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プロローグ

子どもの頃から異世界へ召還される事に憧れていた。


誰もが憧れ考えると思う事で、自分も例外ではなく、もし実際に召還されたらどうなるのだろうと妄想を爆発させたのは、一度や二度ではない。何千回、何万回と夜寝る前などに同じようなことを考えては、興奮して眠れなくなるなんてことは日常茶飯事だった。

 異世界に召還されたら、魔法が使えるようになり、魔法使い同士の戦いに巻き込まれて死闘を演じられるのではとか、戦士となってダンジョンに潜って、魔物と戦ったりするじゃないかとか考え、傘を剣に見立てて、振りながらどんな技名が格好いいかなんてバカみたいに真剣に悩んだりした。

 また、異世界に行けばモテるのではと根拠のない自信から思いこんだりして、異世界に行けばモテモテになりハーレム状態になったらどうしようかとか、一夫多妻制の世界ならハーレムエンドも夢じゃない、など自分本位な都合の良い妄想をしては楽しんでいた。

 

 そんな願いが届いたのか分からないが、俺は異世界に召還された。


ずっと願っていた事だから本当に異世界に召還されたときはとても嬉しかった。

毎日神様に願っていてよかったと素直に神様に感謝した。


しかし、異世界で最初に聞いた言葉は、「選ばれし勇者」や「世界最強の冒険者」など嬉しさで心躍る単語ではなく


「私の友達になってよ」


という悪い意味で心躍った言葉だった。

とりあえず神への感謝を取り下げた。

確かに異世界にて日常的な物語も楽しそうだと思ったこともある。

だがどうせなら友達など日常的な願いではなく、ファンタジーで無理難題な願いを聞いた方がロマンがあると思う派である。

まるでロリ物だと言われて喜んで見たら熟女物だったみたいな辛さだ。幼女派なのだ。

せっかく召還されたのに文句言うなと言われるかもしれないが、とりあえず文句を言うのが人間なので見逃して欲しい。

しかし、友達がほしいからなんてあまりにも微妙な願いではないか。

わざわざ異世界から友達欲しさに召還するなんて意味が分からない。

いやもしかしたら何かすごく深いわけがあるのかもしれない。きっとそうだと思いたい。


まあそれでもやはり異世界に召還されたのだから嬉しくないはずがない。

今までの生活と縁を切れる上に、もしかしたらやり方次第で面白い物語をこの身で堪能出来るかもしれない。

この世界がどんなところかまだ分からないが、元いた世界より面白いことを願うことは出来る。

さてでは、どうせならよくある物語の最初の常套句で始めよう。

その物語の主人公に感情移入しやすいように言われる、非日常に憧れる主人公に最初に捧げられてきた言葉で。


この物語はどこにでもいるただの普通の平凡な人間の話しである。ただ一点を除いては…

 


ーーーーーーー



目を覚ました瞬間にまず思ったことは、目の前で炎が煌めいている。

まるで生き物のような炎。

しかし、すぐに見間違いだと気づく。

目の前に在るのは、ただの人間の髪だったのだ。


目の前の人間が気味の悪い仮面を被っていて動揺していたせいもあるかもしれない。

しかし、普通なら見分けられるもので、そもそも間違うはずがない異なる2つだ。

だがらそれは常識的な範疇に収まらないほど綺麗な赤色で、それがゆらゆら揺らめいていたせいで見間違ってしまったのだ。

その赤い髪の人間が気味の悪い仮面を被っていたためさらに神秘さをましていた。

そんなことを考えていると、その仮面人間がくぐもった言葉を発した。


「異世界にようこそ、私が召還したのだから私の友達になってよ」


は?なんだいきなり。というよりここが異世界だと。

夢でも見てるのか?それともドッキリか?

後誰だこいつは。友達になってよとか言ってたか?

混乱してるせいか思考回路がめちゃくちゃだ。

動揺してるのと目の前の赤髪が綺麗でそればかり目で追ってしまう。


「ねぇ、聞いてるの?さっきから馬鹿みたいな顔して」


最初に言われた願い事と炎のような色の髪に見蕩れていた事によって放心状態の俺に対して、最初の言葉や状況について説明するでもなく、二言目にしてひどいことを言われた。


しかし、いきなりひどい事言われたおかげで少しだけ落ち着いてきた。

どういう訳か俺は今憧れてきた異世界にいるらしい。

まだ完全には信じていないが、目を覚ます前にいきなり床に魔法陣らしきものが出たのを思い出した。

後異世界だと思ったのは下に張られた魔法陣らしき物と目の前に仮面を被った神秘的な髪が長いから女の子だと思われる人がいるからだ。


とりあえず、状況を整理しよう。

今すぐ分かることは、部屋みたいな所に召還されたのと目の前には髪が赤い女の子が立っているのが確認できる。

そして、その女の子はさっきから何か言ってる。異世界のはずなのになぜか言葉が理解出来る。


しかし、普通召還したのならまずそれ相応の説明をするのが筋じゃないのか、それをいきなり罵倒から入るだなんて、ツンデレの要素しかないな、なんて落ち着いてきてこの状況に慣れてきたせいか、興奮しているせいか場違いなことを考えていると。

早くも2回目の罵倒がきた。


「何無視してるの?不要ならその耳もぐわよ」

「やめてください!!」


罵倒と言うより脅迫に近く、思わず反射で第一声を発してしまった。

やってしまった。せっかく憧れだった異世界なのに、これまで召還されたときに何言うか長年考えてたのに、アホみたいな第一声を発してしまった。


まあこの際仕方ない、そこそこ状況も読めてきたから、どうせだし状況の整理より先に仕切り直して、召還された場合に考えきた口上を述べておこう。


こういうのは最初が肝心って言うもんな。妄想で何度も夢見たシチュエーションなんだし楽しもう。

なんて興奮しすぎてるせいかもう大分受け入れ始めつつある自分を鼓舞してみる。


とりあえず片膝立ちになりつつ、頭を下げながら。それっぽいポーズを取りつつ考えてきた召還された時用の台詞を述べてみる。


「えー、あなた様が私を召還した方で間違いないでしょうか」

「はっ、今更仕切り直そうとしてるよ。このクズ」


いきなり心折れるな俺、頑張れ俺。


「あなた様が私を召還した方で間違いないでしょうか」

「あー、はいはいそうそう見れば分かるでしょ。頭大丈夫?」


見ただけでは分からないと思うが、めんどくさくなりそうだから反論しないでおこう。

それにしてもこいつ自分で召還しといて偉そうだな、おい。本当にこいつが召還したのか?

