血の代償
「囁く病」の背後に隠された真実は、貴族の陰謀などという矮小なものではなかった。それは、古代の王家が、この国を繁栄させるために払った、恐ろしい「血の代償」だった。
遠い昔、この国は不毛の地であり、飢餓と貧困に苦しんでいた。当時の王は、国を救うため、禁じられた古代の魔術に手を出した。その魔術は、大地から生命力を吸い上げ、国を豊かにする力を持っていた。しかし、その力には代償があった。代償は、王族の血に宿る「穢れ」として、何世代にもわたって受け継がれていく。そして、その穢れが蓄積し、臨界点に達した時、それは「囁く病」として爆発的に発症する。
病は、王族の血が穢れるほど、そして民衆の心が腐敗するほど、その勢いを増す。この国の繁栄は、病という形で、自らを蝕む呪いへと姿を変えたのだ。
リアムの血は、王家の血筋でありながら、貧しい地区で育ったため、その「穢れ」をほとんど宿していなかった。彼の血が病に抗うことができるのは、そのためだった。彼は、呪われた王家の血を浄化し、国を救うことができる唯一の「鍵」だった。
しかし、この呪いを完全に止めるには、リアム自身がその代償を全て引き受けなければならない。それは、この国の繁栄を維持しながら、病を消し去るという、不可能に近い選択を意味する。