女王さまのパズル
なろう「冬童話2017」参加作品です☆
あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。
女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっています。
そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。
ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
冬の女王様が塔に入ったままなのです。
辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
困った王様はお触れを出しました。
冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。
何故冬の女王様は塔を離れないのでしょうか。
何故春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。
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さて。こんなことになってしまって、困り果てた、春、夏、秋の女王様たちは塔の下に集まりました。
「どうしてあなたはほうっておくの? 早く交代しなさいって言ってやりなさいよ!」
夏の女王様が言います。とてもハッキリした性格なのです。
「あら、私、代わろうとしたの。塔をどんどん登って行って〈高見の間〉の扉をノックしたのよ。でも……」
春の女王様が頬を桜色に染めて言うには、
「冬の女王様は自分の季節の間じゅう、塔の上から白一色の世界を見続けて、
その色こそ一番美しいと気づいたんですって。
だから、この世界に白を汚す色は必要ないって言うの。
もうこれからは、ずーーーーーーーーーーーーーっと白一色の世界、冬を続けます」
「呆れた! で、あなたはスゴスゴ帰ってきたの? 扉をこじ開けて入ってしまえばよかったのに!」
「でも、それを聞いたときは、そうかなって……白が一番綺麗かなって」
春の女王様は大変穏やかで優しいのです。
「でも、私、気づいたわ。こうしてみなさん、夏の女王様、秋の女王様、そして、私、3人集まっただけで
こんなに素敵な色だもの。やっぱり、白だけじゃいけないわ」
その日、春の女王様は花のピンク、夏の女王様は空の瑠璃色、秋の女王様は実りの栗色の、それはそれは素敵なドレスをお召しになっていましたからね。
「3人、知恵を出し合えば冬の女王様を交代させるいい考えが浮かぶはず」
「そのとおりよ。こんなのはどう?」
さっそく夏の女王様が一歩前へ出て言いました。
彼女はいつも力強くてハツラツとしています。ねえ、みなさん、夏ってそうでしょう?
夏の女王様は言います。
「私たち100本の白い糸を集めて、それぞれの季節の色に染めるの。その色糸で塔の下の地面に季節を描くのよ。きっと冬の女王様は白だけではない色色な色の美しさを思い出すに違いないわ」
名案です。
さっそく3人の女王様はそれぞれのお城へ引き返して、白い100本の糸を自分の季節のお気に入りの色に染めました。
持ち寄った色糸を見て、また夏の女王様が言いました。
「さあ、では、今から明日の朝までに地面を色糸で飾りましょう!」
ところが春の女王様が長いまつげをパチパチさせて言いました。
「でも、こう暗くては色がよく見えないわ」
そうなんです。何しろ真冬ですからね。とっくに日が落ちて辺りは真っ暗になっていました。
ブルル、その上、寒くもありました。
「なるほど。夜の間に作業をするのは無理みたいねぇ」
さすがの夏の女王様もあきらめかけた、そのときです
「……私にまかせてくださいな」
誰の声?
そう! なんと、ここで初めて秋の女王様が口を開きました。
お気づきでしたか? この秋の女王様は最初からちゃんと一緒にいたんですよ。
いたのだけれど、たいへんおとなしくて控えめな女王様なので、今、初めて話したんです。
でも、誤解しないでください。〈おとなしい〉というのはけっして〈弱い〉という意味ではありませんからね。
思慮深くて聡明で、とてもしっかりした秋の女王様です。
その秋の女王様が言いました。たいそう小さな声でしたが。
「私が、夜の間ずっと、かがり火を燃やします。だから、どうぞ安心して色糸で地面に季節を描いてくださいな」
「でも」
恐縮する春と夏の女王様に秋の女王様が両手を握り合わせて言います。
「私は秋の女王ですもの。薪になる枯れ木をたくさん持っているのよ。それに」
恥ずかしそうに眼を伏せました。
「私ね、みなさんと違って色の数が少ないの。そのために100本ぶんの色糸を染められなかったわ。きっと地面に描く時間も早く終わるでしょう。だから、そのかわり火を燃やしてかがり火の番をします」
いえいえ、春と夏の女王様は即座に首を振りました。
「あなたの秋の色はとても素敵! 数じゃないわ。枯葉の茶色はひとつとして同じ色がない。どれもため息が出るほどよ」
「そうよ。紅葉の赤は春の花の赤、夏の太陽の赤、そのどの赤とも違う、ぐっと深みのある赤で、本当に綺麗!」
「まあ、ありがとう!」
「そうよ、私たち、どの色も綺麗で美しいわ。そのことを忘れてしまうなんて冬の女王様って本当に――」
春と夏と秋の女王様は声をそろえて言いました。
「本当にかわいそう!」
そうなんです。〝ひどい〟ではなくて〝かわいそう〟と言ったんですよ。ここはとっても大切。
こうして――
その夜一晩中、凍える白い雪原に、赤々とかがり火を燃やして、春、夏、秋の女王様は自分の季節を色糸で描きました。
朝日が昇り、キラキラ輝く地面に色とりどりの春、夏、秋……!
「まあ! なんて綺麗!」
塔の上からこれを目にした冬の女王様は、一声叫ぶなり塔を駆け降りてきました。
「ごめんなさい、みなさん。私、私、勘違いしていたわ!」
冬の女王様は涙をためた目であやまりました。
「本当にごめんなさい。どうか許してちょうだい。なにしろ――」
来る日も来る日も、白一色の世界でしょう?
その一色の景色を見続けて冬の王女様は他の色を忘れてしまったのでしょう。
でも、今、色色の色を見て、色んな色の美しさを思い出したようです。
春、夏、秋の女王様たちは微笑んで言いました。
「いいのよ。大丈夫! 幸い季節はほんの少し遅れただけだもの」
入れ替わりに春の女王様が塔の中へ入って行きました。
女王様が塔の高窓から顔を出すと、ホラ! 一瞬で春の始まりです。
みるみる雪は溶けて行きました。
「お待ちになって!」
自分のあやまちにしょんぼり肩を落としてその場を去ろうとする冬の女王様を、夏の女王様が呼び止めました。見ると夏の女王様も、そして、その後ろにひっそりとたたずむ秋の女王様も、腕いっぱいに回収した色糸を抱えています。
「さあ、この色糸は全部あなたにさしあげます。塔に昇る次の冬までの間、また白一色に心が占領されてしまわないように、このたくさんの色をあなたのお城に飾ってね!」
冬の女王様が糸をもらって、この物語はお終いです。
――
え? 待って? せっかくずっと読んできたのに、王様と、それから、肝心のパズルが出てこなかった、ですって?
いいえ、ちゃんと出ています。
ヒントは……
3人の女王様たちはそれぞれ〝自分の持っているもの〟で今回の難問を解決なさったということ。
それがパズルなんです。
最後は
渡して、お終い。
ね?
そして、王様は……
ねえ? 王様はいないんですよ。
実はこの国では〈四季の女王様〉が全員で王様役を務めているんです。
何故って、ほら、よぉく、王様を眺めてごらんなさい。〈王〉は何でできている?
王様は4人の……
お*し*ま*い
お読みくださりありがとうございました!