暗殺
老将ガレンがリアムの味方についたという知らせは、瞬く間に王都中を駆け巡った。この予期せぬ同盟は、商家の長であるエリザベスを激しく動揺させた。彼女は、自らの研究施設で、静かに新たな策略を練っていた。
「愚か者め、武力と理想が手を組むなど。この国を動かすのは、金と情報よ。王座はすでに私のものだというのに…」
エリザベスは、高価な香木が香る書斎の椅子に深く腰掛けていた。机の上には、リアムとガレンの動向を記した報告書が広げられている。彼女は、二人を対立させるための新たな陰謀を練り上げていた。金で傭兵を雇い、リアムの評判を落とし、ガレンの忠誠心を試す計画だ。
その時、書斎の窓から、鋭い矢が一本、風切り音もなく飛び込んできた。
エリザベスは、何が起こったのか理解する間もなく、胸に激しい痛みが走るのを感じた。矢には毒が塗られており、彼女の全身の感覚は一瞬にして奪われた。彼女の指先が、机の上に置かれたガラス瓶を弾き、透明な液体が床にこぼれ落ちる。それは、彼女が「囁く病」の治療法だと信じていた、まだ未完成の秘薬だった。
「…ま…さか…」
エリザベスは、かすれた声で呟いた。彼女は最後まで、自分のような完璧な策士に、死がこんなにも無秩序に訪れることを信じられなかった。彼女の体から、次第に力が抜けていく。そして、彼女の瞳に映る最後の光景は、窓の外を素早く去っていく、黒いフードを被った人影だった。
彼女の死は、王都を更なる混乱に突き落とした。




