第41話 過去(26)-絶望の足音-
キィイイイイイン
あたりに甲高い金属音が轟く。
黒坂は、メナスの爪を右手の刀で防ぐと相手の懐に向け蹴りを放つ。
メナスは瞬時にそれを察知し、後方へと飛ぶ
すると、左方からもう一体のメナスが爪で貫くように突進してくる。
目の前へと伸びてくるそれを頭を捻りかわすと一気にそのメナスの後ろへと
身を翻し、首をはねた。
「な…!?」
明らかな違和感に黒坂は戸惑う。
そのメナスは、
炎を上げることもなく
灰になることもなく
ただ、霧のように消えたのだった。
「まさか…幻覚かなにかなのか…?」
黒坂はそう呟き、自分の推測を導こうとするが、
-ヒュン-
かすかな音に気づき近づく爪をはじき落とす。
「考えてる暇はないか…。」
黒坂は走り出すと、爪を構えるメナスに斬撃を放つ
メナスはそれをかわし、右爪で斬撃を繰り出す。
黒坂はそれを避けるとメナスの伸びた右腕に左手を乗せ
そのまま地面を蹴り、左腕を起点にし、メナスの後頭部へと蹴りを繰り出す。
ドン
という鈍い音とともにメナスは後方へと飛ぶ
メナスは立ち上がるが、傷一つどころか、服に汚れも見られない。
「やっぱり、幻覚か…。でも…」
そう言って自分の左手を見る。
幻覚という事実が一番有力だが、相手の右腕をつかんだその感触は確かに黒坂の
左手には残っていた。
目線をメナスへと移す。
黒坂は地面を蹴ると一気に距離を詰める。
メナスが反応し爪を振りかぶるがそのスピードよりもはるかに速く、
右腕を、続いて左腕を切り落とし、
首をはねた。
メナスは霧のように消え、
「すばらしい。実にすばらしいよ黒坂君。」
前方に近藤が現れ、
「黒坂君!!」
その横には誄の姿があった。
「誄!!」
黒坂はそう叫ぶと走り出そうとする。
しかし、
「そろそろ時間もないようですし、作業をしてしまいましょうかね。」
近藤が再び指を鳴らすと、
近藤と黒坂の間をふさぐように
20体ほどのメナスが現れた。