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僕と俺の選択道  作者: カタナナタカ
第1章 それは、人生の序章の序章それでも悩み生きていく
27/30

救出と思いの丈と混乱

間違えて投稿してしまいました。

加筆していますので宜しくお願いします。

弓使いのゴブリン二体は困惑する。

獲物だったはずが自分たちを脅かす存在に変わったあの人間をようやく殺せると思っていた矢先に突然別の人間が割り込んできたためだ。しかもその人間の登場によってその人間に死を与えるはずであったゴブリンは吹き飛ばされ、死をなかった事にされた。だが、困惑は次の瞬間には消した。思えばそんな事は関係無いためだ。剣使いのゴブリンは吹き飛ばされたとはいえ、まだ生きてはいる。狙っていた人間は既に瀕死の状態だ。つまり絶対的数の優位は変わらないわけだ。ならば迷う必要など無い。それに相手は同胞を殺したのだ逃すわけにはいかない。

その思いで弓を引く。

そして、死を与えるために弓を射かける。


それは、見事に命中する。だがそれは思惑通りとは言えなかった。

なぜならば何か行動を起こすと警戒していた乱入者は何の行動も起こさずにあの人間を抱きしめたまま矢に射られたからだ。


これにはさすがに拍子抜けする。何だこの程度かと。警戒しすぎた自分達が愚かだったと。そうゴブリンたちは考える。

そして、優位にある時の愚かな者のする行動は人間もゴブリンも変わらないようで、何もできないと思ったゴブリンたちはジワジワと敵を嬲るような行動を取り始める。それは、わざと外して近くの地面を射ったり、足や、腕などの致命傷にならないであろう場所を狙ったりなどだ。


ゴブリン達の嗜虐心は満たされていく。

そして、満たされれば満たされれるほど本来の目的を果たす道からは遠ざかって行っている事を気づかない。いや、気づけない。


奇跡、というものは得てして唐突に起きるものだ。望んで起きる事などほとんど無いだろう。そして望んで起きるならば、それはその者がどれほどに身を粉にしたか最後まで決意を通し抜いたかで決まるのでは無いだろうか。

そして、ここにも一つ奇跡が起きた。


それは、聞き取る事のできないほど小さな言葉。弓に射られても、恐怖を煽られようとも決して紡ぐ事をやめなかった言葉。何度も何度も同じ呪文を繰り返してそれでも諦めずに続けた言葉。


それが今現実に干渉する。


それは、今までと違った。何の意味も無い言葉達とは違った。そう気づけた事だろう。言葉にマナが含まれている。そして、精神が、心が発動できていることを想像できているのだろう。顔つきが違った。


一言一言づつ、言葉が紡がれる。その度に目からは涙が流れ出ていく。いや、涙では無い血だ。血が流れていく。それは、限界を超えた証。つまり、限界を超えられた証でもある。


その者の決意の顔はどこか懐かしむような表情を垣間見せる。言葉を紡ぎながら過去を思い出しているようだ。


(リア、貴女に救ってもらったこの魔法で、今度は私が貴女の子を救ってみせるわ。だからどうか力を貸して・・・ウウン、やっぱりダメ。見守ってくれているだけでいいわ。この子は私だけで救ってみせる。これからの私のために。それでも怖いから、見守ることだけはお願いしてもいいかしら?とゆうより、貴女のことだからきっとこんなこと言わずとも見守ってくれているんでしょうね)


言葉が紡ぎ終わる。そして、同時に世界の摂理に従って現象の操作が終わる。化現するは火の壁。轟々と燃え盛る火の壁。大気を焦がし、陽炎を生み出すその壁が三方向に出現する。


この魔法の名は第4位階魔法ファイヤーウォール。自分を基点に一方向に火の壁を出現させる魔法である。その火の強さは陽炎が出来ていることで分かることだろう。かなり強い。当然、ただの弓矢など通すはずもなく、慌てたゴブリンの攻撃は全て無駄に終わる。この魔法、第4位階だけあって第2位階の魔法までしか適性の無いはずのシェーリには発動することもできないはずなのだが、それを3枚も化現させている。それゆえにーーーー奇跡と呼ばれるものなのである。


(逃げるなら今しか無いわ)

シェーリは逃げ出す。この窮地から。シェーリはちゃんと分かっていた。いくらファイヤーウォールを出せたのだとしても状況は好転などしていないことを。むしろ時間が経つたびに不利になっていっていることを。ゆえに取る手段はただ一つ逃げ、なのだ。


シェーリが向かう方向は限られている。火の壁を出現させていない正面だ。ここで橋を目指しても恐らくゴブリン達に追いつかれるか、その前に矢で射られて終わりだろう。それならば川を渡る方が危険が少ないとの判断だ。


矢に射られた痛みに歯をくいしばりながら目の前の川を目指してひた走る。

後少しというところで火の壁が消える。だが弓使いのゴブリン達は火の壁を回り込もうとしたのかまだまだ距離がある。悔しさから弓を射るが距離があり走りながらのため全く当たらない。それにますます悔しそうな顔になる。先程までのあのゲスた顔が嘘のようだ。

だが、剣持ちのゴブリンはかなり距離を詰めてきていた。ファイヤーボールで飛ばされた方向から戻ってきたため直ぐにシェーリ達の進行方向に向かっていたためだ。このゴブリンは主人公の時もそうだが、飛ばされて最も嫌なタイミングで来るようだ。


