7話 回想と買い物
街までの凄く遠い道のりを歩きながら私は【魔女狩り】について教えてもらった事を思い出していた。
―――【魔女狩り】とは。
約200年前にある1人の”魔法使い”の暴走によって同胞である多くの”魔法使い”並びに多くの市民が命を散らした。暴走した”魔法使い”を止めようと傭兵や国が動いたものの返り討ちにされ無事で帰って来れたものは皆無だった。戦争とは呼べぬ蹂躙劇に大陸中の生ける者は混乱し対応しきれない主に対し暴徒化する勢いまで有った。が、突如その”魔法使い”は暴走を止めた。死んだかも分からないが”魔法使い”は長寿であり強者である。事実を確認する為向かった調査隊はそこで3人のボロボロになっている男女を見つけ保護しながら話を聞いたそうだ。「暴走した”魔法使い”はオレらが倒した!! ”魔法”に対抗する為此処にいる彼女らで新たなる力である”魔術”を生み出し使った!! まだ欠点も多いが此れからは”魔術”を多くの人に知ってもらいこのような痛ましい事が起きぬ様にしてもらいたいっ!!!」1人の男性がそう言うと後ろにいた女は頷き、男は虚空を見つめ黙って聞いていたそうだ。そうして、【魔女狩り】の悲劇は終息した。その後英雄と謳われた3人は今の”ギルド”と”冒険者”のシステムを作り多くの人を助ける為の仕事のシステムを作った。
「英雄がいなければ私達は此処にいなかったかもしれない。何故あの”魔法使い”が暴走したかは分からないまま。だから”魔法使い”は何をするか分からない。この城にはいないし、絶滅した職であるとは言われていますが万が一にでも、会ってしまったら何をされるか分からない故忌避すべき存在なのです。」
漸く街に着いた時私はあまり息を切らしていなかった。多少の疲労感はあるが不思議と初めて来たときに比べて軽い道のりだった。師匠は街に向かう最中ずっと考え事をしていて(している様に見えたので)話し掛けなかったし、話をして体力を余計に消費してしまうだろうと思っていたので私も考え事をしていた。唯、この疲労感については疑問を持ったし、それに師匠が疑問に思ったら何時でも聞いて良いって言われていたので、思い切って聞いてみる事にした。
「すみません、師匠。」
「……えっ? すまん、何か言ったか?」
本当に考え事をしていた様でややあってから返答が有った。いや、本当は呆けているだけだったかもしれないけど。この人の事だから何が有るか分からない。
「いえ、まだ何も言って無いですよ。少し疑問に思う事があって、」
「あまり疲れていない事か?」
「えっ、そうですけど。なんで分かったんですか。」
「朝の覚醒時のレベルが上がった事で魔力が体内で上手く回って疲れにくくなっているのだろう。後は俺が補助的に少々魔法を使っていたからだけどな。そういえば言って無かったが自分のステータスに関しては念じれば見られる、というのは教えてもらってるよな?」
一旦ステータスを確認してみたいと思ったが街の中に入って来た為通行人の邪魔にならない様に端の方に移動して言われた様にステータスを見たいと思って念じてみた。すると目の前に突然半透明のパネルが出てきたので吃驚して思わず声を出してしまった。通行人の一部が此方を見てきて怪訝そうな顔をしている人もいて恥ずかしくなったが本当にステータスが表示されていた。私のキョトンとした反応や声を上げてしまった事から師匠が「本当に教わってねえし。」と呆れながら言っていたのは聞こえなかった。
〔 桜城百合奈 17歳 人間
魔法使い Lv2 (適正〈主〉:青 白 〈副〉:黄 )
スキル:空欄 魔力:40 〕
「えっと、表示方法が違うだけで城で見たMPが魔力と表示されているのでしょうか。」
「あー、多分そうだな。というか俺の作った『鑑定石』に影響されたか。まあ、別に他の情報要らんから困らねえとは思うけど。他の情報も見たかったら言ってくれ。」
「いえ、大丈夫です。要らないならそのままでも。」
確かにお城で最初に見た時に比べたら上昇はしているけど1レベル上がっただけでこんなに変わってしまうものか。そう考えるとこの世界の人達のレベル平均はどれ位なのだろう。
