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プロローグ

はじめまして、ねこづかと申します

初めて物語を書きます

私は脊髄腫瘍で更新が遅くなるかもしれませんが、読んでいただければとても幸いです


私は生まれてから一度も走ったことがない。



階段も、跳び箱も、外の公園も…。

私にとっては、全部 “画面の向こう側” のものだった。



病名は、たぶん長くて難しいやつ。

お医者さんがたくさん説明してくれたけど、正直あんまり覚えてない。

どうせ覚えいたところでどうにもならないのだから…。

ただ、小さい頃からずっと足が動かないってことだけは、ちゃんと知ってた。



学校にはたまに行けていたけど、教室の隅が私の席。

体育の時間は保健室で、遠足の日は病院だった。

車椅子でできることもあったし、友達もゼロじゃなかった。


 でも……『走る』って、どんな感じなんだろうって、いつも思ってた。


ゲームの中のキャラは、簡単に走る。

アニメの主人公も、いつも全力で走ってる。

私は、ただそれを見てるだけだった。



 「一回だけでいいから。ほんの少しでいいから」

 「走れたら、きっと気持ちいいんだろうな…。」



ずっと、そう思ってた。




「おはようございます。点滴のお時間ですよ〜」




私の思考を遮るように柔らかな声とともに、カーテンがゆっくりと開いた。

朝の光がふわりと病室に差し込み、まるで誰かが背中をそっと押してくれるような暖かなぬくもりが部屋に満ちる。


 


私はその光を見つめながら、少しだけ目を細めた。

カーテンの隙間から見える景色は、何も変わらない。

屋上の古い給水塔と、その奥に広がる街の輪郭。

昨日と同じ風景。

今日も同じ風景。

ここが私の世界。

 


看護師さんはいつものように明るく、

私の腕に点滴の針を刺しながら


「痛くないですか?」と聞いた。



「大丈夫です」



そう答えながら、私はまた窓の外を見つめた。


 


…たぶん、私はもう長くはない。


 


最近、なんとなく分かるようになった。

太陽が身体をジリジリと焼いていくように、毎日少しづつ命が削れていくのを感じる。


 


呼吸をするだけで身体がきしむ。

声を出すのもしんどくて、笑うことすら重労働だった。


 


けれど、なぜか怖くはなかった。

きっともう…覚悟ができていたのだと思う。


 


ただひとつ、心に残っていたのは――


『……一度でいいから、走ってみたかったな。』


それだけだった。

 


 

それから時間が経って

その夜、私は少し不思議な夢を見た。

いつもの病室のはずなのに、空気が異様なほど静かで、まるで時が止まったように音のない世界だった。


 


窓の外は夜だった。

けれど星がない。

月もない。

まるで夜空が、空っぽになってしまったかのように。


 


世界からすべての音が消え、

かすかに聞こえるのは、自分の弱々しい心臓の音だけだった。


 


そのとき、ベッドの足元に何かが現れた。


 


真っ黒な猫。

まるで闇そのもののような毛並み。

そしてその瞳はとても美しかった。


 


寂しい夜をすべて抱きしめたような、星空の目。


静かで

優しくて

どこか懐かしい。


その瞳を見た瞬間、私は直感的に悟った。



『ああ、この子は“あちら側”から来たんだ』


 


猫は何も言わず、音も立てずに歩き出す。

私はその背中を、なぜか懐かしい気持ちで見送り



気がつけば、足が……動いていた。


 


車椅子も、点滴のチューブもない。

私はただ、裸足のままたどたどしい足取りで夜の病院の廊下を歩いていた。


 


一歩、一歩。

床の冷たさが、足の裏に伝わってくる。



「……歩けてる……」


 


涙があふれた。

夢だと分かっていても、嬉しかった。

生まれて初めて、自分の足で前に進むことができたのだから。


 


猫は振り返らない。

でも私は不思議と分かっていた。



この先に、何かがきっとある。

“終わり” なのか、 “はじまり” なのかも分からない何かが…。



でも…この夜を境に、私の“物語”は走り出すのだった。


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