第12話 弾切れ
黒坂は悠馬に近づき銃で刀を押さえ、爪を振りかぶる。
「…くそっ!」
悠馬は呻き、もう一方の手で黒坂の爪を防いだ。
「うろたえるな!」
竹下はそう叫ぶと二人との距離を詰め黒坂に爪による斬撃を繰り出した。
黒坂は後ろに飛び退き攻撃を避けた。
「奴の銃は俺が持っていた普通の銃とほぼ一緒。そう考えれば、弾装数は八発。あと…二発。」
そう言うと黒坂を見た。
「それにあいつ…。片手しか変化してない。」
そう言うと黒坂の右手を見た。
「完全には変化できないらしいな。それが匂いが薄い理由だろう。そうだろう?」
「……。」
黒坂は無言のまま銃を構えた。
「二発あれば充分だ…。」
そう言うと黒坂は地面を蹴り悠馬との距離を詰めた。
先ほどとは違い冷静になった悠馬は近づいてきた黒坂に刀で斬撃を与えた。
「お前が同属ならこの刀で切れるはずだ!!」
黒坂はそれをしゃがみ避ける。その後悠馬の脇腹に蹴りを与えた。
「ぐっ…」
悠馬はそのまま吹っ飛び倒れこんだ。
「……。」
竹下は腕を組み黙って見ていた。
体を起こそうとした悠馬の前には黙って見下ろす黒坂がいた。
「くそ…。」
絶望的な状況に恐怖の色を顔に浮かべ呟いた。
黒坂は悠馬の額に銃を構える。
-ヒュン―
空気を張り詰めるような微かな音が響き渡る。
その音に反応した黒坂は振り向き引き金を引いた。
―タアアアアアアアン―
放たれた弾丸は空中を真っ直ぐと進み「何か」にぶつかった。
「その技…。」
ぶつかった後の弾丸は、そこにあるはずのないメナスの爪と衝突し形を歪めた状態で落ちていた。
「知っているのですか、この技を。」
竹下は爪を黒坂に構えた状態で言ったが、その手には四つの爪しかなかった。
「うあああああああ!!」
狂った叫び声とともに悠馬は刀を振りかぶり背後から黒坂に襲い掛かった。
すばやく反転させ銃を悠馬の額に構える。
そこで悠馬の動きが止まった。
「あ…ああ…。」
呻く悠馬に黒坂は引き金を引いた。
―タアアアアアアアン―
悠馬はその場に倒れその体は緑色の炎に包まれた。
「どうします?弾切れでしょう?」
爪を構えた状態のまま竹下は、黒坂に話しかけた。
「ちっ…。」
黒坂は舌打ちをすると銃をホルスターにしまった。