もしも冬の童話祭2025のテーマが「メッセージ」だったら 【題名】:教室にのこされたメッセージ
春のチャレンジ企画2025(テーマ:学校)と、私のチャレンジ企画の作品です。
2024年度の企画のテーマをシャッフルしています。
ジャンルは「童話」、テーマは「メッセージ」です。
はじめに
とある学校にこのような「メッセージ」がのこされていました。
「べんきょう、すごくたのしかったよ。チビ、ネコ、でかゴリラ」
メモ帳をちぎった、すこしよれよれのボールペンでかかれた字です。
Z県M市のとある小学校の3年生の教室にのこされた「メッセージ」でした。
いったいこの「メッセージ」はなんなんでしょう?
ちょっとじかんをさかのぼりましょう。
1
とある不思議な異世界。
ここには「クネヒト」とよばれる妖精とも鬼ともされるヘンテコなものたちがたくさん住んでいます。
彼らはなにものなのでしょうか?
彼らは寝ることがありません。彼らはごはんも水も必要としません。
彼らがこの異世界でやっているのは、いくつもの水たまりを見ているだけです。
その水たまりには、私たちの世界が映っています。
そして、彼らは私たちの世界を見て、その年で「いちばんやさしい人」をえらぶのです。
なんともおかしな鬼たちですね。
そんな「クネヒト」の中に、「チビ」と「ネコ」とよばれるものたちがいました。
「チビ」はその名のとおり、小さくだいたい小学3年生くらい。
「ネコ」はさらに小さく、だいたい小学1年生くらい。
この2匹はある「クネヒト」におねがいをしていました。
「『でかゴリラ』。あの人間の世界に行ける水たまり教えてくれない?」
「なんでだど? あそこはおでたちが見えたりするところだど」
「でかゴリラ」とよばれた「クネヒト」は大きさが3メートルをこえ、きんにくがすごく、顔もゴリラっぽいです。
でも、すごくやさしい「クネヒト」だよ!
「人間の世界に行って、人間が学んでいることを同じく学びたいんだ。そうすれば『やさしい人』さがしのヒントになる」
「チビ」とよばれる「クネヒト」が「でかゴリラ」に言いました。
「う、う~ん。お館様に怒られそうだけど、たぶん人間の世界のものを持ち帰らなければ、大丈夫だと思うど」
「お館様」とはこの異世界でいちばんエライ人間のような老人です。
こうして、「チビ」と「ネコ」と「でかゴリラ」は水たまりの中へと入って行くのでした。
2
「注意するど。このあたりの霧につつまれているところは、すべてさわれるし、おでたちも人間たちから見えるど」
とある山の中の霧につつまれた、たてものの中で、でかゴリラが注意します。
「ホントですね! 地面とか、木とかさわれます!」
ネコはトントンとあしぶみしたり、たてものの木をさわっています。
「んっ、なんだこれ?」
チビがなにかに気づき、このたてものの中で落ちていたものをひろいます。
メモ帳とそれにつながったボールペンです。
メモ帳のひょうしには「東木麻李」とかかれていますが、チビたちはそれを読めません。
「チビ、人間のものを持ちこむのはダメだど」
「これくらいならいいだろ~。石ころみたいなもんだろ~」
「この霧につつまれたたてものからそとに出たら、ボクたちは人間から見えず、話すことも人間からは聞こえないんですね」
ネコがでかゴリラにかくにんすると、でかゴリラは「そうだど」と答えました。
「ここは都会とちがって、人が多くないから、人間が学んでいるところをさがしやすいです!」
Z県M市は人口が約10万人。
M市の広さは東京23区くらいですが、小学校を探すのは、都会よりずっとかんたんでしょう。
これがチビとネコがでかゴリラにM市へ行きたい、とたのんだ理由です。
山の中ですが、3匹はぴゅ~と空をとんでいき、人間が学んでいるところを探すのでした。
3
「あっ! こどもたちがいっぱいいる! あれはきっと学ぶところなんじゃないか!?」
