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「さて、シェリアちゃんには魔法を制御する訓練をしてもらいます。」


「訓練ですか。」


私たちは今運動場のような広い空間にいた。どうやら、私が寝ていた部屋は魔法陣が敷かれておりそれを利用して特定の場所へ移動できるらしい。

私が起きた時、キリトが気配なく突然現れたのはこのためらしい。

ちなみに私についている足枷はまだ健在である。これはキリトの魔法らしく念の為の逃亡防止らしい。魔法なので重さも感じなければ、縦横動き回っても絡まることもない。部屋から移動しても何処からか鎖が繋がっており、日常生活に支障をきたす事はないそうだ。


「うん。闇の魔法だって使い方次第では毒にも薬にもなる。良い事にも悪い事にも使えるよ。つまり、闇に飲まれずに見事に魔法を扱えるようになったらここから出ていけるというわけ。」


「なるほど。でも、あの時私は必死で魔法を使ったけど、今、使えと言われても発動できるかどうか……。」


あの時、フィオナを傷つけるものから救いたくて体が勝手に動いていた。冷静になって考えてみるとどうやって使ったのかよくわからない。


「闇魔法を扱う人は珍しいからね。そこが難しい所だけど、少しずついろんな事を試していくしかないね。まあ、まずは基本の魔力集中だね。杖を使ってやってみて。」


「わかりました。」


魔法は一点に魔力を集中してそこから発生させるものだ。なので、まずは自分の魔力を一ヶ所に集める所が基本中の基本だ。

私は杖の先に魔力を乗せるように集中した。黒い魔力の塊が杖の先に現れる。


「流石だね。いつもと違う感じはあるかな?」


「そうですね、何だか質が重い感じがします。」


闇魔法とやらの封印が解ける前は風の透き通った感じの魔力をいつも感じていた。


「封印が解けて属性が変化したからかもしれないね。君の魔法はオフィーリア様に封印されていたみたいだから。」


オフィーリア。私とフィオナの母親の名前だ。フィオナとそっくりな容姿の持ち主でいつもニコニコと笑っていたのを覚えている。そうだ、彼女に魔法を封印されていたんだ。あの人の最期の時に。


最期……。


あれ、何で封印されたんだっけ?


「シェリア!」


キリトの声が聞こえた。ふと杖の先を見ると拳くらいの大きさだった魔力の玉が膨らんで一メートル位まで達していた。


「しまっ……!」


「マジック・チェーン=ホーリー。」


聞いた事のない呪文だ。

キリトの方から鎖が現れ私の周りを囲む。ピカッと鎖がひときわ輝いたかと思うと、私の魔力球は消え去っていた。


「……今の呪文なんですか?」


「俺の魔法と校長の魔法を合わせたものだよ。俺は縛る事に特化した魔法が得意でね。」


「さすが変態教師。」


魔法の力は正式な魔法以外にも多数ある。いわゆるオリジナル。魔力を練って別の物の形で今回は鎖のように具現化する事も可能だ。本人が使いやすい方に魔力を練るという感じだろうか。

そんな使い方をできる人はとても優秀な一部の一握りだが。


「……。ともかく俺の魔法は効果を持続、増幅させることが得意なんだ。これを見てごらん。」


キリトは手の平から薄黄色に輝く綺麗な結晶を見せた。ガラスのように透明感がありとても綺麗だ。


「綺麗ですね……。」


思わずため息がもれる。本当にとても綺麗だ。


「これは校長が作った魔石。校長の光属性の魔力が詰まってる。この石から校長の魔力を引き出して君の闇魔法を中和したって事だよ。」


「そんなものがあるんですね。」


……そういえば、物語終盤でフィオナが自分の魔力石を作って相手キャラにもたせていた気がする。


「とまあ、そういう事で君が万一魔力を暴走させてしまっても大丈夫。安心して失敗してね?」


「いや、失敗したらダメでしょう。」


思わず突っ込む。でも、とりあえず安心した。もし失敗して前みたいな事になってしまったら嫌だ。


「とりあえず、練習あるのみですね。頑張ります。」


「うんうん、やる気があるのはいい事だね。頑張れ~!」


何だか応援が適当な気がするが、私はその日一日安定して魔力を維持する事をひたすら練習した。


ーーーー


「つ、つかれた……。」


あれからひたすら魔力を維持させるのに集中した。こんなに魔力を使ったのは久々だ。


「お疲れ様、シェリアちゃん。お水飲むかい?」


地面に座り込む私に水を差し出すキリト。

とてもありがたい。今、私の喉はカラカラだった。


「ありがとう。」


私は受け取って水をぐいっーと一気に飲み干した。


「ふふ。いい飲みっぷりだね。」


「とっても喉が渇いてたから。ねぇ、先生。」


「ん、何かな?」


私は気になっていた事を聞いた。


「フィオナ達は、元気?」


私は彼女達を傷つけてしまった。怖くて今まで聞けなかったが、気になっていた事も事実。私に怒っているだろうか、それとも怖がっているだろうか。


「みんな、元気だよ。怪我をした子はたくさんいるけど、死人は出てない。」


私が気になっている事がわかるのか、キリトは簡潔に情報を述べた。


「そう。ありがとう。」


死人は出ていない。だが、けが人は多数出た。私は人を傷つけた。


「ほら、そんな顔をしないで。」


キリトが私の顔を両手で包み込むように触れる。


「!」


「君は今、ここで二度と同じ過ちを繰り返さないために訓練しているんだろう。なら、大丈夫。」


そういって、彼はにこりと微笑んだ。

根拠もないのに大丈夫な気がしてきて、私は少し笑った。

2章に突入〜

読んでくださってる方々のおかげです。

ありがとうございます!

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