第4話 指令
まだ大通りは静けさに支配されている早朝、黒坂は「BAR BUNKE」のドアを開けた。
「すいませんけど、まだ開店まえ…黒ちゃん!! こんな早くにどうしたの?」
カウンターの中から出てきたマスターは店の中に居る黒坂に驚きながら言った。
「美羽から連絡があった。弾丸出来たのか?」
「ちょっと待ってて呼んでくる~。」
そう言うとマスターはカウンターの奥へと入っていった。
「弾丸は出来てるみたいだけど…美羽ちゃん徹夜みたいで寝てる。起こそうか?」
カウンターから出てきたマスターの手には小さなケースがあった。
「いや、いい。ありがとうって伝えてくれ。」
マスターから渡されたケースの中には祈祷が施された弾丸が三発入っていた。その弾丸を銃に装填し店を出ようとすると
「黒ちゃんが帰った後組合から連絡が入った。指令が出るかもしれないから、夜また寄って。」
いつになく真剣な顔をするマスターに手を上げて答え黒坂は店を出た。
「なんで、黒ちゃんこんな早くに来たんだろ…?」
マスターはいつもの表情に戻った後黒坂の行動に疑問を感じ呟いた。
「マスター…黒ちゃん…来たの?」
マスターの後ろでぼさぼさの髪の毛であくびをしながら美羽がカウンターに出てきた。
「美羽ちゃん。お疲れ様。」
起きてきた美羽に今の出来事を説明すると
「あ…私のせいかも…。」
「なんで?」
「実は…」
と言って昨日の夜中のことを話し始めた。
美羽によると昨日の夜中弾丸が出来たことを報告するために電話をしたが、眠気に勝てず
「くろちゃ…だんがん…」
まで言ったところで寝てしまったらしい。
「そりゃ心配するよ~。」
黒坂の早朝の来店の真相を知りマスターは微笑んだ。
「黒ちゃんらしいな~。 後で謝っとくんだよ?」
「は~い。」
そう言うと美羽は睡眠をとるため店の奥へと入っていった。
「いらっしゃ~い。お?来たね黒ちゃん。」
マスターの声に迎えられ黒坂は再び「BAR BUNKE」のドアを開けた。
「あ!黒ちゃん。昨日はごめんね。」
黒坂の姿を確認すると美羽は黒坂に駆け寄った。
「いや。急がせてこっちこそごめん。」
「うん。大丈夫だよ!」
席に着き緑茶をオーダーするとマスターは緑茶とともに一枚の書類を持ってきた。
「指令が届いた。」
普段のマスターとは違う真剣な表情、その表情に黒坂の顔も引き締まった。
「ああ。内容は?」
マスターは書類を黒坂に渡しながら説明した。
「メナス間での人間の血液取引は知ってるな?」
最近メナスの間で人間の血液が高額で取引されている。
「ああ。」
「今回の指令はいわゆる「調達屋」と呼ばれる血液を調達するメナス一体の殲滅。」
「出没場所はわかってるのか?」
「この店から、500メートルくらい先のホストクラブで働いている。」
「ホストクラブで品定めか。分かった。行ってくる。」
そう言うと黒坂は席を立ち店から出ようとすると
「今回、中島君との共同任務だからね!」
と後ろからマスターが叫んだ。
店から出る寸前だった黒坂は出るのを止めマスターに向き直った。
「なんで?単独指令しか入れるなって言ったよな?」
「新米任せるなら黒ちゃんだったら安心でしょ?」
「どうなっても知らんからな…」
乱暴にドアを開け黒坂は出て行った。
「マスター、大丈夫なの?」
最後の黒坂の態度に心配になった美羽はマスターに話しかけた。
「大丈夫、黒ちゃんなら。美羽ちゃんも分かってるでしょ?」
「そうだね! きっと大丈夫。」