「あー、一応レベルについて言っておくと平均はちょっと分からないが上限は99。冒険者の中にはその上限に達している奴がいるとか? 詳しくは興味無くて覚えてないんだがレベルが高いから、強いとかは無く普通に自分の技が熟練されている方がレベルが弱くても強かったりする。」
心を読まれたかの様に説明をされて「成程。」と思い私の理解した様子を見て再び歩き始めた師匠の後を付いていく。因みにだが私は訓練用に配布されたシャツを着ているが師匠は先程の正装と言っていた服から着替えたはずなのだが私服(?)も黒ばかりの様でさっき見た服と何ら変わっていない。変わった点と言えばコートにフードが付いている位。結局目立っている様で街の人からは結構な視線を集めている。ただその声が聞こえた内容には「久し振りに顔を見た」とか「前回から一ヶ月以内に出てきた……だと。」とか珍獣を見つけた時の感想の様だった。そんな周りの様子を聞いたり見たりと視線を巡らせていると師匠はあるお店の前で止まった。私は考え事をしていたせいか止まるのに気づかず師匠にぶつかりかけた。どうやら目的地で有るだろうこの場所について聞いた。目的地の筈なのに師匠の顔は嫌なものを見たかの様に歪んでる。
「……ここですか?」
「そうだ。はっきり言って此処にはあまり来たく無かったのだが此処に来れば殆どの物が揃うし面倒が減るから仕方が無いんだが、はあ。中に入ったら必要な物を早めに選んでくれ。」
「? 分かりました。」
凄く気怠そうな師匠の声を聞いて中に入っていくと其処には様々な物が置いて有った。生活用品に加えて服など、奥の方には武器などが置かれている様に見える。要はこの世界の生活必需品が揃っているという感じだろうか。そして外で見た外観よりも中が広く感じる。その事を考えながら入り口で店内の様子をぼけっと見ていると通路から店員と思わしき人が此方を見て笑顔になると近づいて来た。
その向かってくる様子を見た瞬間、師匠は顔を顰めて嫌そうな声を出した。
「げっ。最悪だ。」
「いらっしゃい。ちょっと~久しぶりに会ったと思ったら相変わらず失礼なこと言うのねえ。それに~見た事ない可愛い子も連れているみたいだし~。もしかして、遂に、結婚かしら~? お祝いしてあげるわよ~。」
「勝手な事言うなよ。な訳無いだろうがよ。だからお前は嫌いだし本当は此処に来たくなかったんだ。この子は俺の弟子になった子だよ、全く他にも店が有る中わざわざこの店に来てやったのに。……気分悪くなって来たし店変えるか。」
「相変わらず冗談が通じないのね~。弟子、ねえ、ふーん。……………って、え!?? 弟子!!?? 随分珍しい事始めたのね。まあそれ以上は聞かない事にするわ。フフフ、何時も御贔屓にして下さりありがとうございます~。私はこのお店のオーナーを勤めていますカリナリーと申します~。以後お見知りおきを~。」
「あ、はい。初めまして、カリナリーさん。私は桜城百合奈と言います。よろしくお願いします。」
「ユリナちゃんね~。よろしく~。」
「カリナリー、ユリナに必要な物を買いに来た。金額は特に気にしなくていいから一緒に見て回ってくれ。」
「分かったわ。貴方はどうするのかしら。」
「あー......面倒だしやる事も有るし、座って待ってるわ。」
「それじゃあ、終わったら呼ぶわ~。それじゃあ、ユリナちゃん行こうか。」
「は、はい。お願いします。」
実はこのお店のオーナーだったカリナリーさんと一緒にお店を回る事になった。オーナーがこんな所に居ていいのかと思っていたけどそこまで珍しい事では無かったみたいだった。話が終わるやいなやカリナリーさんに連れられたので、師匠が入り口の方に有った椅子に腰を掛けて何処からか取り出した本を読み始めたのを見てから視界から商品棚によって消えた。
