第18話 過去(3)
「な…なんで…。」
黒坂の声は闇に消え右手からは血が滴り落ちていた。
「これじゃない…人間の…にんげんのちをおおおおおおお!!!」
茶髪の青年は叫びもう片方の爪を振り上げる。
「くそおおおおおおお!!」
黒坂は青年に対し渾身の打撃を左手で与えた。
「ぐふぅうう」
奇妙な声を出しながら青年は後ずさる。
「あああああ!!!」
黒坂は地面に落ちている刀を拾い上げ青年に振り下ろす。
キィイイイイイイン
漆黒に変化していない部分を切ったはずの刀は皮膚に阻まれていた。
「なんで…ちゃんと祈祷してあるのに…。」
本来ならば祈祷した武器の攻撃は爪以外では防げない。
青年は顔を歪ませニヤリと笑った。
「ひひひひひひ。」
青年は刀を黒坂から奪い取り投げ捨てた。
「しねぇええええええ!!!」
そう叫ぶと爪で黒坂を貫こうと突きの攻撃をした。
キィイイイイイイイン
「し…しょう…。」
一瞬目を瞑り開くとそこには師匠が居た。
「大丈夫か?」
師匠は爪を刀を使い後ろ手で防ぐようにして黒坂の目を見た。
「師匠…刀が効かないんです…。」
「そうか。」
そう言うと師匠は爪を弾きわき腹に蹴りを入れた。
「黒坂、下がってろ。」
「はい…。」
そう言うと黒坂は距離をとった。
「あいつの目は赤かったか?」
「はい。」
黒坂が答えると師匠は刀を黒坂に投げた。
その刀は黒坂のものよりも随分長く大きなものだった。
「持ってろ。」
そう言うと師匠は両手を顔の前で交差する。
「さあ、来いよ。飲んだんだろ?王家の血を。」
勢いよく手の交差を解除するとその手はメナスのものへと変化していた。