定められし悲劇
城内に響くのは叫び声と罵声のみ。
煌びやかな装飾は恐怖を演出する。
残されたものは血塗られた玉座と孤独のみ。
悪の英雄は朽ち果てた。
錆びた剣を膝に据え、男は1人玉座に座す。
【これは、醜き弱者の物語】
初代グスタフ国王は、建国から10年足らずで大陸の西半分を領地にし、皇帝を名乗った。当時の王国騎士団の実力は圧倒的であり、他の追随を許さなかったという。彼らは周辺諸国を容易く蹂躙していったーー
帝国暦212年
「はぁ…」
ため息をついてみた。
いっその事、このまま体の中身が全て飛んで行ってくれればいいのに。
「ねぇクロウ、今度は何のため息かしら」
「聞いてくれよ、僕はただ畑仕事の前に屋根の上で休憩してただけなんだ。なのにお袋は、『サボる奴には晩飯は作らない』なんて言うんだよ、まったく実の息子が信用できんのかね」
全くもって不服である。
15年もの間に築いた信頼はどこにあるというのだ。
「いや、どう考えても自業自得じゃない」
幼馴染でさえそんな事を言う。
「カレン、君ですらそんなことを言うなんて、僕たちの友情はこれ程までにちっぽけなものだったのかい」
「はいはい、あんたの信用なんてブドウの皮ぐらいの重さしかないわよ」
ーーなんて薄情な奴なんだ、そう言い返そうと思ったが不毛な言い争いをいつまでも続けるわけにはいかない。
「なぁカレン…友人として畑仕事を手伝ってはくれないか?」
幼馴染は何も言わず、踵を返して去っていった。
「薄情者め!」
叫んだ後に、僕は渋々畑仕事に取り掛かった。
日が沈んだ頃、畑仕事を終えて家に帰ると、お袋は晩飯を作って待っていた。
こういう普通の生活が、僕はずっと続くと信じていたんだ。ーーそう、あの日までは
頑張ります。