第36話 過去(21)-奪還作戦-
「やはり、君の弟子にはまだ早い任務だったか。」
なにもまい空間に声が響き渡る。
その声に慶斗は苛立ちを隠せずにいた。
「…規格外のメナスがいる。」
「確認済みだ。我々のデータには存在しない。」
「奪還作戦の許可をくれ。」
慶斗は声の聞こえる方を見た。
「いいだろう。王家の血の奪還・新種のメナスの戦闘データの回収を任務として発令する。作戦メンバーは君が選定し提出したまえ。」
「了解した。」
慶斗はそう言うと部屋を出た。
「桜。できるだけ大量の弾丸が要る。できるか?」
黒坂の入院している病院に向かう途中の車の中で慶斗は助手席に座る桜に話しかけた。
「全力は尽くすわ。さっそく取り掛かるからそこで降ろして。」
桜は近くの駐車場を示すと言った。
「送っていかなくていいのか?」
「大丈夫。それよりも早く黒坂君のとこに行ってあげて。」
そう言うと桜は車を降り、慶斗は車を発進させた。
「黒坂…。調子はどうだ?」
病室に着いた慶斗は黒坂に尋ねた。
「師匠…。俺のせいで…誄が…。」
「奪還作戦が発令された。メンバーは俺が決められる。」
慶斗は俯く黒坂を見つめる。
「お願いします。行かせてください。」
黒坂は顔を上げると慶斗を見ながら言った。
「…だろうと思ったよ。ただし、今は休め。いいな?」
「はい…。」
慶斗は病室を出ると携帯電話を取り出した。
「奪還作戦のメンバーは俺と黒坂だ他はそっちで勝手に決めろ。」
「黒坂…。奴をまた使うのかね?」
「ああ。文句は言わせない。」
「いいだろう。後程メンバーの一覧を送る。」
そう言うと電話は切れた。
「こいつは拘束しなくていいのか?」
薄暗い大きな倉庫の一角で男は眠っている誄を見ながら近藤に言った。
「要らないだろう。逃げればどうなるかは分かっているだろうしな。」
「そうか、作業はいつにする?」
「まだだ。奴は必ずやってくる。それまでは生かしておく。」
「…勝手にしろ…。」
そう言うと男は去って行った。
「早く君と戦ってみたい…。」
そう言うと近藤はにやりと笑った。