表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
序章
4/103

4話 早起きと覚醒



「……んんー?」



 何だか昨日は凄く疲れた。それもその筈か、急に厄介事(面倒事)を押し付けられたんだし。


 でも、疲れた割には昨日も仕事に没頭して寝たのはもう朝方近くなっていた気がする。仕事に手を付ける前にガタガタと物音が聞こえたりしていたが暫くすると何時も通り仕事に熱中していると周囲の物音を一切入ってこなくなった。



「夢、ではないよなー。そうであって欲しいとは思っているんだが。」



 昨日までリビングに置いてあった物が全部部屋の床に雑多に置いてあるのを見て、夢では無い事を思い知らされる。


 「今何時くらいだ?」と時計はあるものの見る癖も無いので俺が時計を見る訳も無く。外を見ると、日は未だ東の方にあって真上に昇りきっていない。「今日は早起きだったな~。」とか睡眠時間が足りていなくて動いていない脳で考えているが、何故俺がこんな朝早く目が覚めてしまったかというと俺の部屋に良い匂いが漂ってくるからだ。


 その匂いで起きる俺も「犬か。」と考えて一人で突っ込んで笑っている位、頭が若干フィーバーしている。気のせいだと思いたいけど、後から思い出して一人で項垂れて身悶えする所まで読めている。どうしようもないんだけども。取り敢えず、これ以上は自分の首を絞めていく発言やら考えしか出ないので諸々の思考を放棄して大きな欠伸をしながら部屋を出てリビングに向かう。



「あっ。おはようございます………すみません、少し物音立て過ぎましたか? えっと、少し多めに作ってしまったんですけど、食べますか?」


「……ん。特に物音はしなかったけど匂いが漂ってきて、な。まあ、折角起きたし頂くとするか。」



 再び大きな欠伸を漏らしながら席に着くと、ユリナは、直ぐにキッチンの方に向かっていった。いつの間にかキッチンまで綺麗になっているし、昨日気付かなかったとは言え一度出掛けた割には行動が早いというか何というか。よくよく考えると居候するとはいえ人の家を片付けたんだよなあ。元々は片付けしなかった俺が色々と言えるものでは無いので気付いていないなら気付いていないで俺は黙っていた方が良いだろう。言葉には出さないが内心は感謝しておこう。


 そんな事を考えながら虚空に視線を向けて大人しく座って待っているとユリナが軽食を持って戻って来た。



「どうぞ。」


「いただきます。」



 手を合わせてから出された朝食を食べ始める。最近は朝食を殆ど食べない俺だったが珍しく食べきってしまった。久し振りに真面な飯を食ったので胃が文句を言ってくるかと心配はしていたものの特に問題なかった。昨日の食べている物を見て気を使ってくれたのかは分からないが美味かったので特に言う事はない。


 それにしても、よく面倒な家事を此処までやるなあと内心感心してユリナの方を見た。ユリナは、俺を間接的にでも朝早く起こした事に悪気が有ったのか笑顔がぎこちないので素直な感想を伝えた。



「……美味かった。ごちそうさま。」


「………良かったです。」



 ホッと安心した様にしてぎこちなかった笑顔も無くなった。朝早く起こされて色々思っていなかったと言ったら嘘になるが今は朝起きた事に関して悪く思っていない。少し頭がすっきりした、眠い事には変わらないが。昨日に言った約束である「色々と教える。」を守る為に少し気合を入れる必要があるか。こんな事なら早く寝れば良かったと今まで何度も後悔している事を思う。


 といっても昨日の鑑定石についても反応が無かった事についても理由を含めて教えつつステータスを確認しないと始まらない。前に読んだ本で“異世界召喚術”について書かれていたものの中に『異世界人は現地人に比べるとステータスが高い』と有った。前にも考えていた事ではあるが、ユリナも高い筈なのだ。多分昨日の様子からすると自分だけ違ったとかそういう事になるのではないかと思う。ただ、ある例外が存在する。それは、数百年前、この世界で()()()()が起きた為一つの例外な職業についてはステータスに別表記される『世界の理』が存在する。この『世界の理』について詳しく知る者は俺を含めて数人しかいない。今はそれが記された本が存在していないという事が関係している。伝承として知る人ぞ知るといった所だ。


