18
「……昔はともかく今の君に僕に対抗できる力はあるのかな?」
ゼノがふと何かに気づいたようにニヤリと笑い校長の方を見る。
「そうだのう。今のワシではちょっと厳しいだろう。もとより、対抗するつもりも毛頭ないよ。……エスケープ。」
校長はそう言い手にした杖を高く掲げ、呟くように呪文を唱えた。
杖から真っ白い光りが溢れ出る。とても眩しくて思わず目を瞑る。
光りが収まりふと目を開けると、学園の講堂だった。私たちの他に操られていたと思われる生徒達もいた。
おそらくあの屋敷にいた学園関係者を一斉に移動させたのだろう。すごい魔力だ。
ガクンッ
ふいに体の力が抜けて立てなくなった。
床に倒れ込みそうになる私を支えるキリト。
すると、校長がこちらに寄ってきた。
「すまんのう。シェリア殿、君は私と相反する属性だからエスケープの魔法が体に響いたのだろう。」
確かにフィオナの魔法を近くで受けた時のように、体だけがとてもだるい。
「シェリア殿、君はしばらく学校へは通うことができなくなる。キリト先生に全てを任せてあるから、安心して今は眠りなさい。」
他の生徒を傷つけてしまったんだ。当然のことだろう。少し寂しい気もするが。
眠らせようとしているのか、校長が私に手をかざし魔法をかけようとした時、
「待って下さい、クレアメンスさん。シェリアは私を助けようとして……!」
校長の魔法で講堂の隅にいた彼女だが、こちらに駆け寄ってきた。腕の氷がなくなっている。恐らく校長はゼノと相対する前に怪我人の治療をしていたのだろう。
「わかっているよ。フィオナ。だが、こちらにも事情があってね。シェリア殿は暫く隔離することになる。」
「そんな……! 」
「すまないね。」
ああ、フィオナ。
あなたに酷いことをしたのに、あなたの最愛の人を傷つけてしまったのに。
心配してくれるなんて、本当にあなたは天使みたい。
でも、私はあなたに顔をあわせることができないよ。
「スリーピング。」
私は校長に魔法をかけられ眠りに落ちた。
ーーーー
「うーん……。」
私は寝返りを打った。
お日様を浴びたいい匂いのするお布団。フカフカで寝心地がとても良い。
幸せである。
あれ、でも私いつ寝たんだっけ?
確か、校長に眠らされて……。
「そうだ、私……!」
思わず布団から跳ね起きる。
周りを見渡す。
「私の部屋じゃない……?」
てっきり自分の部屋で寝ているのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
円形の部屋だ。石造りで床には絨毯がひいてある。そこそこ広さがあり、端から端まで二十歩くらい。
私が寝ているベッドは部屋の真ん中に置いてある。ベットの横にはソファーとダイニングテーブルがある。
窓は二ヶ所あり、東側と西側だ。
一体ここはどこなのか調べてみたくて窓際の方へ寄る。すると足に違和感を覚えて、自分の体をよく見てみると……
ジャラン
「え? 鎖……?」
右足首に鎖が巻かれていた。特に重さは感じないのだが、鎖があることに気づくと違和感でしかない。
……うん、状況を整理しよう。
クレアメンス校長に眠らされた。
どうやら隔離されるらしい。
寝ている間に移動したっぽい。
鎖は逃亡防止っぽい。
そういえば、キリトに任せる的なこと校長言ってなかった?
…要は監禁ってこと?
「なぜ、このような事に……!」
私はがっくしとうなだれる。
さっぱり理解不能でる。
そういえば。ゲームの中でキリトルートの中に監禁があったなあ……。
なんてのんきに思い出す。
いやいやいや!
例え監禁ルートが存在するとしても、なぜ私が閉じ込められなければならないのか。
それはヒロインであるフィオナの役では。
何故、悪役ボスの私が監禁されねばならんのか。
「あれ、起きたみたいだね。おはよう、シェリアちゃん。」
私が一人あたふたしていると、背後から気配もなくキリトが現れた。
「うわ! 変態教師!」
「だから、変態じゃないってば。まあ、でも今回は変態と言われても仕方がないかもしれないね。」
大いにあるだろう。女子生徒を鎖付きで監禁しているんだぞ。これを変態と呼ばずして一体何になるのだろうか。
「まあ、落ち着いて話をしよう。シェリアちゃん。」
「落ち着けるか!」
「うん、まあ……。そうだろうねぇ。」
キリトも異常な状態だという事は承知しているのか、少し困った顔をして同意した。
「大丈夫。永遠にここに監禁するわけではないから。」
「隔離されるみたいな話は聞いてたけど、鎖付きなんて聞いてないわよ!」
「君の努力次第ではすぐに学校に戻れるから。」
「そういう問題じゃない! 今、ここで監禁されている状態が問題なの!」
「だから落ち着いてってば。」
「落ち着けるか!」
同じようなやり取りが繰り返される。
自分でも落ち着かなきゃと思うのだが、どうもテンパってしまう。
誰だっていきなり監禁されたとなれば慌てふためくと思う。
「落ち着いてくれなきゃ話ができないよ。」
困った子だねと言ってキリトは慌てている私の目の前に来ると、ぎゅっと抱きしめた。
「え」
思わず固まってしまう。何故抱きしめられなくてはならないのか。




