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夢の中へ

 一通り話し終えたあと、院長と子供は準備があるからと席を外し、受付にいた男からいくつか質問をされた。


「これから記憶を消すことになりますが、この治療は確実ではなく、失敗して他の記憶を消してしまう可能性がありますが、よろしいでしょうか。」


「はい。承知しています。」


「では、どの時期の記憶を消したいか教えてください。」


 記憶を選択して消せるのか。全部忘れて生まれ変わろうと思っていたのに。でも、嫌な記憶だけ消すことができるならその方がいいか。


「母と姉が亡くなった時期なので、高一の時と24歳の時で。」


「承知いたしました。では、今回の治療費と最後にこの同意書にサインをお願いします。」

 札束の入ったカバンをそのまま渡し、サインをした。


「ありがとうございます。早速治療に入ります。お部屋に案内しますので、ついてきてください。」

 診察室の奥を通り、階段を下り、地下へと進んだ。そこに無機質なコンクリンの床と壁でできた部屋に大きな白いベッドが三つ置かれていた。そのベッドの枕の近くにはそれぞれヘッドセットのような金属製でコードがたくさんついている被り物があってそれらはパソコンにつながっていた。ここで拷問が行われていると言われても納得してしまうような部屋だ。


 院長がパソコンをカタカタいじっている。


「では始めましょうか。真ん中のベッドに寝っ転がってください。」

 ベッドに寝転がると頭にヘッドセットをつけられた。軽いもので特に不快感はなかった。そのままぼーっとしてると横の二つのベッドに先ほどの子供と神手とかいう受付のスタッフが登ってきて慣れた手つきでヘッドセットをつけ始めた。


「よろしくお願いします。今回お手伝いする神手です。」

 なぜ助手が一緒に寝る必要があるのかと思った。


「私とその子があなたの記憶の中に入り込んで消すべき記憶を消すんです。」

 ファンタジーみたいな話ではないか。でも記憶を消す技術自体、自分の知識では理解できそうにないので深掘りすることは諦めた。でも子供にまかせていいのかと不安がっていると、


「大丈夫です。永海ちゃんのことは僕がちゃんとみておきますから。」

「あたしは失敗しないのよ!」

 子供が頬を膨らませた。まあまあと助手があやす。


「準備できました。心の準備は大丈夫ですか。」

 作業を終えた院長が落ち着いた様子で尋ねてきた。準備はとっくのとうにできている。


「じゃあ行きますよ。おやすみなさい。」

 そう言って院長がパソコンを操作したら急に頭がぼやけてきて眠くなってきた。いつもは寝るのが怖いのに、すっと眠りの世界へ入っていった。いよいよか。


 さよなら、母さん、姉ちゃん。

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