表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第2章
28/103

27話 魔物の出現と強敵の予感


 迷宮攻略については全カット! と最初に言っておく。深々と語る事もないのは、きちんとした理由がある。


 勇者に無駄な時間を取られたせいで初めて行った時の階層までしか進めなかったのだ。とはいえ30階層のボスには一人で挑み、倒したのだけれど。30階層のボスは熊っぽい敵で1体。前に比べると1対1なので楽かとも思ったけれど思ったより動きが早く、何と近距離だけでなく遠距離の攻撃もしてきた事で自分の中の熊のイメージと違くて吃驚してしまった。その硬直を敵が上手いこと突いてきて、私はその攻撃に対して少し対応が遅れて幾らか攻撃を食らってしまった。倒す策を弄しながら戦っていたら凄く時間がかかって先に進めなくなったといったことがあった。「初めてだししょうがない。」と言いつつ肩を叩いて慰めている師匠に「何だか自信が喪失しそうですー。」と表情を暗くさせながら私はとぼとぼと歩きながら帰った。



 城に近付くとそろそろ夜になり静まりかえる筈なのに今日は何故だか騒がしい。それに気付いた師匠が装いを変え城に入る。部屋に戻る際も何人もの人とすれ違い、どの人も表情には焦りを見せている。何があったかは分からないが凄く慌ただしく何かの準備をしている様だ。師匠はそんな様子に怪訝そうな表情をしつつもそんなに気にする事でも無かったのか部屋に歩くスピードをそのままに向かっていく。部屋前着くとそこには魔術師長ファーリアさんの姿が有った。此方に気付くと駆け寄ってきて少し焦った様子を見せながらも端的に私にとっては衝撃の事実を伝える。



「ノト様、魔王と名乗る魔物が出現しました。また、私たちが保有している魔物の出現を知らせる魔道具にも反応がありました。その反応から見てもかなりの強敵かと思われます。」



 その事を聞いて私は息を飲む。”魔王”と言えばこの世に災厄をもたらすと言われる程強敵で有り、私達の高い素質を持っていても今の実力じゃ勝てないと言われていた相手。どうすれば、と焦っていた私だったが師匠の様子は普段と変わらず面倒そうに眉をひそめるだけだった。



「で、俺にどうしろと?」


「現在、陛下の元に勇者様方、騎士団長様が集まっておいでです。」


「魔術師長のお前は何故此処にいる? .....まさかっ。」


「そのまさかだと思いますよ。陛下のお耳にノト様が此方にいらっしゃる事が入った様で一緒に召集、と。」


「チッ。従うしかないじゃねえか。それ一応〝王命〟なんだろ?」


「勿論でございます。」



 師匠は心底嫌そうにしながら深々と溜め息を吐く。状況が分からず疑問符を浮かべたままの私に説明してくれたのはファーリアさんだった。



「面倒いが着替えてくる。ファーリア、ユリナに説明頼むわ。」



 そう言い残し師匠は一人で部屋に入った。その間に説明がなされていく。



―――”魔王”を名乗る魔物の出現。自称ではあるものの自称と考えるとその魔物には自我や知識、話すという事が出来る。通常はそんな魔物はいない。しかし、本当の”魔王”の出現の際はこの世界が震撼し世の中の終わりを憂う程とか。今回はそれが無いため自らを”魔王”と言うだけの魔物に過ぎないのでは。という推測が出ているものの力をつけすぎた魔物は驚異になり得るのも事実。なので他の街にも”勇者”の実力を見せる良い機会であり今回はこの騒動を利用して名声を更に高めておこうとかそういう考えだろうと。



「あの勇者たちで勝てると思ってんのかよ。知恵を持った魔物だ、統率も取れている相手だろう。今回は今までに無いほど規模も大きいんだろう? 俺からしたら厳しいと言うかはっきり言って無理だと言えるね。」



 そう言って部屋から出てきた師匠は呆れた表情でそんなことを言う。そして着替えてきた師匠はいつも通り黒いことには変わり無いが装飾が多く付いた軍服の様な服を着ている。そして、首からは魔方陣が描かれている銀色の丸いコイン状の物を下げている。腰にはレイピアの様な細剣を携えている。騎士だか魔術師だかどっち付かずの格好。髪は一本にまとめられており前髪は流したまま。城で掛けていた認識阻害の眼鏡は今回は掛けていない。



