第11話 秘密
「確かに、今の運動能力は人間とは言えませんね。」
壁際に杏里を横たわらせ竹下は黒坂を見ながら言った。
「貴方は、一体何者ですか?」
悠馬と同じ質問を悠馬よりも落ち着いた表情で言った。
「……。」
黒坂は無言で肩に抱いた女子生徒を後ろに居る先生に預け、竹下に向き直り銃を構えた。
「まあ、いいでしょう相手が誰であれ殺すことに変わりありません。」
竹下はそう言った後悠馬に近づき
「どうします?先にどちらが行きますか?」
と言うと
「俺が行く。あいつは絶対に殺す!」
と言って悠馬は一歩前に出た。
その手には杏里と同じくハンターの刀が握られていた。
「いくぞ!!」
そう言うと悠馬は黒坂との距離を一気に詰め刀による斬撃を繰り出した。
キィイイイイイイン
黒坂は銃身でそれを防ぐ。
悠馬は攻撃の手を休まず連撃を繰り出した。
キィイイイイイイン
キィイイイイイイン
キィイイイイイイン
黒坂は一つ一つを見切り防ぐ。
それを横目で見ながら竹下は黒坂につめを構えた。
竹下は地面を蹴り黒坂の懐に入ると爪で黒坂に突きの攻撃を与えた。
キィイイイイイイン
間一髪のところで銃身を盾にした黒坂だったが衝撃までは消せず
「ぐわっ…。」
と言う短いうめき声をあげ、後方に吹っ飛び壁に激突した。
「おい!邪魔すんな!!」
悠馬は竹下に怒鳴るが
「言ったでしょう?かりがあると。」
そう言いながら睨む竹下の威圧に負け竹下を責めるのを止めた。
―タアアアアアアアン―
―タアアアアアアアン―
二発の銃声が響き弾丸が発射される。
悠馬は刀で弾き、竹下は軽く左に上半身を傾け避けた。
二人は弾丸が飛んできた方向に眼を向けるとそこには銃を構える黒坂が居た。
「しぶといですが、結構なダメージだったみたいですね?」
竹下がにやりと笑う。
そこに立っている黒坂の頭部からは一筋の鮮血が頬を伝っていた。
「どうやら、あなたは純粋な人間ではないようですね?」
竹下は鮮血を見たとたんに呟く
悠馬も黒坂の鮮血を見て驚いた。
「私たちは血の匂いがわかる。美味そうな匂い、まずそうな匂い。そして…同属の匂い。」
そう言うと竹下は一歩前に進み黒坂に言った。
「貴方の血からは、ほんの少しではありますが我々と同じ匂いがするのですが?」
「ハンターが…同属の血を…?」
悠馬は信じられないといった風に竹下に声を掛けた。
「あなたにも分かるはずです。匂いが…それに我々と同属ならあの運動能力の高さも説明できる。」
「分かる…でも信じられねぇ…。」
そう言うと悠馬は持っていた刀にさらに力をこめた。
「あんまり使いたくねぇけど…そんな場合じゃねぇか。」
そう呟くと黒坂は二人の方へ歩き出した。
右手には銃を持つ人間の手、左手はメナスのものと同様漆黒の皮膚に、鋭い爪を備えて。