第八話 究極影法
「さて、俺もやりますか」
悠真がこちらへ向かって走ろうとする。
その瞬間、悠真の足元が爆発した。
技の効果をいち早く察知した悠真は空中を飛んで向かうことにしたが、
先ほど爆発した地点に吸い寄られる。
「さてと......」
玲が動けなくなった悠真の元へ近づき、額に指をあてた。
「遺物起動」
「あ、ああ....?」悠真の意識が戻った。
「ぐっああ...?」悠真が頭を抱える。
「記憶が戻ったか?」「なんで.....俺...こんな...」
悠真の頭の中に流れ込んだのは暴走状態の記憶だった。
「安心しろ。これでもう無意識になって暴れることはない」
「...なんで....あの時」
.................................................................................................................................
ある日の夜............
玲がコンビニから出てくる。
「はーあ......神崎先輩まだ帰ってこないのかな....」
片手にスマホ、片手にレジ袋を持ちながら彼は
本音を愚痴っていた。人と関わるのが嫌いな彼は
0級でありつつも任務を早急に終わらせるようにしていた。
悠真を育て上げる任務をだ。
その後ろで謎の男が玲に銃を構えた。
何も知らない彼に銃弾が撃ち込まれる。
「ていうか俺の仕事じゃないよな~」
「!?」玲に銃を構えた男は困惑していた。
その後も何発も銃を撃つ。だが全ての弾丸が彼の近くで横に反発した。
男は仲間を5人ほど呼び、銃を乱射した。
しかしそれも、全て玲には当たらなかった。
(なっ....)(もういい!あれを使うぞ!)
男たちは住宅街なのにも関わらず、影法を起動した。
「【影の解放】!」
「ダッサなんだそれ」玲が男たちの方を振り向く。
「「!?」」なんでもないようなふりをして実は気づいているようだった。
魔法陣のような影の機構から影をまとめたような光線が発射された。
「【引】」上空に暗い...いうなればブラックホールのような物体が現れ、
光線、男たち、地面を吸い込んだ。
「うがあああ!!聞いてねえぞおおお!」
「質問してもいいか?」玲は悲鳴なんか気にしないように
淡々としゃべりつづける。
「お前らどこの回しもん?」
玲がスマホで誰かと連絡を取る。
「いうわけねーだろクソ野郎....!」
「あっそ」玲がブラックホールの引き寄せを強くする。
男たちは仲間同士でぎゅうぎゅうになっていた。
「まて!しゃべる...しゃべるから....」
「じゃあ組織に....」「!」
玲が何かを感じ取る。
すると、路地裏の闇の中から影をまとったシルクハットの人間(?)が現れた。
「やぁ、君が0級の玲くん?」
「....なんだお前」「初対面でそれはひどくないかい?」
「お前がこいつらの頭か?」
男が空中に縛り付けられた人間達を見る。
「あーあー....やっちゃったね」
「ゆ...許してくださいボス......」男が玲の方を見る。
「こいつら僕のことなんかしゃべった?」
男が笑顔で問いかける。「うん、言うって言ってたよ」
玲は淡々と答える。
「あああああああ!!お前ふざけんなよ!!!」
「だまっててね」男の指からでた影の弾丸が男たちの喉を貫いた。
「ぐ...あが..」男たちの生気が消えた。あの一瞬で全員を殺してしまったようだ。
「殺しちゃっていいのか?」「もうこいつらはいらないからね」
男が笑いながら答える。
「さて、気を取り直して....」男がネクタイを締める。
「僕の名前は侠。君を殺しに来た。」
「はえ~」玲は聞き流すように返事をする。
キョウが少し冷めたかのように玲の顔を見る。
「その余裕の表情をいつまで持つかわからないよ?」
はあ~ と玲がため息をつく。
「しゃべってばっかないで早く撃って来いよ、中二病。」
キョウがとうとうこらえられなくなり、技を発動する。
「君にも もう用はない。〘千弾〙!」
キョウの背後から影の弾が数百個現れ、玲の方向へ飛んでいく。
玲はコンビニで買ったポテチを食べながら、一枚だけポテチを取り出し、
前方に投げた。
ポテチがバラバラになり影の弾すべてとぶつかりすべてを相殺した。
「なっ....」キョウは目の前で起きた出来事が信じられなくなっていた。
「い..いやポテチ...ポ...テ...」
キョウは混乱しつつも、今度は玲の背後に目を向けた。
後ろには一人だけ人が通っている。
「後ろがおろそかだぞ玲くん!!」
影の弾が後ろの人間に当たりそうになる。
「うおっあっぶね!!」その人間は手から影の幕をだし、弾丸を防いだ。
「あ、やっぱり悠真か」「なっ....」
キョウと玲の双方からは顔が見えなかったが、
影の弾丸を防いだ衝撃で壊れた電灯がついた。
顔がはっきり見えてくる。
キョウが目を開いて悠真をジロジロとみる。
「そうか...お前が......」
玲が悠真の方を見る。
(こいつ...もう影を操れるようになったのか...?早すぎる....)