後毎回罵倒してくるがいちいち罵倒しなければ会話出来ない呪いでも受けてるのかね。

まあいいやそれより先に進めよう。


「では、召還した理由についてお聞かせ願いましょうか」

「いや、さっき言ったじゃん。それくらい覚えといてよ。」


分かってるよ!いいじゃん、ちょっとぐらい乗ってくれても、せっかく長年考えてきたんだから。

後二度目だと願い事変えてくれないかなーとか思ったんだよ。

罵倒については、もう諦めよう。たいしてダメージあること言ってこないし。


「すみませんが、もう一度召還した理由についてお聞かせ願えませんでしょうか」

「ちっ、ちゃんと聞いとけよ。はーあ、仕方ないな」


まじか、舌打ちしたよこの女。

それにしてもいちいちイラっとする言い方するな、まあいいけどよ。

渋々とはいえ一応承諾してくれたしな。


そして彼女はため息を吐きつつ、仮面の上からでも苦々しい顔をしているのが分かる声で


「私の友達になってよ」


すごい嫌そうに言われたが、二度聞いても可哀想になる願いだな。そりゃあ言いたくないよな。

しかしさっきまでの台詞を聞く限りこんな事をわざわざ願ってくるようなやつには思えないが。

どっちかというとお前今日から奴隷ねとかの台詞のほうがよっぽど似合う。

てかこっちの世界だと罵倒するのが友達になる条件なのかと考えてしまう。


それにしても友達かー、嫌になる響きだな。

元の世界に友達いなかった俺には酷な願いだ。

完全に人選ミスだろこれ。どこに文句言えばいいんだ?

異世界召還管理委員会とかか?あるのか知らないけど。

とりあえず友達の定義が分からないから教えてくれないかなー。


おっと、そんなことよりさっさと返事をしないと、また罵倒が飛んでくる。

罵倒は良いとして、彼女さっきちらっと見たとき辞書みたいなの掴んでたし。

これで殴った方が言うこと聞かせやすそうだと思ってるぞあれは、怖い怖い。

不安になったのでとりあえず友達の定義を聞いておく事にした。


「えーっと、その友達というのはどういう関係の事をいうのかお聞かせ願えませんでしょうか。」

「いちいち人に聞くしか能がないなんて、自分では何も出来ない落ちこぼれね」


…さすがにちょっと傷ついた。大丈夫まだかすり傷だから大丈夫。

そして彼女は溜息を吐きながら答えてくれた。


「たしか、友達っていう関係は、なんでも言うことを聞いてくれて、ピンチの時には駆けつけてくれて、契約も出来るし、色々面倒ごとでも引き受けてくれ、自分に尽くしてくれて、なおかつ自分の事は自分で出来る。奴れ…便利な存在だと聞いたわ」


お前も人に聞いてるじゃないか。というツッコミは良いとして、その友達認識は絶対違うと思うぞ。

それともこの世界だとそうなのか、便利とか言っちゃてるし、てか契約ってなんだよ。


あーもうこっちの世界の常識とか分かんないけど、こいつ常識人には見えないからな簡単に承諾したくないな。

でも今まで友達いなかったのかなと思うと自分と似た境遇だと思うとちょっと同情してしまった。

それにここで断ったら何されるか分からないしな。全く知らない世界に放り出されたくないし。

だから俺は…


「勘弁してください」


断ることにした。さすがに断るのは可哀想と思ったし、自分の身の心配もしなければならないが、ここは断っておかなければやばいと本能が言っている。

だって怖いじゃんこいつ、わりと嫌なやつだし、そりゃあ友達いなくても仕方ないと思ったもん。なんか気持ち悪い仮面も被ってるし。


別に長年の夢が潰えたから仕返しにとかじゃ断じてないぞ。

しかしせっかく長年考えてきた台詞がなー、まさか友達欲しさに召還されると思ってなかったから、それに対する答えは全然考えてなかったよ。

せっかく格好いい願いの引き受け方とか考えてたのに、普通に断っちゃたし徒労に終わってな…。


さてこれからどうするかなー、まあまずは物語の定石通り異世界がどんなところか知ることから始めるとするか。

彼女から多少なりとも話しでも聞こうかなーなんて呑気に構えていたのがいけなかった。


さっきまで見ず知らずの俺に平気で暴言を吐いていた人間だ。断ったら何されるか分からないなんて簡単に予想がつくはずだ。

たぶん夢が叶って浮かれていたのだ。

それで冷静な判断が出来なかった。


そして、彼女がどんな様子か見ようと思った瞬間、頭の上に何かが降ってきて避けることが出来ず、あっさりと俺は意識を失った。


意識を失うなか朦朧とした頭で、俺は前の世界の事を考えるでも、この世界の事を考えるでもなく、自分の命の心配をするしか出来なかった。







読んでいただきありがとうございます。

初めて小説を投稿しました。

割と壮大なやつを書きたいと思っています。

主人公の名前とかは次の話しで出ます。


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