俺の私の新生活2
「お母さーん。本当に出て行かなきゃダメなの?」
「仕方ないじゃないの。ここからなら始発からじゃないと間に合わないのよ?」
「うー、でもぉ…」
「それに自分でこの高校がいいっていったんじゃない」
もう何度目かわからない会話に自分で言うのもなんだが正直不毛に感じる。今日は3月31日。明日は高校の入学式だ。それにあたって私は自分の家をでて1人暮らしをしなければならない。お母さんの言う通り、家から通うとなると始発からじゃないと間に合わないくらい遠いからだ。でも…。
「そうだけど、みんなに会えなくなっちゃうし、それに去年から新しく入ったって男の子にまだ会ってないしそれに…」
そう。私が家をでたくない理由はお母さんがやっている児童養護施設の子たちに会えなくなってしまうからだ。私はいつも施設のみんなと遊んでいる。それができなくなってしまうのが嫌だ。受験が終わったから新しく入ったっていう同じ年の男の子に会ってみたかった。なんでか会えなかったし。
「夏休みにでも帰って来ればいいでしょ。それにその子なら同じ学校だから多分会えるわよ」
「そうなの!?」
母さんの言葉に驚きを隠せない。私がこれから通う学校は施設からも遠いし、偏差値もそれなりにあるところだ。わざわざそんなところに行くなんて。まぁ、私がいえたことじゃないけど。
「とても賢い子よ。手のかからない子だったから施設をでても安心ね」
「施設を出る?でもあそこは学生の間は施設で暮らすのが規則じゃなかったっけ?」
「施設から通うのも難しいのも理由の1つだけどあの子の場合は少し特別ね。それだけ信用してるってことよ」
「へー。お母さんがそこまでいうならいい人なんだろうね。ふふっ、楽しみ」
「そういうことだからもう寝なさい。明日は私が車で送ってあげるけど、入学式が終わったらこの住所に行きなさい。荷物はもう送ってるからいい加減諦めなさい」
「…………はーい」
明日から始まる新しい生活への期待と不安で胸がいっぱいなる。そのせいかその日はなかなか寝付けなくてお母さんが起こしに来るまで夢の中だった。