謎の男と王の遺志
次の日も謎の男に出会った。
男はリアムの肩を掴むと、フードの下から冷たい目でリアムを見つめた。
「私が何者か?私は陛下に仕えていた者。ただの庭師にすぎん。だが、陛下は私に、この国の未来を託されたのだ。」
男はそう言って、リアムを人通りの少ない裏路地へと連れて行った。
「陛下はご存知だった。病が国を蝕み、貴族たちが私腹を肥やし、この国が滅びゆくことを。だが、陛下には後継者がいなかった。そこで、陛下は密かに、遠い地に隠し子をもうけられた。それがお前だ、リアム。」
リアムは男の言葉を信じられなかった。王の隠し子?そんな話、まるで作り話だ。
「冗談はやめてくれ。俺はただの貧乏人だ。」
「だが、お前の血は嘘をつかん。陛下は、お前がいつか戻ってくることを信じておられた。そして、この国を立て直すための『鍵』を、お前に残されたのだ。」
男は懐から、古い羊皮紙を取り出した。そこには、この国の歴史と、王族にしか伝わらない古の秘密が記されていた。男はリアムに、それが「囁く病」の治療法につながる手がかりだと語った。
「あの病は、ただの病ではない。国を腐敗させた貴族たちの欲望が、形となって現れたものだ。それを浄化できるのは、清き血を持つ者だけ。つまり、お前なのだ。」
リアムは、自分が王族の血を引くという運命を拒絶したいと思った。しかし、目の前で苦しむ人々、友人の窮状、そして男の言葉に隠された真実が、彼の心を揺さぶった。彼は、王座には興味がなかったが、この国を蝕む病を止めるという使命には、抗えなかった。
彼は気づいた。自分が意図せずして、王の遺志を継ぐ者として、この国の運命を背負わされようとしていることに。そして、この国を再建するためには、腐敗した貴族たちと戦わなければならないことに。