平然と手から影を出した悠真に玲は驚嘆していた。
「.....そうだ」玲が何かを思いつく。
「悠真、お前コイツを倒してみろ」
玲がキョウを指さす。
「「は...はぁ!?」」
これには悠真はもちろん、キョウも驚いていた。
「ふざけるなよ....いくら影葬体とはいえ4級そこらの影法師が
僕に勝てるとでも......!?」
「いや、こいつは1級にした。」
「「え"っ」」
悠真には言っていなかったようで、若干引いているようだ。
「ふざけるのもいい加減にしてくれよ.....!
もういい殺す!!〘集中千弾〙!!」
数多の弾が悠真に集中して撃ち込まれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
悠真視点
影の弾丸が俺に向かって撃ち込まれる。
なんでこんな状況に........。
コンビニ行って帰ろうと思ったらこれかよ。
玲さんスマホいじってるし。危機感とかないんか。
呆れつつも俺は手の中から影の幕を出した。
「〘影盾〙!」
影の幕を大きめの盾に形を変更させた。
影の弾丸を盾がすべて防ぐ。
「なっ.....」
キョウとかいう奴が驚いてる。
俺も驚きだ。マナからちょっと教わっただけなのに.....
10時間前.....
「まずお前影への理解なさすぎるんだよ!」
「えー.....」
マナが俺に向かって怒鳴る。
「影ってよくわかんねえしなぁ,,,,,,」
言い訳をするとマナがため息をついた。
「簡単だよ!玲にも影について教わったんだろ?」
「そうだけど..........」
「じゃあいつも見てるこの影を移動させることはできるか?」
「いや無理だろ」
影って光からできてるもんだしなぁ......。
「じゃあ目の前の空気に輪郭線を脳の中で描いてみろ。
そうしたら段々黒いモヤが出てくるぞ。まあ何時間もやらんとモヤははっきりと出てこな...」「あ、できた。」「はぁ?」
マナがこちらを凝視する。俺の目の前には不安定に影の幕ができていた。
「やっぱりお前おかしいよ......」
「影はちゃんと使えるようになったのか、早いな。」
玲さんが感心したような表情で言う。
「え?ああはい.......なんとなくですが」
だがこれは不完全なんだろう。もっとしっかりとした影は....
「おい!!!」キョウが叫ぶ。
「なぜだ......情報では影がまだ使いこなせていないということだったぞ!?」
「コイツぁまだ使いこなせてねえよ」
玲さんが反論する。
「そういやお前に究極影法って見せたっけ?」
「え?いや....」
ウルトってあれか?ゲームとかで使える必殺技的な.....
「ちょうどいいや。意識のあるお前には見せてないんだったな。」
玲さんが手で掌印的なものを作る。
「よく見ておけよ、まあ前に使ったのとは別のやつだがな」
その瞬間玲さんの体から影力が溢れだした。
「〘究極影法・超重力〙」
玲さんの指に黒い物質が現れ、空中へと浮かび上がる。
次の瞬間、キョウが一瞬で黒い物質に吸い込まれた。
「なっ....!??」黒い物質はさらに上空に浮かび上がり、
周りの住宅地ごと吸い込み始めた。
「ちょ、そんなことしたら一般人まで.....」
俺が注意すると、玲さんは落ち着いた声で
「安心しろ。この後何とかするから」
黒い物質は約10秒間周りを吸い込み続けた後、
急激に小さくなり消滅した。
辺りは大惨事となっていて、更地が広がっていた。
「うわぁ.....」この後どうするというのだろう。
すると、何もない空間にガラスのようなヒビが入り、
空間が割れた。気が付くと住宅地は元の状態へと戻っていた。
「俺の究極影法は放つ前に仮想空間を作り出すからな。
周りへの被害を気にする必要はねえんだ。」
「へえ......」0級はこんなこともできるのか.....
かくして、俺は究極影法とやらを学んだのであった。
「.........」金髪の少女が一人自室の鏡の前に棒立ちしている。
その表情は何を考えているかはわからない。
「そろそろだ......」少女が小さい額縁に入った写真を眺める。
「そろそろ私もそっちに行くからな、リン。」
少女は鏡の前から去り、任務へと向かう。
つづく
読んでくれてありがとうございました!!
いや.....あの現実の方で忙しくてね?サボったってわけではないからね?