「良く似合っておいでです。」


「あっそ。俺は二度とこんな格好したくなかったけどな。早く寝たいからさっさと用を済ませるぞ。」



 不機嫌そうな表情のままくるりと踵を返しカツカツと音を立てながら足早に歩いていく。そんな様子を見ながらいるとファーリアさんから声を掛けられる。



「ユリナさんにとっても大事な話になりますので一緒にお越し下さい。それに貴女にとっては吃驚するものが見れるかもしれませんね。」


「え? はい。」



 面白そうにクスクスと笑いながら歩き始めたファーリアさんの後ろを言われた言葉の意味が分からないまま付いていく。



 暫く歩いていくと大きな扉の前に着く。一度だけ入った事があるその場所は玉座の間と言える場所になる。中から少し声が聞こえてくるが何と言ってるかまでは聞き取ることが出来ない。扉の前にいる騎士が此方を見た瞬間頭を下げ扉を開けていく。



「魔術師長ファーリア様が到着されました!」



 そう騎士が声を張り上げると中から一切の声が止み、開いた扉から一斉に此方を見ている姿が確認できた。先程師匠とファーリアさんの会話でも有ったように勇者らと騎士団長とおぼしき人物がそこにいて、玉座にはこの街のトップである王様が座っていた。勇者らは私と師匠を見て驚いているようだが流石に大声を上げたり喋る者はいなかった。というか勇者は元気そうにしている。やっぱり[黄]魔法の雷は大したこと無かったみたいだ。そして更に視線を巡らせる。騎士団長に関しては紹介はされたものの関わりがなかったので名前を覚えていない。王様も会ったのは一回だけだったので失礼かもしれないが覚えていない。そんな偉い人が集まるこの場の雰囲気やプレッシャーが凄くて戦々恐々としていた私に師匠は小声で用件を伝えてきた。



「俺の後ろを付いてきて同じく動作するだけで良い。別に何も喋ることは無いからな。」



 その言葉に軽く頷き中へ歩いていく師匠の後を付いていく。中に入り扉からある程度離れたところで立ち止まるので私も止まる。その瞬間扉は重厚な音を立てて閉まっていく。そんな中私は、悠然とした姿の師匠の事を見ていた。今までそんな様子は見たことが無いので師匠のそんな雰囲気も相まって緊張を加速させているが特に喋らなくても大丈夫と言われたので大分落ち着いてはいた。先ずファーリアさんが王様の前まで歩いていき頭を下げ話をしていたのを師匠と後ろの方で見ていた。



「魔術師長ファーリア、ただいま参りました。遅れてしまい大変申し訳ございません。」


「気にするでない。きちんとあやつを連れてきた様だしの。」



 そう言って王様が此方に視線を向けるとファーリアさんは横に引いていく。それを見計らって師匠は歩き出すので私も慌ててそれに追随する。


 そして先程立っていたファーリアさんの位置まで来るとスッと片膝立ちになり頭を垂れる。ぎょっとしつつ同じように私も動き俯いたまま黙っていた。ざわっとした声が聞こえて来たが多分勇者らの方面からだろう。



「お久し振りで御座います、陛下。御元気そうで何よりです。此度の件ですが魔術師長より軽くでは有りますがお聞きしました。俺で宜しければ知恵と御力をお貸ししましょう。」


「ハハッ、お主が力を貸してくれれば百人力よ。だが今回は目立たせたい者達がおるでな。その者のサポートという形になるやもしれぬが良いか?」


「ええ、貸せるだけのお力は元よりこの街に住む一人として当然の事で御座います故、私情を挟むこと等有りません。」


「ふむ、そう言ってくれて助かるぞ。....ところでお主の後ろに控える者は誰じゃ?」


「此方は俺の弟子になった者です。察してはおいでかもしれませんが召喚された者の一人です。魔術師長の命令(依頼)により師事させて頂いております。実力も問題なく、勇者を凌ぐ程には。」