 ユリナは俺が食べ終わって考え事をしながらゆったりとしているのを見て片付けをしようと立ち上がろうとした。それに気付いたので、考え事から戻り立ち上がったユリナに俺は声を掛けた。俺の話し掛けるタイミングが少し遅かったのでユリナは立ったまま話を聞いていた。



「色々と昨日分からないままにしてしまったからステータスを含めて教えていこうと思う……まあ特に難しい事は特に無いだろうしそんなに緊張をしなくてもいいからな。」


「はい、分かりました。よろしくお願いします。」


「先ずはステータスに関してどうにかするのにちょいと準備するからその間片付け頼んでもいいか?」


「大丈夫ですよ。元々やる予定でしたしね。」



 そう言って片付けを始めたユリナを横目に俺は一度部屋に戻る。取り敢えず今回のステータスを知る為に行うのに必要な物をてきぱきと用意していく。そして準備を終えた俺は部屋を出るとタイミング良くユリナもリビングの方に出て来たので此れからやる事を簡潔に話していく。






 私が朝食の片付けを終えてリビングに戻るとノトさんも丁度部屋から出てきた。ノトさんの格好が今までは、白いワイシャツに緩んだネクタイ、下のズボンも結構よれていたのだが今の格好は、夜の闇を体現したかの様に黒一色で整えられており、白いワイシャツの上にベストを着ていて、緩んでいたネクタイもきちんとしており、黒のズボンもよれている所は見当たらない程に整っている。そして、羽織っているコートはロングコートと呼ばれるもの以上に長いのではないかと思う。丈が膝下まである。手にも黒い手袋をしていた。特徴的だった髪は、相変わらず腰まで流したまま。右目の方は前髪で隠れていて、左目の方は横に流してある。見た目もそうだが一番私の眼が吸い込まれた物がノトさんの手に握られていた。彼の背丈よりやや高めの黒い杖。


 何時もと余りにも違かった為、その服装に吃驚しつつも見とれて綺麗だと思ってしまったのは秘密にしていたが顔に出ていたと思う。ただ、今までの態度とは全然違うのが分かる。ノトさんの背筋が伸びていて、此方もしっかりしようと姿勢を正してしまう雰囲気すらも纏っていた。その様子からノトさんが面倒と言いつつも私にきちんと向き合って考えている事が少し嬉しく思った。



「……どうした?呆けた顔して。フフッ、また初めて見る顔だな。取り敢えずこれから少し外に出るからこっちに着替えてくれ。」



 私は今此処に来た時の格好では無く、此方の世界で支給された服を着ていた。簡単に言うとTシャツとスカート。お洒落な物でも無いしクラスメイト全員が訓練用として同じく着ていたものだった。


 そして、今ノトさんから渡されたのは今着ている物と余り変わらないものだったので、「着替える必要が有るのか。」と考えて少し呆けていたがハッと我に返り、



「……あっ、はい。部屋で着替えてきます。」



 慌てて服を受け取り、部屋に戻り先程受け取った服に着替える。






 俺は渡した着替えをユリナに渡した後リビングで着替え終わって出てくるのを待っていた。特殊な素材や効果が有るのだが、その見た目はユリナが今まで着ていた物と何ら変わりない為「何故?」という顔をされたがその後若干の思考停止後我に返って慌てた所とか面白かった。あまり言うと何かしら言われて拗ねたりしそうなので言わないが本当に反応が面白くて楽しい。


 そんな事を思い出しながら思い出し笑いしているとユリナの部屋の扉が空き、出てきた。



「すみません。お待たせしました。」



 少しサイズが大きめだったがピッタリよりかはましだと思おう。まあ着ている物は変わっていないが使用している素材が良い物なので若干の魔力を纏っている様に見えるが多分ユリナは見えてないし気付いていなそうだ。


 俺はユリナに声を掛けながら外に出るよう促す。



「着替えたな、んじゃ、準備終わったし外出るぞー。」


「はい。」



 玄関を出て太陽の日が少し眩しくて思わず目を細めつつ「そう言えば最後に家から出たのはいつだっけ。」と思いつつユリナを伴って外に出て家を出て直ぐに裏手の方に回り、森の中に若干通れるようになっている獣道の様な舗装されてない道を進む。ユリナは「此処行くんですか?」と指を指しながら半分心配そうに半分嫌だという感じで言ってきたので俺はニヤリとして「幽霊とか出るかもなあ。」と言ったら忽ちユリナが青ざめてしまったので「冗談。」とカラカラ笑って歩いて行く。暫く幽霊に怖がっていたユリナを茶化しながら笑いながら木々の隙間を縫っていく。少し歩くと目の前が急に開け、庭というには広大すぎる円状に広がっている草原に出た。その円に沿うようにして、森が広がっている。



