意図せぬ希望
「病への耐性」を「鍵」とした物語の続きですね。リアムが自分の意思とは裏腹に、運命に巻き込まれていく様子を書いてみましょう。
意図せぬ希望
男はリアムの腕を掴んだ。その手は凍えるほど冷たかった。男はフードを外し、顔を見せた。その顔の半分は、不気味な黒いカビに覆われていた。それは「囁く病」の末期症状だった。
「この病は、貴族たちが私腹を肥やし、国を腐敗させたことへの罰だ。病の治療法?そんなものはない。この病を止めることができるのは、清き血を持つ者だけだ。」
男はリアムの手を取った。男の指から、病の黒い染みがリアムの肌へと広がっていく。しかし、リアムの肌に触れた瞬間、それはまるで水滴のように蒸発し、消え失せた。
「見ろ、リアム。お前の血は、この病に抗う力を持っている。お前こそ、この国を救う唯一の『鍵』なのだ。」
リアムは自分の腕に広がる黒いカビが消えていくのを見て、言葉を失った。彼は、自分が何者でもないただのリアムであることを望んでいた。しかし、目の前で苦しむ人々、友人の窮状、そして男の言葉に隠された真実が、彼の心を揺さぶった。彼は、王座には興味がなかったが、この国を蝕む病を止めるという使命には、抗えなかった。