあ。思ったよりカリナリーの所で必要な物を揃えられていた様だし後2か所だな。1個は本屋。まあ本屋ではメインはユリナが読むことになる本を買いに行く。ああ、修行に使う奴な。後俺が仕事に使う奴とか持ってない本を買い揃える。後はユリナが何か個人的に興味が有って読みたいのが有ればそれも買う感じだな。結構時間掛かるだろうし本屋はゆっくり見れる様に最後に回るからな。で、その本屋の前にこの街にある冒険者ギルドに向かおうと思う。」


「冒険者ギルド、ですか。」


「ああ、基本的に街にはギルドが設置してある。この街にあるのは支部だけどな。ああ、でも別にユリナに冒険者になれって言っている訳では無くて素材を買い取って貰ったりするとお金を稼げるし、良い所だから使ってもらおうってだけだ。登録はしなきゃいけないんだが。」


「成程。………というか本当に冒険者っているんですね。聞いてはいたんですけど。」


「まあ結構いるんじゃないか。冒険者って言ってもそれだけで食ってる奴と小銭稼ぎ程度に素材を売るだけみたいな奴と色々自由に出来るしな。ユリナの場合は後者のパターンに当てはまるか。まあクエストは色々有るし規定に沿って報酬を受け取るのも有るし換金所として使うだけとか。ギルドのモットー(?)が兎に角”自由”だからな。クエストに関係無く魔物を倒すのも有りだし。その場合報酬無いから素材を買い取って貰った分しかお金が貰えないからクエストを受ける人が多いんだけどな。」


「討伐ですか。私には縁が遠そうですね。」


「まあ自由に使える所だし討伐以外に採集とかも有るしそれに拘らなくても良いんじゃないか? というか行く理由としてだが、お金の事さっき言っていただろう。気になるなら自分が出来る範囲で頑張れっていった処だ。オーケー?」


「了解です。では食べ終わってますし早速行きましょう!」


「おい、ちょっと待て。もう少しゆっくりさせろ。唯でさえ嫌な奴らと顔会わせなきゃいけない事に疲れてるし何より眠いから急かさないでくれ。」


「ええー。待てないですよ。本当に有るっていうなら前から気になってましたし。早く行きたいです。」


「分かった、分かったからソワソワするな、目立つし。」



 もう少しだけゆっくりする予定が冒険者ギルドの事を聞いて目をキラキラさせソワソワし始めてしまったユリナに押し負けそそくさと残った飲み物を飲み干し会計して外に出た。まあさっきまで落ち込んでいたのをみると今は大分回復している様子だし止めるのも無粋か。


 俺の憂鬱が冒険者ギルドにも有るのだがまあカリナリーに比べればましか? 久々に行く気もするがさて俺の事は覚えているのか。できれば忘れていてほしい。面倒事減りそうだし。


 というかカリナリーもあの店のオーナーだしこれから行く冒険者ギルドの会いたくない奴も()()()なのだが何故トップの奴等がホイホイ目の前に現れるのだろう。仕事はどうした、仕事は。顔を出す度に100%遭遇する彼、彼女等に俺は溜息を吐きどうせギルドでも会うのだろう。フラグを立たせなくても回収しに来るのは本当どうにかしてほしい。これからの予定事以上に悩ましい問題だよ、思わず頭を抱える程に。どうして俺の周りには一癖も二癖もある奴等がいるのだろうか。ノトはそう思い深い深い溜息を洩らすが周りからすれば「お前の方が良い性格してるよ。」と声を揃えて言われるだろう。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