誰も犠牲にしない方法
男から「血の代償」の真実を聞いたとき、リアムは絶望に打ちひしがれた。
「国を救うには、お前がその呪いを全て引き受けなければならない。それは、お前の命と引き換えだ。」
男の言葉は、まるで死刑宣告のようだった。リアムは王座には興味がなかった。しかし、人々を病から救うという使命には抗えなかった。だが、自分の命を犠牲にしてまで、この国の腐敗した歴史を背負うことに意味があるのだろうか?
「俺は、誰も犠牲にしたくない。」
リアムはそう呟いた。
「この国が栄えたのは、古の王が、大地から生命を奪ったからだというのか?そんな呪われた歴史を、俺一人が背負って終わらせるなんて、冗談じゃない。俺は、この国を救いたい。だが、自分の命を犠牲にしてまで、誰かを救いたいわけじゃない。」
男は驚いたようにリアムを見つめた。これまで、王族の血を引く者たちは皆、自分の命を投げ打つことを当然のように考えてきた。だが、リアムは違った。
リアムは、自分が持つ「病への耐性」を使い、病に苦しむ人々を一人、また一人と治療していった。しかし、それはあくまで一時的なもので、根本的な解決にはならない。彼は知っていた。この病を完全に止めるには、呪いの根源である「血の代償」を断ち切らなければならないということを。
「王座は、血筋や権力で決まるものじゃない。本当に民を思う者が座るべきだ。」
彼は、腐敗した貴族たちを倒すこと、そして「囁く病」を根絶すること、その両方を成し遂げる「第三の道」を探し始めた。それは、王族の特権を捨て、貧しい民の知恵と力を借りる、前例のない挑戦だった。