第38話 過去(23)-単独-
二人は、工場の奥へと歩みを進めていく。
通路を進むと一つのドアがあった。
「ようこそ。」
ドアを開けた二人を、スーツを着た男は煙草をふかせながら言った。
「あいつが、近藤か?」
慶斗は銃で男を指しながら黒坂に尋ねた。
「違います。でも、かなり強いです…。」
黒坂は、刀を構える。
「黒坂君、だったね?君は先に進みなさい。」
スーツの男は自身の後ろのドアを指した。
「…!?」
黒坂は戸惑う。
「ご指名だ。行って来い。」
慶斗は黒坂に言う。
「でも、師匠は…。」
「すぐ行くさ。先に行け。」
「分かりました。」
そう言うと黒坂は駆け出し、男の横を抜けドアの向こうに消えて行った。
男は煙草を地面に落とし靴で踏みつける。
「では、始めましょうか?」
「そうだな、急いでるからさっさと始めるか。」
慶斗は銃を1回転させ男に構える。
男は自身の手を漆黒のものへと変化させた。
-タァアアアアアアン-
「ここか…?」
周囲を警戒しながら黒坂は進んできた通路の奥のドアに入る。
そこには、眠っている誄が居た。
「誄!!」
黒坂は誄のそばに駆け寄ると誄に呼びかける。
しかし返事はない。
「強力な睡眠薬を使ったので、そうそう起きないと思いますよ?」
不意に後ろから聞こえた声に振り向くと、
そこには近藤が立っていた。
「やはり、来ましたね?黒坂君。」
「…。」
黒坂は刀を構え近藤を睨みつけた。
「やっと戦える。」
近藤はニヤリと笑うと自身の両手を漆黒のものへと変化させた。
黒坂は一気に距離を詰め近藤に斬撃を繰り出す。
近藤はそれをかわすと、黒坂を切りつける。
キィイイイイイイイイン
黒坂は刀で爪を防ぐと共に近藤の腹部に蹴りを繰り出す。
蹴りが当たる寸前で近藤は黒坂との距離をとることでかわした。
「戦えて実に嬉しいが、やはり同胞を傷つけるのは心苦しいな。」
近藤は黒坂に話しかける。
「俺は、人間だ!!お前達とは違う!!」
黒坂はそう叫ぶと、
近藤に斬撃を繰り出した。