第5話 殲滅(1)
「ここか…。」
黒坂は指定されたホストクラブに着くと、影になっている部分に身を隠した。
「どうします?」
まだ傷一つない刀を目立たせないように持つ中島が不安そうな声で聞いた。
「指定されたメナスの写真はある。閉店して、人間連れてきたら人に見られない場所に向かうはずだ。そこを狙う。」
的確に指示をする黒坂に中島は
「はい。分かりました。」
と強張った顔で頷いた。
マスターに渡された写真を確認すると黒いスーツに金髪、いかにもホスト風の若い男性が写っていた。
しばらくすると
「ねぇどこ行くの~?」
ドレスに身を包んだ女性が写真に写っていた男性と腕を組み店から出てきた。
「来たな。」
「はい。」
黒坂と中島の二人は男にばれないように尾行を始めた。
やがて人通りの少ない暗い小道に出ると
キャアアアアアアアアアアアアアア!!
女性の悲鳴が辺りに響き渡り、写真の男性の手首から先は漆黒に輝き爪は鋭くとがっていた。
「黒坂さん!早くしないと!!」
「まだだ。」
「黒坂さん!!」
中島は刀を手に持ち黒坂を催促するが、黒坂は動かない。
「俺は行きます!!」
そう叫ぶと中島は男の前に飛び出していった。
「あの馬鹿野郎!!」
黒坂はホルスターから銃を抜きセーフティーをはずした。
「や…や…やめろ!!ハンターだ!!」
中島は女性に爪を振り上げた男に叫び刀を抜いた。
「ハンター…だと?」
ゆらりと男は振り返り刀を構える中島を見た。
「ラッキー。楽しめそうじゃん!!」
そう言うと男は爪を中島に向け飛び掛ってきた。
キィイイイイイイン!!
男の爪による斬撃を中島は刀で受けとめた。
中島は受けた爪を押し返し男の懐を刀で斬りつけた。
しかし、男は地面を蹴り大きくばく宙をしてその斬撃をかわした。
「はあ…はあ…はあ」
肩で大きく息をしながら刀を構える中島を見て男は笑った。
「そんなあせんなよ!!楽しもうぜ!!」
そう叫ぶと中島と距離を詰めるように男は走り出した。
キィイイイイイイン
男の斬撃に刀を合わせるが先ほどとは違い真正面に受け止めるのではなく、刀に角度をつけ受け流し弾いた。
「うぉ…」
予想外の攻撃に男は呻き懐に絶対的な隙ができた。
「あああああああ!!」
中島は叫びその隙に刀による斬撃を与えた。
キィイイイイイイン
予想外の音に中島は懐に目を凝らすと
逆の手でつかまれた刀が見えた。
「残念だったな! 俺の勝ちだ!!」
男は叫び弾かれた手を構え直し隙だらけの中島に振り下ろした。
その瞬間黒い影が男と中島の間に入り込んだ。
キィイイイイイイン
再び響く予想外の音に今度は男が目を凝らした。
「選手交代だ。」
「くろ…さ…かさん。」
そこには爪による斬撃を銃身で受け止める黒坂が居た。
黒坂はすばやく爪を弾き男のわき腹に銃身で打撃を与えた。
ドン
という鈍い音とともに男は後ろに飛んでいった。
「あんたは楽しめそうだな!!」
男は体勢を立て直し黒坂に爪を構えた。
「メナス。お前は…俺が殲滅する!!」
そう叫ぶと黒坂は銃を構え歩き出した。