プロローグは突然に。
「えー、今夜のゲストは今人気急上昇中のアイドル、桜雪アリスさんですー!」
「こんばんは、桜雪アリスですっ!」
「はい、こんばんはー。アリスさんは今回新しくソロユニットとして活動することになったんですよね?心境はいかがですか?」
「初めてお話をいただいたときは驚きました。アイドルでバンドを組んでそこのボーカルで歌うなんてなかなかないと思いますので成長できたらなあと」
「確かに最近のアイドルにはない形ですよねー。マーメイド♡ジュエルという名前はアリスさんがつけたとお聞きしましたが?」
「はい。人魚の宝石という意味です。宝石のようにこのソロユニットが輝いた存在でいてほしいという願いを込めました。」
「そうなんですね!これから新しく始まるマーメイド♡ジュエルから目が離せませんね!それではそんなマーメイド♡ジュエルから夏を感じさせるデビュー曲を披露していただきましょう。アリスさん、スタンバイお願いします」
「はい。」
にこりと司会者に微笑むと、アリスはステージへ向かった。
夏らしいセットの真ん中に真っ白なマイクスタンドがある。その前に立ち静かに深呼吸し、バンドメンバーに合図を送った。
「スタンバイできたようですね。それではお聞きください。マーメイド♡ジュエルで、サマー愛ランド!」
ピッ
少女はテレビを消し事務所のソファに倒れこんだ。今、人気急上昇中のアイドル。自分がまさかそうなるなんて誰が予想しただろうか。
「しーちゃーん!あーつーいー!」
「その呼び方やめてって言ってるでしょう?アリス。あなたはアイドル、私はマネージャーなんだから」
「だーって。静雅って呼び方ヤだし。しーちゃんでいい」
「あのねぇ…」
「また手を焼いているのかい?静雅くん」
「社長!すみません…聞こえてましたか…。」
「いやいや、いいんだよ。彼女も年頃だし、親しみを持ちたいのさ」
社長はそういうとあははと笑った。
「社長、そーいえば、どうして私をバンドに入れたんですかー?」
「アイドルとして新しい風をと思ってね。現にアイドル業界ではバンド、とアイドルは別物だと言われている。だからこそ、アリスくんには成長していってほしい。」
「社長の仰る通りですわ。アリス、アイドルとして革命を起こしなさい。」
「えーやだ。そんなの…できるわけない」
「アイドルとして人気をさらにあげるためにもこのプロジェクトを成功させましょ!さあ、忙しくなるわよー!」
静雅ははりきった様子で、社長は微笑して頷くとそれぞれ事務所を出て行った。
アリスは再びソファに突っ伏し、寝転んだ。
「はぁ…なんか、おもしろいことないかなあ…」