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僕と俺の選択道  作者: カタナナタカ
第1章 それは、人生の序章の序章それでも悩み生きていく
29/30

第一話 夢と現在

一週間であげると言いつつ、完成したのは一週間飛んで5日。本当に申し訳ないです。次の話は絶対に3日後までにはあげてみせるので、どうかお許しを。

注:最初にあげたのから加筆しています。

雨が降っている。土砂降りの雨だ。それなのに俺の体は濡れる事はない。いや、そもそも一滴の雨粒すら当たってはいない。そして、気づく。ああ、またこれかと。この夢かと。


(またこれか。呪いとはいえ嫌になるな。何度も何度も自分の過去の過ちを見せられるのわ)

言葉は冷静だ。だが、本当は分かっている。いくら言葉だけを冷静に保っていても心は、気持ちは、怖くて怖くて仕方がないって。これから流れるであろう自分の記憶の軌跡。それを見る事がどれほど嫌なことか。それでも見せられる。見る事を強制させられる。この呪いのせいによって。



男が7人ほど雨の中を歩いている。談笑しているようだ。コートを着、フードをかぶり、この土砂降りの雨の中にもかかわらず下品な笑い声が聞こえてくる。その男達をつける人影が一人。いや、二人か。その尾行をしている人影より遠い方にだがもう一人いる。近い方にいる人影は小さい。子供ではなかろうか。男達の腰の辺りより少し大きいぐらいの身長しかない。遠い方の人影も大きいとはいえないがそれでも大人だろう。まあ、大きな子供という線も無きにしも非ずといったところだが。


尾行者は二人ともフードを被っているが小さい方のフードは少しぶかぶかのため時折顔と表情が垣間見える。顔の特徴はまず挙げるとするならば整っているという事だろうか。怒りを湛えているせいなのかキリッとつり上がった目、それでも普段からきつい目という事は分かる目にスッと通った鼻。充分整っていると言える顔だろう。他の特徴は髪。真っ黒な髪だ。少し赤みがかっているためか余計にドス黒く見える黒い髪。最後にこれまた目だが、その色が特徴的だ。瞳孔は髪と同じ色で虹彩は紅い。中心から外に行くほど白くなっていっている。端の方は白っぽい赤になっている。痛がっているそぶりが見えない事からとりあえず充血しているわけではないのだろう。


そんな少年が一層強い憤怒を顔に湛えたかと思うと突如男達の前へと躍り出る。何かを言い合っているのだろう。だがしかし俺には雨の音しか聞こえない。

ザアアーーーッという音に消されて話し合いは聞こえない。聞きたくもない。だが、俺には何を言っているのか分かる。いや、思い出してしまう。一言たりとも間違わずに話し合いを補完することができてしまう。なにせあの少年は俺なのだから。あの時の事を一つたりとも忘れる事などありはしないのだから。

そして、もうそろそろだろう。あの出来事が起きるのわ。何度も、何回も、やり直したいと思ったあれは。


話し合いが決裂し、俺は剣を抜く。いや違う。俺は元々始めからあいつらを殺すつもりだったのだ。話し合いなどあってないようなものだった。俺の最も大きな過ちは話し合いなどせずにとっととあいつらを殺さなかったところだ。

そんな事を考えていても場面は進んでいく。剣を抜いた俺に対し当然男達も剣を抜く。剣を抜かれたら剣を抜くこれは普通の事だ。では、剣で殺しに来られたら?

殺し合いになるだろう。

では、その途中で相手が圧倒的隙をみせたなら?

簡単な話だ。バカでも分かるような隙をバカに見せたならば、戦いの途中だというのに嗤いながらにやけながら殺しにくる。


そんな表情を時が限りなく遅くなった世界でじっくり見ている俺、と俺。過去の俺の表情は嗤っている。愉悦に浸っている。生死ノ境はわざと(・・・)発動させたのだ。なぜってその方が面白いからだ。勝利を確信したやつの顔を見ながらそいつを殺すのはあの時の俺にとって最高の殺し方であった。殺された後のマヌケな顔がとても面白かったのだ。だが、そんな怠慢と傲慢は因果がめぐるのだろうか、自分に返ってくる。当時の俺はまだその事を分かっていなかった。


当時の俺が剣をゆっくりと振りかぶる。そして振り下ろす。そんな自分に対して()は手を伸ばす。届かないとわかっていても何度も繰り返した事だと頭では分かっていながらもそれでも手を伸ばす。

やめろと。やめてくれと。心で叫びながら届く事のない手を伸ばす。

振り下ろされた直後、悲鳴をあげる。それは過去の自分の叫び声なのかそれとも僕の叫び声なのかそれは分からない。


確かな事は振り下ろされた凶刃が斬り裂いたのが母さんであったという事。血を流しこちらに倒れてくるところ。


そしてここで視界が明滅し始める。その中で聞こえるのは彼女の声。

「ダイジョウブダヨ。カナシミモクルシミモゼンブタベテアゲルカラ。ダカラソンナカオシナイデ」


「誰なんだ君は?一体君たちは誰なんだ?応えてくれ!」

最後に見える視界には複数人の人影がいる。その声を、その人を僕は、俺は、きっと又忘れてしまうのだろう。そして、そんな事を考えながら視界が完全に黒一色となる。


○○○○○


なだらかな丘に、広々とした草原。遠くの方には川と川を挟んで向こう側に大きな森がある。反対側の方向には、少し大きな街がある。そんな丘の上に一人の人間が寝ていた。少年なのか大人なのか判別のつきにくい顔。整っているためか幼さが残るその顔はふとした瞬間大人のようにも見える。身長は140センチ台か。全体を見ると少年と言えるだろう。実際彼は少年だった。バリバリの遊び盛りと言えるであろう9歳だ。中身までもがそれに当てはまるとは限らないが。そんな少年の瞼が動く。起きようとしているようだ。と同時にこの物語も動き出す。


○○○○○


眩しい。ここはどこだったっけ?