それでも、今回は一歩及ばなかったようだ。後ほんの少しで追いつくところであったが、シェーリの目の前は川である。走って追いつかれそうなら飛び込めばいいのだ。


盛大な水しぶきが上がる。小さいとはいえ、大人の女性の腰ぐらいには、水深がある。ならば後はゴブリン達から離れるまで運に身を任せて流されればいい。


そんなシェーリが最後に聞いたのは水しぶきが上がる音と、悔しそうな怒気を孕んだようなそして不甲斐ない気持ちをのせたようなそんな陰の気持ちを多分に含んだ声だった。

『グギィギャーギィー!』

十数分後、飛び込んだ地点からかなり離れた場所で、川から手が飛び出る。その手が地面をつかみ力を込めると子供を抱えた女が現れた。もちろんシェーリである。


「し、死んじゃうかと思ったーー」

そんな、さっきの修羅場を見ていた人が聞いたらそれで良いのかと思うような第一声を上げ、シェーリは地面に身を投げ出す。


と、突然身を起き上がらせたと思えば

「そ、そういえば大丈夫なのか診ないと。いくら状況が状況とはいえ、あんなに怪我していたのに川に入っちゃったもの。こ、これで死んだとかだったら私も死なないといけなくなっちゃう」

と、きっとまだ混乱しているのだろう。と察しがつくような発言を言いながら主人公の容態を診始める。というより、この発言絶対に救うみたいなことを決意した人間が言ってはいけない発言であろう。


まあ、そんなことは置いといてシェーリが容態を診るかぎり危険な状態であるが命の危機までには至らないという結論が出た。体に刺さったままのたくさんの矢や、どう見てもその場しのぎの手当てである怪我した場所から血が流れているため急いで応急手当をしなくてはならないが。もちろんこんな適当なものじゃなくちゃんとした応急手当を、だが。


服を破り、その布で手当をしている途中、瞼がふるふると動いたかと思えば主人公が目を覚ます。

目を覚ましたことに嬉しくなってシェーリは笑顔になるが、それに反比例するかのように、顔が険しくなっていく。


「よかった。目を覚ましたのね。大丈夫よ。ただ今は動か」

その発言にかぶせるように言葉が放たれる。

「な、んのつもりだよ。あんた、そんな体の状態で何他人の体から手当てしてんだ。まず、自分の体を治せよ。どうして、そんな体でそんな体になってんのに他人の怪我を笑顔で手当てしてんだよ。おかしいだろあんたはまず自分の体から、なんで自分の体から・・・」

最初は気丈に怒気を孕んだ声であったが後半は涙声だった。実際、目には涙が滲んでいた。


ただ、命の危機の直後であったからであろうか、それともとうとう我慢の限界だったのかそれはよく分からないが。今まではここで言われるだけ成されるがまま状態だったシェーリは、今回は違い、自らから離れようとする主人公を抱きしめて、声を荒げた。


「他人、って何なのよ⁉︎私は確かにあなたの母親じゃない。ええ、他人なのでしょう!でも、それでも、私があなたの母親でありたい!母親になりたいというのはダメなの⁉︎あなたがいくら私のことを他人と思っていようとも私が、私は家族と思うことはあなたにだって否定させたりしない。ううん、絶対に否定なんかさせないわ‼︎」


シェーリは深呼吸をする。言った。言ってしまった。と思いながら、この子はどう思っただろうと考えながらまた、言葉を紡ぐ。


「ねえ、あなたが私を嫌うのは構わないわ。でも、だからって私の気持ちまで行動まで否定しようとしないで。あなたにどれほど嫌われようともそれで私の親愛が変わるわけではないのだから」

言い切った。そう思い次の反応をドキドキしながら待つ。そうして暫く経った後帰ってきた反応は・・・


「ウアアアアアアァァァン!!」

大泣きであった。

これはさすがに予想できなかったようでシェーリもどうしたら良いのかアタフタとする。

そうしていると泣きながらその中に言葉が混じっていることに気がつく。


「ウアアァァ俺だって、俺だってェェェッ、家族だって思いたいよォォ。でもォ、あなたは俺の本当の母親じゃないじゃないかァァァ!あなただってよそよそしく接していたじゃないかァァァ。だから、だから、俺はァ!ウアアァァァン!」

ほとんど騒音だ。何を言っているかとても分かりにくい。それでもシェーリは聞き取った。自分が母親でいていいと、いて欲しいと思っている想いを。涙が溢れる。ビショビショで、もう、顔がどれほど涙で濡れてしまったのかは分からないが、それでもきっと沢山涙が出ているのだろう。そう思えるほどにこの気持ちが想いが嬉しかった。


「そう、そうね。そうだったよね。私が悪かったのね。もっとちゃんと接していればよかったのよね」

そう言いながら強く抱きしめていく。抱きしめていく。深く強く。


そうすると、だんだんと泣き声が小さくなっていく。

シェーリは泣き疲れたのかしらと思ったが、ここで一つ失念していたことを思い出す。それは、命の危機がなかったとはいえ大怪我であることに変わりはないこと。言ってしまえば重症である。しかも、傷を手当をしたとはいえそれは応急には変わりないこと。ただでさえ大量の血が流れ出ていたのにここで追い打ちである。

つまるところ、主人公の泣き声が小さくなっていっているのは泣き疲れなんかではなく、ただ単純に気絶しそうになっていだけなのである。


そんな主人公が気絶する前に感じたのものは、

「キャァァァッ、ダメ、ダメよこんなとこで寝ちゃ!し、死んじゃうわ。は、早く何とかしないと」

という声と、

(どうしようもない人だな)

と思いながらも凄く温かい気持ちでいる自分の心であった。




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