第14話 たまには
「終わった。後は頼む。」
携帯電話をしまい黒坂は歩き出した。
鍵の掛かったドアの前に行くと持っていた刀を構えドアを切った。
「まだ…出るなよ。」
振り向き怖がったままの生徒達に言うと講堂から出て行った。
「黒ちゃん、後始末と記憶処理終わったって。」
携帯電話をしまいマスターは黒坂に話しかけた。
「分かった。」
そう言うと緑茶を一口飲んだ。
「黒ちゃん、怪我は大丈夫かい?」
そう言うとマスターは黒坂の頭部に巻かれている包帯を指差しながら言った。
「ああ。」
「黒ちゃん!!」
黒坂が頷いた直後店の裏から美羽が出てきた。
その顔は真剣で少し強張っていた。
「気づいたのか?」
その顔を見て黒坂は美羽に話しかけた。
「うん。」
「いつ?」
「祈祷のとき。」
「そうか。」
短い会話を続けているとマスターが話しに加わってきた。
「美羽ちゃん。気づいたって、なにに?」
「黒ちゃん…。」
マスターの疑問に答えていいのかを確認するように美羽は黒坂のほうを見た。
「いいよ。」
黒坂がそう言うと、美羽は話し出した。
「私、祈祷をすると気配を感じるの。」
「気配?」
マスターは美羽の方を向いた。
「言いにくいんだけど、感じるの。」
「そっか。で、それがどうしたの?」
「黒ちゃんは…人間の気配の中に…メナスの気配があったの。」
「メナスの!?」
マスターは驚きを隠せないように黒坂を見た。
「だから…気になって…。」
そう言いながら美羽も黒坂のほうを見た。
「ああ。その通りだ。」
そう言うと黒坂は右手を出し二人の方に向けた。
その手は少しづつ漆黒に変わりメナスのものになった。
言葉もなく驚く二人を見た後、
「たまにはいいか。」
と言って黒坂は話し出した。