・・・・・ああ、そういえば草原で寝てしまっていたんでしたっけ。

目を開けると広がっているのは穏やかな風景。とても心が落ち着きます。チラリと横に視線をやると見える大猪の死体がいいアクセントになってこの風景の爽やかさを引き立てています。うん、気持ちのいい寝起きですね。


『どこがだよ。グローセ、お前の感性少し、いやかなりぶっ壊れてんなぁ』

と、そんな声が空中から聞こえてきます。チラッと視線を上にあげればそこには自分しか見ることのできない火の玉が浮いています。


「どこがおかしいんですか。まったく失礼なやつですね。オクトタわ。こんな素晴らしい景色にケチをつけるなんてそっちの方がどうかしてるんじゃないですか?」


火の玉なので顔は見えないが、雰囲気でしかめっ面を浮かべているんだとわかるものを醸し出しながらオクトタは付き合う必要もない会話を始めた。このまま辞めるのはなぜか納得いかなかったために。


『そうだなぁ。一部分だけを掃除するか綺麗にくり抜いたらさぞかしいい風景だってことは認めるよ』


「この素晴らしい風景を切り抜くだなんてそれは少し猟奇的過ぎませんか⁉︎」

結果は疲れる言葉を返されるに終わったが。心で、

(俺間違ったこと言ってねえよなぁ)

と思いつつ。余計疲れるのは嫌なので、話を変えるようにする。

『まあぁ、そんなことよりだぁ。もうそろそろ家に戻ったほうがいいんじゃねえかぁ。街に行く時間が無くなっちまうぞ』


「ああ!そうでした。早くしないと。おじさんとおばさんに、この猪を届けなければ僕の今日の晩御飯が無くなってしまいます。という事で家まで急ぎましょう!」

と、言って。自分と同程度の大きさを持つ猪を担ぎ丘を下ります。早くしないと迷惑をかけてしまうので少し急ぎ気味に。


そのグローセだが、まったく重さを気にしている様子はない。少なくとも80キロは余裕で超えるであろう大きさなのにだ。それがさも当然とでも言うようにオクトタもその後に続く。

グローセが猪を担いで辿り着いたのは、小さな掘建小屋のような家だ。ボロボロという以外の要素は横に石を組み合わせて作った墓標のようなものがあるというだけの家だ。その墓標の前でグローセは土に汚れるのも気にせず膝をつき言葉をかける。


「母さん。今帰りました。今日も僕は元気にいつも通りの生活を送り始めています。ここを出るその時までどうか見守っていてください。綺麗な部分も汚い部分も」

そう言ってから、暫く墓標を見つめ続ける。心の中で一区切りついたのか十数秒後、立ち上がり膝についた土を払いながら心の中で

(それじゃあ行ってきます)

と、呟き家へと入る。


家は予想通りというか、外観通りというか、とてつもなく汚い。ところどころカビているし、木造ゆえに腐っている場所もある。正直、住みたいか住みたくないかといえば住みたくない。部屋はカビのせいなのかはたまた他に何か要因があるのか分からないがジメジとしている。そして、臭い。


だが、住めば都なのか、それとも人間の適応力が凄いのかグローセはまったく気にした様子がない。


「相変わらず臭いしジメジメして鬱陶しいですねこの家。本当母さんの墓がなかったら一瞬で粉微塵にしてますよ」

そんな事なかったようだ。すごく気にしている。さすがに粉微塵はやり過ぎかとも思える過激発言だが。


『そんなとこに服や食べ物を置いてるお前の気もしれねえよ』

そんなグローセに鋭いツッコミ?がオクトタからはいる。

これには答えにくいようで。少ししどろもどろになりながら、言い訳がましい言葉を返す。

「し、仕方ないでしょう?ここは、か、母さんと住んでた家を僕が精一杯再現したんです。やはりできる限り生活したいじゃないですか。さ、流石に就寝は遠慮したいですけど・・・」

若干の照れとマザコン臭を漂わせながら。

「やっぱり母さんを感じないと生活できないんですよね。寝るのは目を瞑るだけでいいので別にいいんですけど。それでもやっぱり何か物足りない感覚にはなりますね。やっぱり母さんの匂ーーーー」


そんな話をオクトタは右から左へと聞き流していく。どうせまた長くなるのだろうな、という諦観の念を漂わせながら。



一通り満足したらしい、グローセはようやく話を終える。

(ようやく終わったぁ。今回も長すぎだろうがぁ。よくあんだけ話して飽きないよなぁ。意味がわからん。まあぁ、本人もわかってねえのかぁ?半分意識飛んでたよなあれ。興奮しすぎだろ)

解放された喜びからかこちらもまた興奮しているようだ。

それはさておき、ようやく出かける準備をし出したグローセの行動は早かった。血のついた服を着替え街に出かけるのでお金を入れた袋を今度は小物を入れるための大きめの袋に入れる。これで準備完了だ。要した時間はさっきの話の約10分の1だ。これは準備に時間をかけなさすぎなのか話が長すぎなのか分かったものではない。まあ、きっと後者であろうが。


そんなこんなでようやくグローセは家を出る。街に行くまでに結局昼になってしまっていた。太陽が真上で爛々と輝いている。そんな中で、まっさらな(・・・・・)土地の上でポツンと一つだけ建った家と墓が寂しげに佇んでいた。


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