第31話 過去(16)-出会い-
黒坂は悲鳴の聞こえた教室へと駆け込んだ。
しかし、そこには誰もいなかった。
「誰も…いない…。」
辺りを見回しながら教室の中央へと進んでいくと
「どうも 君が黒坂君だね?」
自分の背後から声が聞こえ黒坂は身構えた。
そこには、黒いスーツに身を包んだ男性が立っていた。
「誰だ?」
黒坂が声をかけると
「失礼。私は近藤と言うものだ。それでもって…」
その言葉と同時に近藤の両手は漆黒のものへと変化した。
「メナスだ。」
それを目にした黒坂は瞬時に刀を抜き構えた。
「いい反応だ。やはり殺すのは惜しいな。」
「ここに居た人をどうした!?」
黒坂は近藤を睨み叫んだ。
「君はもう少し感情をコントロールすべきだ。冷静になったらどうかな?」
近藤は床へと目線を下し再び上げた
キイィィィィィン!!
金属同士がぶつかる甲高い音が教室を包んだ。
「落ち着けと言っているのだが?」
近藤は黒坂の事など意にも留めないような口調で黒坂を見た。
「ここに居た人をどうしたと聞いているんだ!!」
黒坂はそう叫ぶと同時に体制を低くし近藤の足に狙いを定め刀を振るった。
「惜しい…。私のほうが君よりも早く動けるようだな。」
後ろから聞こえた声に驚きすぐに振り向き刀を構える。
「何が狙いだ?」
「それはもちろん君の守っているお姫様。彼女の血が必要なのだよ。」
近藤は笑いながら言った。
「彼女は守る。貴様らには渡さない。」
「それは残念だ。君を殺さなければならない。できればしたくなかった。純粋じゃないとはいえ君も同類だろ?」
「…どこで…それを?」
「私も驚いたよ。まさか人間たちは自分たちの子供を君たちの言う化け物に変えるなんてね?」
近藤は黒坂を指さしながら言った。
「自分たちの同胞は家族のように大切にする我々と君たちの言う化け物に作り替える君たち人間。果たして本当の化け物はどっちなのかな?」
「うるさい!!」
黒坂は刀を握りしめ地面を蹴る。
近藤は笑みを浮かべながら指を鳴らした。
「邪魔をするというなら、実に心苦しいが君を殺すまでだ。まぁまたの機会にでも。」
黒坂は意識を取り戻し辺りを見た。辺りには生徒たちの話し声が響いていた。
「奴は…なんなんだ…。」
黒坂は人通りの少ない場所へと移動し携帯電話を取り出した。