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「楽しめたようで良かったわね。」


ふんとそっぽを向いて言う。何だか恥をさらした気分。でも、こうしてフィオナと昔の話を出来るなんて思ってもみなかった。本当にただの姉妹みたいに。少し嬉しい。


「僕は一人っ子だから、兄弟というものがいない。だから二人の話を聞けて楽しかったぞ。」


「俺には兄がいるが……、あまり仲が良くないんでな。お前らは仲が良さそうで良かった。」


ルヴィナスとスウォンがそれぞれ話す。そういえば、スウォンは兄弟との不仲が原因もあって俺様というか孤高で誰にも気を許さない人間になったんだっけ。その内、フィオナがルート通りに取り持って彼のトラウマを払拭してくれるだろう。


「きぃーいー!」


話している最中、茂みが揺れた。そして、甲高い声が聞こえモンスターが飛び出してきた。


「ゴブリン!」


誰かが叫んだ。

人の話し声につられてきたのだろうか。小人族ゴブリンは比較的人間の住む町近くに現れるモンスター。人間の食べ物などをあさりに来る時もあるらしい。だが、モンスターの中でも弱く初心者の魔導士や剣士の初戦に用いられる。恐らく学園の生徒の中にもゴブリンが課題の班もあるだろう。


「……ここで、俺らが倒しても構わんが。ゴブリンが課題の奴らを邪魔する事になるしな。」


スウォンがポツリと呟く。

森に放たれているモンスターは他所から連れられているのも複数いるようだ。頭数を減らしてしまったら他の生徒の妨げになる。極力、課題以外のモンスターは倒さないようにと注意を受けている。だが、こうして出会ってエンカウントしてしまったらどうすれば良いのだろう。ゴブリンの様子を見ると臨戦態勢の様だし、横をすり抜けるわけにもいかない。

四人でどうするか悩んでいると……。


「待て〜! ゴブリン。」


「足早いなぁ。」


「逃したら面倒だぞ。」


複数人の足音が聞こえてきた。

どうやら、このゴブリンは他の班に追いかけられてここまで来たらしい。


「よっしゃ、見つけたっ! て、うや⁉︎ 生徒会長御一行⁉︎」


一人の男子生徒が茂みをかき分けゴブリンを見つけた。すぐに私達にも気づき、変な叫び声をあげる。


て、生徒会長御一行って何⁉︎


知らない内に変なあだ名を付けられている様だ。


「お前、マリアンか。」


どうやら、会長と知り合いの様だ。

栗毛の天パで童顔の薄黄色の瞳。ネクタイが上級生の物で年上のはずだが、どこか幼い印象を受ける。背も低く女の子と見間違うような容姿だ。


「げげげっ。スウォン。もしかしてお前らもゴブリン狙いか⁉︎」


「いや、俺らの課題は……」


「お前だけには絶対に渡さん!」


人の話を聞かない系男子の様だ。


「先輩〜。天下の魔法学園生徒会長様がちゃっちいゴブリンが相手なわけないじゃないですかぁ〜。」


何処か間延びした声が聞こえ、続けて茂みから女子生徒が出てきた。この生徒は見覚えがある。同じクラスの女子生徒だ。


「あれれ〜、シェリア嬢にフィオナ嬢じゃん。そっかー、会長さんと同じチームだったっけ〜。」


「ケルディさん。」


フィオナが彼女の名前を呼んだ。

ケルディはキリッとした緑のつり目にスレンダーな体つきで間延びした喋り方と対照的に中性的で格好よい容姿の持ち主だ。瞳と同じ緑の髪を高い位置で結っている。一緒にいるマリアン

の方が女に見えるかもしれない……。


「マリー、あまり突っ走ると危ないぞ!」


「ケルディ、早いよぅ。」


茂みが再び揺れ残りの二人が出てきた。男子生徒と女子生徒。

女子生徒はまたもや同じクラスの子だ。よくケルディと一緒にいる。確か、名前はハンナ。栗毛の髪を二つのおさげでまとめていてクラスでも目立たず大人しい印象だ。

男子生徒は見たことはない。瞳と髪の色は同じで灰色がかった短い髪を後ろに流している。本人の精悍な顔つきもあって男らしい印象だ。そして不思議な事に腰には杖ではなく、剣をさしていた。魔法学園なのに。


