権力闘争の幕開け
リアムは、自分が持つ「病への耐性」が何を意味するのか理解するのに時間はかからなかった。そして、その力はすぐに彼を権力闘争の渦へと引きずり込んだ。
男はリアムを、貧民街の裏手にある隠された集会所へ連れて行った。そこには、貴族の圧政に苦しみ、病に冒された者たちが集まっていた。彼らは皆、リアムを希望に満ちた眼差しで見つめた。
「皆、この者が王の血を引く真の後継者だ。この者の力で、我々は救われる!」
男はそう言って、リアムを彼らの前に立たせた。リアムは、自分の出自を利用されることに反発したが、彼の目の前で苦しむ一人の子供を見て、何も言えなくなった。
子供は病に侵され、呼吸もままならない。リアムは無意識に、その子の頬に手を伸ばした。彼の指が触れた瞬間、子供の顔に広がっていた黒い染みが、まるで水に溶けるかのように消えていく。子供は、久しぶりに安らかな顔で眠りについた。
その光景を見た人々は、リアムを救世主のように崇めた。彼らはリアムを担ぎ上げ、反乱の旗頭として祭り上げた。リアムは王座には興味がなかったが、自分を信じる人々のために、その運命を受け入れるしかなかった。
王都では、新たな「後継者」の噂が瞬く間に広まった。老将ガレンは、この事態を反乱とみなし、即座に鎮圧を命じた。商家の長エリザベスは、リアムの力を利用しようと密かに接触を図った。そして、騎士団長カイラスは、彼が本当に民を救う者なのか、その真意を確かめようとした。