チビがしめしたのは、M市内のとある小学校の校庭。
3匹はこの校庭におりたちますが、せいかくにはこの世界のものをさわれないので、すこし浮いたかんじです。
「あれ? みんなたてものにもどっちゃった?」
体育の時間がおわったのです。
とうぜん教室にもどりますね。
「あのたてものに入ってみましょう」
ネコが言うと、3匹は学校に入っていきますが、3メートルをこえるでかゴリラは、入り口や天井から胸から上がとび出たじょうたいです。
「ギャハハハハハ!」
チビとネコはそれを見て大笑い。
「そんなにおかしいかど?」
こうして体育の時間をおえた3年生のクラスの教室に3匹は入ります。
いちばん後ろに立っていますが、でかゴリラの胸から上は、天井をつきやぶり、上の教室へとび出しています。
「でかゴリラさん。しゃがんでみたらどうですか?」
ネコに言われ、でかゴリラはしゃがみます。
「これなら問題ないど」
チビはあのメモ帳とボールペンをもったままです。
ネコが気づきました。
「チビさん! それらをもっていると、人間たちが、『ものがういている!』、とおおさわぎになりませんか!?」
「あっ、そうか!」
でも教室では先生も生徒たちも気づきません。
「ひょっとして、あの霧の中にずっとあったから、おでたちみたいに見えてないのかもしれないど」
でかゴリラの言うように、どうやらそうみたいです。
4
算数の授業がはじまりました。
「では、計算をする順番に注意してください。『2×10+5』はいくつになりますか?」
「25です!」
チビはねっしんに黒板に書かれる字をうつしています。
「ふぅ~む。オレとネコが10匹ずついて、5という数字はでかいでかゴリラあらわすとするならば、答えは21匹だと思う!」
「おでは5匹ぶんなのか?」
「なんかちがうと思いますが……」
夕方ちかくなり、下校の時間です。
「みんな帰ったけど、あいさつしてたから、明日も来るのかな? オレたちはここで今日のふくしゅうと明日のよしゅうだ!」
チビは勉強がすっかり好きになったようです。
この日は月曜日。
この学校は土曜授業がないので、金曜日で一週間は終わりです。
5
チビとネコとでかゴリラは、この3年生のクラスの授業を金曜の終わりまで受けました。
生徒たちが帰った夜はずっとふくしゅうとよしゅう。
こうして、字をおぼえ、人間のいろいろな生活やなにを学んでいるかを知ったチビは、お礼のメッセージをのこすのでした。
「べんきょう、すごくたのしかったよ。チビ、ネコ、でかゴリラ」
メモ帳とボールペンはだんだんとチビがさわりづらくなってきています。
霧のこうかがうすれているようです。
おそらく、もう人間にこれらは見えてしまうでしょう。
このメモ帳とボールペンをもっての勉強はこれ以上できそうにありません。
「これらがまださわれるうちに、もとに戻ろう。そうすればこれらはずっとさわれる!」
「「「つーりゅっく!」」だぁ!」
チビとネコとでかゴリラは、不思議な異世界にもどりました。
チビは水たまりで、あの小学校をうつし、勉強をがんばっています。
みんなもチビに負けないように勉強がんばろうね!
もしも冬の童話祭2025のテーマが「メッセージ」だったら 【題名】:教室にのこされたメッセージ 了
春夏秋冬の公式企画のテーマを入れ替えて作品を作ってみた(2024年版) 完結
この変な自分でやってるチャレンジ企画に読んで下さった方々には大変感謝です。
多分、オールジャンルの「春のチャレンジ」はこのチャレンジ企画のパターン表を埋めて行こうかな~、と思っています。
(すごい自分で自分の首を絞めている……)
たぶん、次は「夏のホラー」の作品投稿だと思います。
(去年の夏ホラー2024は、テーマが「水」ともとれるので、コピペして知らぬ顔で投稿しちゃおうかな、と思っています)
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