「ウォーレン! マリーと呼ぶのはやめろって言っているだろう!」


マリアンが男子生徒に向かって怒る。どうやらウォーレンと言うらしい。というか、やっぱり女の子みたいな名前と容姿でマリアンはからかいのネタになっている様だ。


「わわ、生徒会長さん達だぁ。すごい、こんなに間近で会えるなんて感激です。」


一方でハンナはスウォンに会えたことを感激しているらしく、キラキラと目を輝かせている。スウォンは生徒会長なだけあって絶大な人気を誇っているから(主に女子生徒)当然なのかもしれない。


「きぃーいー! きぃーいー!」


先程から無視されていたゴブリンが自分の存在を知らしめるかのようにひときわ大きな声で鳴いた。


「そうだ、ゴブリン。ふっ、スウォンなぞに取られる訳にはいかない。行くぞ、ウォーセン。」


「分かった。マリー。」


「だから、マリーと呼ぶな!」


マリアンは杖を構え、ウォーレンは剣を構えた。


「え、剣?」


思わず呟く。ここは魔法学園ではなかっただろうか?


不思議に思っているとルヴィナスが説明してくれる。


「ウォーレンは剣に魔力を乗せて魔法を使うんだ。マリアンの魔力と相性が良いらしい、だからああやって合わせているんだろう。魔法剣ってヤツだな。とっても珍しいコトなんだぞ。」


さすが本の虫のルヴィナス。とても詳しい。魔法剣なんてあったのか。ゲームでも見たことがなかった気がするが……。


マリアンが呪文を唱える。どうやら風の魔法らしい。二人の周りに風が渦巻き、ウォーレンの剣に吸い込まれていく。


たっ……!


ウォーレンが動いた。疾い。一瞬でゴブリンとの間合いを詰めるとモンスターの体を一閃した。


「ギーィー!」


ゴブリンの体は光の粒となって空に消えた。この世界ではモンスターは死ぬ程のダメージを受けると異界へと還る。モンスターも魔族同様、本来この世界にいるはずのない存在らしい。

ウォーセンはゴブリンが居た場所から何かを拾った。モンスターは異界へ還る時、何かアイテムを残す時がある。いわゆるドロップ品。乙女ゲームなのにRPGみたいな所があるのだ。


「これで二体目。後、三体か。」


ポツリと呟く。なるほど、課題はゴブリンを複数倒すことみたいだ。


「ふふーん、どうだスウォン。ボク達の実力は。思い知ったか!」


マリアンは手を腰に当てふんぞり返って自慢している。どうもマリアンはスウォンを敵視しているようだ。


「マリー先輩〜。だから、会長さんはゴブリンなんか課題じゃないと思いますよ〜。」


ケルディはマリアンに再度同じことを言う。だが、話聞かない系男子のマリアンはまたもや聞いていないようだ。都合の良いお耳。


「あー……、そうだな。マリアン。お前達の実力はすごいものだな。」


スウォンは彼に慣れているのか諦めているのか、棒読み加減で言葉を発する。


「ふん。まっ、当然だ。僕に生徒会長の座を奪われないよう精々、気をつける事だ。」


マリアンは調子に乗ってそんな事を口にしている。


ポカッ


唐突にそんな彼に拳骨が下された。ハンナだ。大人しい彼女がそのような事をするのは意外だ。


「ダメだよ。お兄ちゃん。そんな事を言ったら。」


「妹に叱られるとは世話ないな。」


ハンナの言葉にウォーレンがぼそりと呟く。


「うるさい……。」


項垂れるマリアン。

どうやら、マリアンとハンナは兄弟のようだ。よく見れば顔も似ている気がする。


「で、会長さん達は何が課題なの〜?」


ケルディが私達を見て尋ねる。

スウォンはそれに答えるとケルディ達は驚いていた。


「ミニドラなんてやっばいねぇ。流石だわ〜。」


ミニドラ……、略されているが言うまでもなくミニドラゴンの事である。


「そういえば、さっきの大きな足跡ってミニドラだったんじゃないかなぁ?」


「言われてみれば〜、そうかもしれないね〜。」


「え、本当ですか! どこら辺で見かけたんですか?」


フィオナが尋ねると二人は詳しく教えてくれた。マリアンは敵に塩を送る真似などするなと騒いでいたが。


登場人物がごちゃごちゃしていてすみません。

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