カリナリーさんは優しくて美人だった。色々商品を売る為に勧めてくるけど必要な物をちゃんと吟味して選んでいってくれた。それでも生活用品がほとんど無いから大量にあったけれど。見て回っている時に聞いたが此処は何でも揃うをモットーにしているらしい。だから武器なども扱っているそうだ。お客さん自体は結構入っているらしいが大半はカリナリーさん目当てで来る人もいるらしくそういう人に売りつけたりしてるのよと笑って言っていた。そんなカリナリーさんを見てどうして師匠が苦手なのかがよく分からなかったがその私の疑問に気付いたのかカリナリーさんは苦笑してからかい過ぎたせいかなと言っていた。確かに師匠は冗談とか通じ無さそうな感じだったし面倒な性格から考えると相手に色々と言われるのは嫌なのだろう。自分は言う癖に。
そうして暫く回って必要な物を購入する時になって量が多い事に気付きもう一回要らない物が無いか吟味しようとしていた時にカリナリーさんがいつの間にか呼びに行ったのか師匠が欠伸をしながら戻ってきた。
「選び終わったか。」
「はい、終わりました。選んでたら結構な量有るんで、減らそうと思ってました。」
「減らさなくても、量に関しては全然大丈夫だ。その為に今回俺が来たし。」
そう言ってから師匠が持っていた小さめのバッグから同じ形と大きさをしたバッグを出して私に差し出してきた。私はその差し出されたバッグの大きさから今回購入予定のものは入らなそうなので首を傾げていたらその様子が面白かったのかクスクスと笑ってから教えてくれた。
「見た目は小さく見えるが中は異空間になってて結構な量入るぞ。これ位の量ならバッグの最大容量の3~4割位だと思う。で、物を入れてもその重さは感じないから便利だぞ。ユリナ用にやるから今後自由に使ってくれ。」
「へえ~。とっても便利ですね。でも貰っても大丈夫なんですか。貴重な物じゃないんですか。」
「とっても貴重よ~。私のお店でも此れは扱っていないもの~。簡単に人に渡せる様な物でも無い筈なんだけど~。ほんと昔から無茶苦茶やるわね。」
「はあ? 昔から無茶苦茶やっていたのはお前だろうが。それに俺がこんな物直ぐに用意できるの分かるだろうが。」
「何~? 私に喧嘩売るのかしら~? 高くつくわよ~。」
「………。チッ。もう良い。お前に口喧嘩で勝とうなんて無理だったわ。………だから嫌だったんだ(ボソッ」
「生まれてからずっと商売に携わっていた私に口で勝とうなんて早過ぎるのよ。分かればいいわ。フフッ。それじゃあユリナちゃんが置いてけぼりになっているみだいだし精算するわね~。」
「他にも行く所あるから早めに頼む。」
「分かったわよ。5分で終わらすわ。」
何か喧嘩が始まりそうで始まらず収まったけどカリナリーさんは上機嫌で精算し始めた。一方、師匠は近くにあった椅子に腰かけて来た時よりも不機嫌な様子でぶつぶつと今も文句を言っている。師匠の方が歳上に見えるのに軽くあしらわれている様子を見るとカリナリーさんの方が歳上に見えてくる。
そんな事を考えていたら精算を終えたらしいカリナリーさんが手招きしていたので師匠は立ち上がって歩いて行ったので私も付いて行って購入した荷物をバッグに入れていった。結構な金額だったと思うけど全て払ってもらった。確かに私はお金を殆ど持っていないけど何もしていないのに悪く感じてしまう。
そんな顔が出ていたのか購入したものを入れ終わったのを見計らって私の頭の上に手を乗せて笑って言った。
「気にしなくていいぞ。大変なのはこれからなんだから今からそんな顔していると眉間の皺戻らなくなるぞ。」
「で、でも。」
「でもじゃなくて、必要品なんだし。そんなに気にするならこれから努力してくれ。俺が失望しない様にな。それでは駄目か?」
「......。ありがとうございます。頑張ります。」
「そんじゃあ次の所に行くかー。」
まだ色々思う所あるけど納得しないと先に進め無そうだったから頷いたもののまだ会ってから日が経ってないし弟子になったとはいえ何故こんなに優しくしてくれるんだろう。それに最初はあんなに嫌そうで面倒くさがっていた様子も今は見る影も無い。いや、全く無いとは言えないけど。
……こんなに優しくされた事はないからむず痒い感じもするし「何で?」という疑問も有るけど願う事ならもう少しこの居心地のいい空間に長くいられたらいいな。少しでも返せる様に行動で返していきたいと思う。