「ふむ、弟子とな。それは驚きだが、なれば、」


「陛下のお考え通り、今回の騒動に置いては力を貸すのも吝かでは有りません。勿論本人の意思も有ります故聞いてからになりますが、」


「.....。」


「しかしながら陛下がもう一つお考えになられている事に関しては了承しかねます。此方に戻す理由は俺にとってもこの者にとっても本意では御座いません故、それが〝王命〟になろうとも俺は手放す気は有りません。それでも何かを弄するのであれば俺はこの街を去ります。聡明な陛下で有ればそうならないように考えられると俺は信じておりますのでこの街が、民が大事ならば下手に行動には出ないで下さいと...ご忠告申し上げます。」



 シーンと場が静まり返る。誰も何も言えない、言えるわけが無いのだ。


 私は師匠のいつもと違う話し方に驚いていた。ファーリアさんが言っていた吃驚する事はこれを指していたのだろう。畏まってる筈なのに一人称が〝俺〟のままという事には驚きのあまり気付かなかったが。途中、王様に急に話を振られ思わず体を硬直させていた。話さなくて良いとは言われたが黙っているのもと思って何を喋るか真っ白な頭で考えてはいたが師匠はどんどん話を進めていた。今も頭を下げたままでは有るが凄まじいプレッシャーを放っている師匠は誰にも口を開かせなかった。そうして暫く静まり返った室内で笑い声が上がる。



「ハハハ、やはりお主には勝てんな。そんな事を言われて儂が簡単に王命を使うとでも思うか。全く王であるこの儂を脅すのはお主くらいだぞ。」


「すみません、言葉が過ぎましたね。ですが、陛下は俺がどういう反応を取るか楽しみにしていましたね? 全くお人が悪いですね。」



 師匠は苦笑を浮かべながらそう言うと立ち上がった。私にも立つよう促して来るが何だか良く分からない状況に目を白黒させていたし何より今までの雰囲気に圧されていたせいか力が上手く入らず立ち上がれない。そんな私の様子を察してか師匠は体を支えて立たせてくれる。そのまま肩を支えられながらいると面白そうな声音で笑う王様の姿。そんな様子を不機嫌そうに見る師匠。



「で、本題に移って頂けますか、陛下。俺は一刻も早く部屋に戻りたいので出来るだけ簡潔に、実りのあるお話を。」



 さっきの恭しい態度は何処行った!? と思うほど退屈そうな表情を浮かべて平然と言う師匠に王様は特に嫌そうな顔を見せず、というより楽しそうに笑顔を浮かべている。騎士団長も魔術師長もその様子に驚く事が無く苦笑を浮かべている。驚いているのはやはり私を始めとした事情を知らない召喚された人達。彼らはこの街のトップだ。そんな不遜な態度は一市民に許される筈がない。だからこその最初の方に見せた師匠の態度なのだろうが何とも今は軽い雰囲気を纏っている。



「儂も重苦しいのは苦手だしの。これくらいが丁度良いかもしれぬな。ノト殿が言うように早速本題に移るとしよう。」









 漸く部屋に戻ってきた、外は深い闇に覆われ星が瞬いている。ユリナも俺も特に話さないので静かだ。俺は部屋に戻ってから何度目かも分からない溜め息を吐く。そんな溜め息だけがたまに聞こえる部屋で最初に口を開いたのはユリナだった。



「嫌そうですね、私はてっきり断るかと思ってました。」


「あぁー? 仕方ねえだろ、任せっきりに出来るほど信用できねえし、強くもねえんだから、やるしかねえよ。」


「そうですけど、あんなに色々と条件をもらってもやる気が無い様子を見せて流石の王様も唖然としてませんでした?」


「良いんだよ。あの人はあれで楽しんでるから。」



 唖然とした表情を見せつつ内心楽しんでいたに違いない。やはり上の者と話したり交渉したりするのは疲れる。ズルズルと今まで座っていたソファに横になり目を瞑る。



 俺が求めたのは4つ。


 一つ、俺とユリナは別行動すること。一緒にいる意味無い。勇者らのお披露目の時だっていなかったしいなくても良いという結果に至ったため。


 二つ、これから遠出が増えそうなので授業をもうしないこと。俺の知識が増える良い機会では有ったが今後は多忙の末に行えなくなるかもしれない。そうなったとき迷惑を掛けるので取り止めること。もし何かあり俺の方で時間があれば個別で相談に乗るという点で落ち着いた。