「わぁ~!」



 木々の隙間の道は獣道も同然なので案内が無いといくら広い場所とはいえ、辿り着くことは難しい。他にも辿り着けない様になっている理由が有るのだがそれは此処ではあまり語らない。今は関係無いし。森を抜けてきて真っ直ぐ目の前にはどの木よりも大きい樹齢数千年はゆうに超えているだろう大木が有る。俺は其処に一直線に歩いて行く。思わず声を漏らしたユリナもキョロキョロして余りの光景に驚きつつも俺の後を離れずに歩いて来た。


 大木までおおよそ10何メートル位まで来た所で俺はユリナに止まるよう指示し、一人で大木の下まで歩いて行き俺は杖を立てて、空いた手を大木に向け翳す。翳した瞬間俺の体と大木が共鳴したかの様に静かに光り始める。



『-------我と同じ道を歩みし者が訪れた。その道を正しく歩める様にお力をお貸しください。』



 翳した手の方に大木から伸びてきた枝が一定の長さになると切断され大木の光が枝に向かって吸収されていく。段々と光が収まりつつあり力を緩めていこうとした時に、ふと聞こえた声に俺は笑って答える。



『------分かりました。その内になるでしょうが、必ず伺いますよ。』



 そう言うと大木から光が完全に消え俺もゆっくりと力を抜いていく。そして翳した手の前に先程大木から頂いた枝が有るのでそれを握って満足して頷く。


 そして、後ろを振り返り待たせていたユリナの方を向くと今の様子がそんなに驚いたのか口が開きっ放しだったのでその様子を見て、クツクツと笑いながら話し掛ける。



「驚いたか?開いた口が塞がっていないぞ。フフッ。待たせたな。取り敢えずほれ、」



 見た目は完全に枝のせいか、ユリナは慌てて口を閉じてごほんと咳払いをしてから渡された物に疑問顔を浮かべながらおずおずと手を伸ばす。


 さてどんな変化が起きるかな。と思ってワクワクしながらその様子を見る。



「ありがとうございます?……!?」



 ユリナが礼を言って杖を受け取った瞬間彼女の全身に光を纏っていく。少し眩しくて目を細めつつ変化していく様子を俺は目を離さずに見守っていた。


 暫くすると纏っていた光が徐々に収まっていき彼女がポカンとした表情を浮かべ立っていた。最初の頃の無表情から想像出来なかったが、表情豊かで面白いなと思って”変化”した姿を見て俺は満足してニコニコと笑顔を浮かべた。






 ノトさんから杖を受け取ると急に眩しい光に包まれて私は目を開けていられず思わずぎゅっと目を閉じてしまった。暫くすると光が段々と収まっていく感覚から、徐々に眼を開けると彼がニコニコというよりニヤニヤして此方を見ている姿を最初に捉えた。目が合った後ノトさんは「俺じゃなくて自分の様子を見てみたらどうだ?」とばかりに私を指差していたので疑問に思いつつ、取り敢えず目線を下げて見ると先程着替えた服が、変わっていた。それはまるで、セーラー服にカーディガン、胸元には大きなリボンが付いている。スカートにも変化が有ったが分かりやすい言葉で言うと、まるで女子高校生の様な服。改めて見ると「前の世界で着ていたものとあんまり変わらない……。」と思ってしまった。色合いが白ベースだが深い蒼色のラインが所々に入っている。スカートに至っては深い蒼色一色だった。また、服だけでなくさっき貰った枝も彼の持っている黒杖と似た形をしていて、服と同じで蒼色に染まっていた。長さも貰った時より長くなっており、身長より少し大きめのサイズになっていた。後でよくよく鏡を見たら自分の黒髪が若干蒼が入っていたり眼も髪と同じく蒼っぽくなっていて鏡の前で思わず「誰?」と言ってしまった。また視力が悪くて此方の世界に来てから度が合わず眼鏡を外していたのだが(それでもまだぼやっとしていて若干生活には困っていたのだが)何故か普通に見える様になっていた。度が良くなる事なんて有るのかと一番の驚きはこの事だったりしたので急いでノトさんに確認したら「知らんよ? 見える様になったなら良かったじゃん。」と真顔で言われた。改めて絶句してしまったのは言うまでも無い。


