第28話 過去(13)-発狂-
キィイイイイイイン
鋭い音が辺りに響く黒坂は正義に斬撃を与えるが爪で防がれた。
正義はもう一方の手で黒坂に斬りかかる。
黒坂はその手をメナスの手で受け止めた。
「ぐ…あ…。」
黒坂は受け止めた手に力を込める、正義からは悲痛な声が漏れていた。
「許せない。あんたは、絶対に…許せない!!」
黒坂は叫ぶとさらに手に力を込めた。
「あああああ!」
正義は叫び跪いた。
黒坂は手を離し懐に蹴りを与える。
ドン
鈍い音と共に正義は後方に吹っ飛んでいった。
「その手…。」
黒坂の後方にいた拓馬は黒坂の腕を見て言った。
「先生と同じ…。」
恭子も手を見て呟いた。
「まだか…。」
黒坂は正義の姿を見ながら言った。
そこにはふらふらと立ち上がる正義の姿があった。
「殺す殺す殺す殺す殺す…。」
何度も同じ言葉を繰り返しながら正義は赤い液体の入った小さなビンを取り出した。
「これで、殺してやるよ!!」
正義は叫び不気味な笑い声を上げながらその赤い液体を飲み込んだ。
「ひゃあああああああああああ!!!」
正義は両手を天に突き上げ叫ぶ
「まさか…。」
黒坂は脳裏によぎる一つの可能性に刀を構えなおす。
「……。」
静かになった正義は両手を下げると黒坂を睨む
その目は赤く染まっていた。
「ひひひひひ。」
正義は不気味な笑い声を上げながら顔をあげる。
「血が欲しい…人間の血が…。」
「王家の血を飲んだのか…。」
黒坂は呟くと刀を地面に置いた。
右手をメナスのものへと変化させ構える。
「そこに!!人間の血が…。」
正義は恭子を指差しにやりと笑った。
拓馬はしっかりと恭子を庇うように抱きしめた。
正義は地面を蹴り一気に黒坂との距離を詰め右手で突きの攻撃を放つ
「はやい…!」
黒坂は体を翻し何とか避け、懐に飛び込む。
そのまま打撃を与え、正義がよろめいたのを確認すると爪で斬撃を繰り出す。
しかし、黒坂の手は正義によって掴まれた。
正義は黒坂を近くの壁に叩きつける。
「ぐあ…。」
正義は爪を構え突きの攻撃を放つ体制に入る。
黒坂は足払いをして正義の体勢を崩すと距離をとった。
「黒坂!」
後ろから、拓馬が叫ぶ。
「……。」
黒坂は肩で息をしながら正義を睨む。
黒坂は右手を人間のものへと戻した。