第七話 無意識
「起きたのか,悠真」「マナ......」
そこにいたのは、体中に包帯を巻いたマナだった。
だが.......
「どうしたんだその右腕」「うん?」
吹っ飛ばされたはずの右腕が包帯を巻いた状態で生えてきていた。
「いや、義手だよ。なんでも組織専用の武器でもあるらしい。」
「そうなのか...。その体はどうしたんだ?あの後何があったんだ!?」
「....」マナが目から光をなくした。何があったのだろう。
「よく生きて帰ってこられたな....。玲さんが助けに来てくれたのか?」
「....うん。」なぜかマナは俺と目を合わせない。
ついに俺は我慢できなくなった。
「....どうしたんだよ、そんなに暗い顔して」
マナがやっと目を合わせる。
「まぁいいか。あいつには言っとけって言われてるし」
「?」そのあとマナはあの後のことについて話し始めた。
................................................................................................................................
「.........」
なんでそんなことになったんだ?あの時は本当に無意識だった。
まだ信じられない......。本当なのか?それは.....。
「....玲さんは信じなくてもいいってさ。だけど....」
マナが俺の目を見る。
「使い方を学べ だってよ」
「.....」なんで神崎さんはちゃんと教えてくれなかったんだろう。
とにかく、もう二度とこんなことにならないように.....。
俺はノアをみる。「?」ノアが不思議そうな顔をする。
絶対に守る。そのために組織に入ったんだ。使い方なんて覚えてやる。
「まあ後心配なことがあってな....」「ん?なんだ?」
「いやぁ.....玲....やりすぎちゃわねえかな..」
...................................................................................................................................
「だから はい か いいえ で答えろっつってんだろジジイ!!」
「ヒイィ!!」
組織の上層部の部屋で怒号を飛ばしているのは玲だった。
新一年生の担当する任務に0級がいるわけがない。
それは組織が管理していて、間違えるわけがないからだ。
「お前らのどいつが!!影霊と手を組んでたかって聞いてんだよ!!」
玲が辺りを見渡すと、明らかにキョドキョドしている人間がいる。
玲はそれを見つけるとスタスタとその人間のところへ歩き、
壁ドンの要領で上司の後ろの壁を破壊した。
「ヒイィ!わ、私はお前らより高い身分だぞ!!
いつでもクビにできるんだぞ!?」「知るかボケ!!」
玲が微弱だが「痛い」電流を上司に流した。
「アイタタタ!!」「じゃあ誰とつるんでたか言えや!!」
「言います言いますからぁ!!」
その後その人間は取調室で(ほぼ拷問室)で全てを吐かされた。
....................................................................................................................................
「あ、もうこんな時間」ノアが時計を見る。
いろいろしゃべっていたら夕方になってしまった。
「じゃあ私もう帰るね」鞄を持ち、素早く帰ってしまった。
「....お前さぁ、ノアとどういう関係なんだ?」「えっ?」
マナがこっちを見る。
「別に...幼馴染ってだけだよ」
「それだけか?あいつ学校から帰ってきたら
直で病室に来てたんだぞ。てっきり彼女かなんかかと」
「ブフォ!」俺は思わず吹き出してしまった。
「そんなわけないだろ!」「そんなわけない、か。それはそれであいつ可哀そうだぞ。」
すると黒いスーツの男の人が現れた。
「あ、玲さん」「よお」
「さっき決まったことなんだがな、今日から俺がお前らの担任になる。」
「えっ?」「何だよ不満か?」「いえ...」
てっきり神崎さんが担任になるものかと.....。
ああそっか、出張行ってるんだっけ?
「....玲さん、俺、聞きたいことがあって....」
箱のことについてだ。神崎さんには教えてもらえなかった。
もしかしたらこの人も......
「ああ、わかった。」「えっいいんですか?」
「隠すようなことでもないだろ」
案外あっさりと教えてもらうことになってしまった。
「ただし」玲さんが俺を指さす。
「お前はもう二度とちゃんと生きていけないかもしれない。」
「えっ?」どういうことだ?まさか、使い方を間違えるとか?
...........................................................................................................................
一週間後。
玲さんに連れてこられたのは組織用の屋外訓練場だった。
「まず影の使い方についてだ。お前自分の影を見てみろ」
背後を見る。見慣れた影があった。
「お前「影に触れる」ことはできたんだろ?
その時と一緒のイメージで影を触れ」
影に触れる。すると、手が沈み、影は液体のようになっていた。
「よし、じゃあその影に入ってあそこの木陰から出て来い」
「えっ?」ていうかまず影に入るって....足からか?
影が動くんじゃねえか?
「大丈夫だ。お前がいま認識している影は地面に固定されている」
「えっなんでわかったんすか」「なんとなくね」
読心術でもあるのか....。
俺は木陰をイメージしながら影の中に足を踏み込んだ。
「うわあ!!」影に足から入ったはずが、
そこに見えていたのは反転していた世界だった。
「これが影の中...?」「違ぇわ、いつまで逆立ちしてんだ」
「えっ?」周りを見渡すとそこはさっき見ていた木陰だった。
「影法師は影と影を行き来することができる。
ノアが誘拐されたときにお前が見たのはそれだ。」
「へえ....」「じゃあ次。あの時のお前を呼び出す。
目をつむれ。」「は、はい」
俺は目を閉じた。....?なんか...瞼の裏に黒っぽいものが....
俺の意識はそこで途絶えた。
................................................................................................................................
「....来たかな」
悠真の頭に手を置き続け、あの時の悠真をよみがえらせた。
「..........」悠真の目が開き、こちらを見る。
だが、その目は完全に悠真ではなかった。
悠真はさきほどとは思えない速度でこちらへ向かってきた。
俺は悠真を反発させて止めた。
「やっぱりこいつはヤバいな」
斥力を固めて悠真にぶつける。
悠真がぶっ飛び、100Mほど先の壁にぶつかった。
「コイツがこの能力使いこなせるようになったらめんどくさいな」
ナイフを取り出し、手のひらを切った。
血が地面にこぼれる。
「〘究極影法・磁雷郭〙」
血が一気に地面に広がり、一つの大きな影となる。
「さて、俺もやりますか」
つづく