 そんな急激な変化に吃驚し過ぎて絶句していたら、光も完全に消えて変化が終わっていた。



「ハハッ、そんなに驚くとは思ってもみなかったよ。因みにだけどその変化は俺やこの大木が起こしたモノでは無いからな。きっかけは与えたがそこまで変化させたのは、ユリナの力だ。正直こんなに大きく変わる事までは予想していなかったが、ちゃんと強くなる為の力は備わっているみたいだぞ。良かったな。」



 絶句している私に話しながらノトさんから昨日反応しなかった鑑定石を差し出されている事に気付く。



「今ので見られるようになっていると思うから確認してみ。」



 私自身前とは違う感覚が有ったので昨日は恐る恐る手に取ったそれを、自信を持って受け取る。そして、昨日と同じく球体に軽く触れると私の想いに答えたのか仄かに光り出し、ステータスが表示された。


〔 桜城百合奈 17歳 人間

  魔法使い Lv2 (適正〈主〉:青 白 〈副〉:黄 )

  スキル:空欄  魔力:40 〕




「………えっと、表示されたのは嬉しいんですけど私が初めて見る物も有って何が何だか………。」


 そう言ってユリナはステータスを指差して俺の事を見て来た。


 まあ何処がと言わなくてもどの辺か分かるけどな。



「疑問は尤もだがそれをこれから説明する。その前にしておく事がある。」


「?」



 俺は自分のステータスを開いて、あるスキルを発動させる。



「わわっ。何か急に虚空に出てきたモノが有るんですけど。『果てに紡ぐ力』? これ何ですか。」


「それは俺が持っている特殊スキルで一度だけ発動できるものだ。軽く内容を説明すると成長にプラス補正が掛かったりする。若き“魔法使い”が道を違えない様に導くといった感じか。念じれば‘はい‘か‘いいえ‘が選択できる筈だ。まあこれやらなくても構わねえんだけどさ。本質は今言った事だけどこれ要は弟子を師匠がきちんと導けって言っているようなもんだし。だからどっち選んでも………。」


「勿論‘はい‘です。」



 まだ言っている途中だがユリナは‘はい‘を選択した様だ。いくら強くなる目標が有って、スキルの効果で成長にプラスが掛かるとは言え少しは迷う所じゃないのか。俺は若干呆れながらも’はい’を選択した後は取り消せないものの一応聞いておく。



「そんな即決でいいのか?」


「大丈夫です! ここは特に迷う所でも無いです。強くしてくれるというなら信じます。というかどうにかしようと思ったらどうにでも出来るって言ってませんでした?」


「確かに出来るけど、それで良いなら良いや。取り消しとか出来ないし。まあ此れから大変だろうが過剰な事はやらせないから。改めてよろしく頼むよ、ユリナ」


「はい!こちらこそ改めてよろしくお願いします、ノト師匠。」


「その師匠って止めてくれないか。普通に今迄通り’さん’付けで良いだろう。」


「さっきスキルの説明した時に”弟子を師匠が導く”って言ってたじゃないですか………それにこういうのちょっと憧れていたというのも有るのでそう呼ばせて下さい。」



 ニコニコしながらそんな事を言われて(後半はボソボソ言ってたので良く聞こえなかったが)ちょっとスキルについて色々言い過ぎたかと後悔しながら頭を掻き溜息を吐く。


 にしても俺が師匠か。面倒臭がりの俺がなるとは思わなかった。あの爺さんの言葉は当たってたって事か。



「まあ、何でも良いや。さてと、此れからユリナが疑問に思っている事を答えて行こう。一回家に戻るぞ。」


「…………はっ! 待って下さいー。こんな所に置いていかないで下さーい。」



 一応声を掛けつつもスタスタと歩いて行くとさっきからボソボソと独り言を言いながらニヤニヤして考え事をしていたユリナが我に返って慌てて走ってきて家に帰っていく。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