 三つ、共闘は今回限り。今日、勇者とユリナの間に契約が交わされその中に俺と関わらない旨を書いたため。俺の匙加減次第になる様な書き方だったが勇者の顔を立てればそれ以上はどうなろうが興味もないし関係もない。ユリナはこれに関して了承している。勇者君は気に食わないといった様子や睨むようにして見ていたが気付かない振りをしてスルーした。


 四つ、報酬額。最低ラインを決めて討伐数にいって増していくようにした。何か額に関して俺の発言に対して滅多に驚かない騎士団長と魔術師長が驚いていたが今回の強さを考えると妥当だと思う。ユリナも呆れてる様子を見せていたが何故だろうか。前にもお金を渡したときユリナに微妙な反応されたし金銭感覚が違う、のか?



 横になり目を瞑ったまま今日の出来事を思い出す。今日は何故だか一日がとても長かった気がする。勇者に捕まり決闘の末ユリナが勝利し、迷宮に挑むも時間制限も有ったため大して進めず、挙げ句の果てに王に呼ばれるわ、会いたくない勇者達とまた顔を会わせるわで最近の俺の生活からは考えられない程色々有りすぎた。しかも〝討伐〟依頼では無く〝協力〟依頼。これ以上にやりにくい事が有るだろうか。


 正直今回の魔物の強さを考えると今の勇者らの実力じゃ無理だと思っている。それに協力なんて本当はしたくないのだが死なれるのはユリナにとってはよろしくないらしいので仕方なく引き受けた。話が逸れたが、本題はここから。今回の魔物に関して話を聞いていくと一体の魔物が魔王を自称しているらしい。しかも配下となる魔物も統率が取れており一体づつの強さもそこそこ有る。数は万ほどはいかないらしいが数千はいるとか。たまに知恵がある魔物が出現するがその魔物達は通常より強いのだ。大抵冒険者のAランク以上でAランクの実力に近いBランクの冒険者が選抜され数十人で相手取り漸く勝てると行った強さなのだが。とはいってもギルドのランク制度はあくまで推定なのでばらつきがあるから信用はならないのだが勇者らの実力は良くてCランクで、平均じゃDランク位だと推測できる。そんな奴等のお守りとかは正直勘弁だ。そんな俺の心情を察してか騎士団長が自らついてくるらしいが。まあ騎士団長の実力なら上手く引っ張ってくれるから俺は個人でユリナの修行がてら敵を倒していこうと考えてる。



「……しょー? 師匠ー?」


「んあ? 何だ?」


「寝るならベッドで寝てくださいねー?」


「まだ起きてるから心配すんなー。」



 そう言って目を閉じたまま手を上げてプラプラさせる。



「早速明日出るんですから夜更かししちゃ起きれなくなりますよー?」


「んー、分かってるー。何かオカンぽくなってるぞー。」


「っ! 私まだ17ですよっ。流石に失礼ですっ!」


「あー? そうかー、悪いー。」



 まだ文句ありげな雰囲気だったが俺が疲労から、だれている様子を見てそれ以上は特に何も言ってこなかった。明日から更に忙しくなる。それに今回の騒動に関して色々と調べなければならない。かれこれこの数千という規模の魔物を率いる自称魔王の存在が250年以上もの間現れなかったのに今回出現した理由。ちょっとした騒動で自称する魔物が現れた事は有ったがこの規模は何か裏があると考えても良いだろう。あぁ、修行以上に面倒な事だ。この俺に迷惑をかけた以上は無事でいられると思うなよ。



「師匠ー? って寝てる。私の言ったこと全然聞いてない。はぁ、仕方無いか。」



 知らぬ間に寝ていた俺はそんなユリナの声も聞こえず横になってる体勢そのままに熟睡していたのだった。







 2章終了です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