予感と太陽と予兆
『今日も森に行くのかぁ?』
と、悪神が朝突然そんなことを聞いてきた。
(いきなりどうしたんだよ?今日も行くのかって、そんな当たり前のこと、雨が降っている日以外はいつも行ってたんだから今日も行くに決まってるだろ。
それとも雨降るのか?俺には雲ひとつない快晴に見えるんだが)
『そうかぁ?俺にはでっかい化け物が甘い蜜に誘われた獲物を食べようと待ち構えてるように思えるけどなぁ』
(お前っていつから詩人になったんだ?
それともまた俺をおちょくってんのか?
まあ、いいけどな。とりあえず今日も変わらず森に行くからな)
『ああぁ、分かったぁ。今日も森に行くんだなぁ。
今すぐ行くのかぁ?』
(本当にどうしたんだお前?いつも朝飯食べてからだろ行くのわ。何かあったのか?)
『いやぁ、何にもねえよ。すまねえなぁ。ちょっとばかしボケてたみたいだぁ。気をつけるよ』
(やっぱり森に行くのやめとこうかな。お前が素直に謝るなんて、雨とか槍とか降ってきそうだ)
『調子乗んのもいい加減にしとけよ。そろそろぶっ飛ばすからなぁ』
〔そうそう、その調子だよ。ようやくいつも通りの1日がはじめられだな〕
と言いながら俺は朝食を食べる場所に向かっていた。
そして今日も無言の食事が始まるかと思いきや、あの人が話しかけてきた。
「今日も森に行くの?もう、辞めたらどうなの?」
と、俺にいつものように遮られることがないようにか、早口で喋ってきた。
(今日はどうしたんだ?さっきから会うやつみんな(二人しかいない)に森に行くのかって聞かれるとか今日は森に行ったらダメな日なのか?訳わかんねえな。まあ、この人に関しては同じようなことはいつも言ってるから気にしなくていいか)
「あんたには関係ないだろ。そのことについては何回も言ったしな」
と言って俺は食べかけの朝食を残して席を立った。
(あれ?席は立つつもりなかったのにな。なんで立っちまったんだろ?まあいいか、お腹そこまで減ってないしこのまま森に行くか)
そんなことを思いながら俺は家を出て行った。
森に入る直前
『今日もあいつ、帰ってきたら森の前にいると思うかぁ?』
いきなり悪神が問いかけてきた。
「知らねえよ。まあ、でも流石に今日はいねえんじゃねえのか?ここ最近確かに森の前で俺のこと待ってたけどさ、あんなに強く言ったんだ。流石にいねえだろ」
『(まるでいてほしいみたいな言い方だなぁ)
なあぁ、あれでよかったのかぁ?』
「何がだよ?」
『分かってんだろ?お前がイライラしてんのも、なんでそういう風に感じてんのかもなんでそんな風に思うのかも。
お前はお前自身を誤魔化してるだけだろ。そんなんじゃあお前ーー』
「うるさいぞ!
悪神本当にどうしたんだお前?お前は俺に力を与えはするが俺のこと自身に関しては不干渉だと言ってたじゃないか。そのお前が俺にそんなことを言うのか?
もう一度言うぞ。どうしたんだお前?」
『・・・悪かったぁ。確かに俺はおかしかったぁ。
頭冷やすためにしばらくおとなしくしとくよ』
「そうか分かった。そういうことならもういい。これから戦うんだ。気持ちを切り替えるためにもそういう話はもう無しにしてくれ」
『(気づけよ。そういう言葉が出ちまってる時点で気持ちを切り替えるのなんて無理だってことによ)』
そんなことを悪神が思ってると知りもしない俺はなかなか切り替えることのできない気持ちを落ち着かせるために上を向いた。
そこには、雲一つないおかげで爛々と太陽が輝いていていた。
なのに一瞬、気持ちを暗くさせるような不気味な色を宿した太陽とその周りの光が化物が口を開いているように見えて、悪神が言ったような悪い予感を俺に抱かせた。