第9話 遭遇
「終業式とかめんどくね?」
「でも明日から休みじゃん~。どっかいこ?」
「カラオケだろ、絶対!!」
ざわついた空気の中、生徒約六百人は集会のために作られた特別な大講堂の中へと入っていった。
「…であるからして高校生として節度を持って長い休みを過ごしてほしいわけです。…」
理事長らしき人物が一段高くなった台に上り話を始めると、急に二人の制服を着た生徒と、スーツを着た男が立ち上がった。
「ん?どうしたんだね君たち。」
突然の行動に驚きを隠せない理事長に対し生徒二人は入り口のドアに近寄り鍵を閉めた。
スーツを着た男性は理事長に近づきにやりと笑った。
ドン
鈍い音とともに理事長は吹っ飛び壁にたたきつけられた。
「お前の血は要らない。」
そう呟くと懐から拳銃を取り出し天井に向け引き金を引いた。
―タアアアアアアアン―
一連の動作はほんの一瞬に起こった事で、ほとんどの生徒たちは何が起こったのかわからずただ見つめているだけだった。
「いいか!今からお前たちの血をもらう!一歩でも動けば、お前たちを容赦なく殺す。」
スーツを着た男はマイクを使い叫んだ。
「竹下先生!!一体どういうことですか!!」
ジャージ姿の男性が立ち上がりスーツ姿の男性に叫ぶと
―タアアアアアアアン―
乾いた銃声が響きジャージを着た男性はそのまま後ろに倒れこんだ。
「動いたやつは殺す。いいな。」
その場に居た生徒や先生たちは竹下と呼ばれた男の雰囲気に呑まれ短い悲鳴を上げる生徒は多かったが誰一人その場を動かなかった。
「悠馬、杏里準備はいいか?」
竹下は唯一の出口であるドア付近に居る二人の生徒に声を掛けた。
「いいよ~。」
「うん。」
返事をするとともに二人の手首から先はメナスのものへと変化した。
「邪魔したり逃げたりすると~死んじゃうから~。っていっても今からみんな死んじゃうんだけどね。」
杏里と呼ばれた女子生徒は会場を見回しながら笑顔でそう言った。
「早速はじめよう。」
竹下は二人に合図すると一番前に座っていた女子生徒に近づき銃を構えながら言った。
「立て。」
そう命令された女子生徒は恐怖の色を浮かべ立ち上がった。
「制服のブレザーを脱げ」
竹下はその生徒に銃を向け命令した。
生徒は眼に涙を浮かべながら指示に従った。
「まずは、一人目だ。」
そう言うと銃を捨て手首から先をメナスのものに変化させ爪を振りかぶった。
ガタッ
という音とともに一人の男子生徒が立ち上がった。
「待てよ。一人目は俺でもいいんじゃねぇか?」
立ち上がった男子生徒は竹下のもとへと歩き出した。
「君は、確か黒坂君だったね?僕は動いたら殺すと言ったんだが。」
振り上げた爪を降ろし黒坂に向けていった。
「じゃあ、殺してみてくださいよ竹下先生。」
「ああ。いいだろう。」
そう言うと竹下は爪を振り上げた。
それと同時に黒坂はホルスターから銃を抜き竹下に銃身で打撃を加えた。
ドン
という鈍い音とともに竹下は吹っ飛んだ。
恐怖によりその場に座り込んでいる女子生徒に自分のブレザーを渡すと黒坂は大声で叫んだ。
「俺は、お前たちを殲滅する!!」