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さて、まずは材料を選ぶところからだ。液体を二種類混ぜ合わせるので二つ選ぶことになる。


何種類ものカラフルな液体が教壇に置いてあり、好きなものを混ぜ合わせるらしい。

ちなみに効果はどれがどれだかわからない。


成功させてからのお楽しみ。その方が面白いでしょ?


とキリトがニコニコと笑いながら言っていた。悪趣味である。


「どれにしましょうか?」


フィオナは目をキラキラと輝かせながら、液体を見ている。やはり女の子だから、こういうモノは興味をそそるのだろう。


見ると他の女生徒達が机の周りを囲んでキャイキャイと楽しそうである。


「僕は何でも構わないから、二人で選ぶといい。器具は準備しておこう。」


ルヴィナスはそう言って輪の中を離れていった。


「うーん、効能もわからないのに選ぶのもなんだか怖いわね。」


キリトが選んだ薬剤ということで、少し疑ってかかる私。面白半分に変なものいれていそうだ。


「そんな危ないものは置いていないと思うけど……。」


フィオナは少し困ったように苦笑した。


暫くして、私は青い液体を選んだ。なんとなく綺麗だなと思ったからだ。

フィオナはピンク色の液体を選んだ。かなり悩んでいて、最終的に目をつむって指をさしたものに決定したようだ。


「ふんふん、なるほど~。その液体を選んだんだね~。」


キリトは私達が選んだ液体を見比べながらニヤニヤとしていた。一体なんだって言うんだ。


「一体なんの効果になるのか楽しみですね~。」


フィオナは可愛らしい笑顔を浮かべている。純粋に楽しみにしているようだ。

そんな笑顔を見ると癒される。


私達は選んだ液体をそれぞれ持ちルヴィナスのところへと戻った。


「じゃあ、始めましょう。」


温度を上げる係は火魔法が得意なルヴィナス。かき混ぜ係は最初はフィオナが行い、次に私が行うことになった。


フィオナとルヴィナスは順調に進めていった。


他の班は液体が混ざらなくて分離してしまったり、なぜか爆発しているところもある。力が弱すぎると分離してしまい、力が強すぎると爆発するようだ。


力加減が難しいというキリトの言葉は本当らしい。


「ふぅ、なかなか集中力がいるね。」


フィオナが少し疲れた風に額を手で押さえながら呟いた。


「変わろうか?」


「そうね、お願いしようかな……。」


「うむ、では僕はこのまま火魔法をかけ続けるから二人とも慎重に交代するんだぞ。」


ルヴィナスが注意をかける。

よし、まずフィオナの魔力を感じて……。


カタカタカタカタ……


その時、液体を入れていたビーカーが揺れ始めた。フィオナと私の魔力が干渉しあったからかもしれない。それとも、力加減のさじ加減が急激に変化したのが原因だったのかもしれない。

ビンの揺れがひどくなり、私達が手を打つ前に爆発した。


「きゃっ!」


液体がフィオナの方へ飛び散る。


フィオナを守らなければ!


私はとっさにフィオナへ覆いかぶさる。

押し倒すような形になってしまったが不可抗力だ。うん。

ちょっとだけ、ラッキーと思っていたのもつかの間。


「あちっ」


液体が私に飛び散った。

火で温めると言ってもそんなに高温ではなかったのが幸いで、これといってダメージはなかったが、とても甘い香りが鼻につく。だが、慣れるととても心地よい香りだ。


なんだか、とってもいい気分。

もしかして、これがマジックキャンドルの効果なのか……?

思考がふわふわとして曖昧になっていく。夢心地。幸せな気分。


「シェリア! 大丈夫?」


私の体の下には愛しいフィオナ。

私を心配してくれているのね。とってもいじらしくて可愛らしい。

彼女の頬に手を伸ばし、触れる。繊細なガラスの置物に触れるみたいに。そう、彼女はとても美しい心を持ってる。でも、綺麗な心は壊れやすいからとっても大切にしなくてはね。


「私を心配してくれるのね。フィオナ。ありがとう。とても嬉しいわ。」


少し戸惑って目をキョロキョロさせるフィオナ。そんな様子も小動物を連想させるようで可愛らしい。

ああ、こんな可愛らしい生き物がいて良いのかしら?

触っても大丈夫かしら?

壊れないかしら?


でも、私はフィオナの可愛さに我慢できずそっと彼女の頬へと口付ける。壊れないように。そうっと。


「きゃっ!?」


フィオナはとても驚いたようで、可愛らしい声をあげて顔を真っ赤にしている。

まあ、なんて可愛らしいんでしょう。


「お、おい。変態教師。これは一体どういうことだ!?」


後ろでルヴィナスが声をあげている。

私達の邪魔だわ。ちょっと無粋ね。

周りの生徒達もこちらに釘付けになってみている。野暮な人達。


「んー。彼女達が混ぜていた薬品は好意の感情を伝えやすくするためのものだったんだけど……。」


「どういう事だ?」


「彼女は原液をかぶって香りに酔ってる。効果が強まってるんだろう。今の彼女は惚れ薬を飲んだみたいなもんかな。」


「なんだと!」


「本当は告白する時とかに用いられるものなんだよ。ここまでの効果が出るほどじゃない。」


「あ、あの……! シェリア。これ以上は……!」


フィオナが手で私の顔を押さえる。私はフィオナのおでこや頬、髪、首筋に口付けていた。だって、あまりに愛らしいんだもの。

ああ、でもこれ以上してしまうと可哀想ね。フィオナの顔が、甘く完熟したリンゴのように赤くなっているから。


「お前、フィオナから離れろ。」


ルヴィナスが私の手首を掴んで引っ張り、私の体を無理やりフィオナから引き離す。

もう少しフィオナに口付けていたかったけど仕方がない。

私はルヴィナスの方へくるりと体を向き直し、彼を見つめる。


「な、なんだ。」


ルヴィナスは私と目があうとビクッと肩を震わせ目線をそらす。

可愛い!

この子もなんて可愛いのかしら!

よく顔を見ると照れているのかほおが赤いのがわかる。目があうだけで頬を染めるなんて、まるでどこかの深窓の令嬢のようだ。


「ルヴィナス、貴方ってとっても愛らしい人なのね!」


「へっ!? あ、あいらしい?」


思わず彼に抱きつく。彼はピシッという音が聞こえてきそうな位に動きを止めて固まってしまった。


「ええ、とっても愛らしいわ。」


私は彼の頬にチュッと音を立てて口付ける。


「ひゃっ……!」


まるで女の子みたいな声を上げるルヴィナス。ああ、本当に本当に可愛らしい!


「やめ……」


頬に口付けていた唇を下に下ろしていき、首筋をくすぐるようにたどっていく。


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