第五十八話 感情
「ショーすごかったね!」
ショッピングモールの中を歩きながら
ノアが目を輝かせて言う。
「ああ...そうだな。
すごいよなぁワイヤーアクションとか。」
明らかにモールでやるクオリティじゃなかったけど。
「ところで買いたいものは買えたのか?」
「えっ?」
ノアがこちらを見る。
「いや...なんか商品とかを見てるだけの方が多かったから.....」
「....あのさぁ悠真.....」
ノアが額に手を当てる。
...?なんか変なこと言ったか俺...?
「デートってもんは買い物を楽しむんじゃないでしょ!!」
「..........」
デート.....?
デート.........
「!!!!!!!!!!!!」
とんでもないことに気付いた。
そうじゃん。世間一般的に見たらこれは
完全に放課後デートじゃん。
まっっっっっっったく自覚がなかった。
「ご...ごめん....。デートっていう自覚がなかった....。」
「.....えっ!?わ...わたしてっきり....!!」
ノアの顔が赤くなる。
てっきりノアはデートって思い込んでたんだろう。
「悠真は....そういう気とかなかった...の.....?」
「いや....そういうわけじゃないけど.....」
ミスったなぁ.....。
だから俺はモテないんだろうな。
「ふーん....?」
「ごめんな。.......ノアはデートとか嫌か?」
「ふぇっ!?いや...嫌じゃないよ」
どうしようキモい男とか思われてたら.....。
そんなことを思いながら、
俺達はモールの道を歩いた。
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「んあ......?」
「あ、起きた」
知らない天井で目が覚める。
起き上がると、周りには鉄製の棚が
たくさん置いてある。
バックヤードか。
横にはリンとガイルが座っていた。
ってかそうだ。
「.........何分くらいたった!?」
リンに聞く。
二時間ぐらい寝てた気がする。
このままじゃ悠真とノアの行く先を
見守れない.....!!
「まだ5分もたってねえよ」
ガイルが言う。
「えっ?」
そんなもん.....?
「.....早く二人を追うぞ。」
ガイルに言う。
「ああ、そうだな。」
鉄の床から立ち上がり、
扉へと歩き始める。
「追うのは流石に野暮なんじゃなーい?」
リンが座り込みながら言う。
「え?」
「年頃の男女追っかけて見守ってんのは
プライバシー的に良くないんじゃないのって話」
「別に追っかけるわけじゃねえよ。
新しい刺客が来たらどうするんだよ」
「じゃあわかったよ.....。」
リンがため息をつきながら
右手を出す。
「......?」
リンの右手から小型ドローンが3つ出てくる。
「このドローンには探知機とカメラがついてる。
カメラにはモーションセンサーも付けてる。
さらに私と同等の知能を持ったAIも搭載してる。
これでノアと悠真と暗殺者の行動と位置はまるわかり....。
そして!ここからが本番!
暗殺者の端末にはノア、または悠真の
顔写真がある。それを全て別の写真に入れ替える。
もちろんカップルのね。
これによりノアと悠真は死なない!
他のカップルを犠牲にね!」
リンがそう言い放ちグッドポーズをする。
「いや一番倫理観に欠けてないそれ!?」
思わず突っ込む。
いくらなんでも一般人を犠牲には.....。
「ノアと悠真だから許してたけどさ....。
私.....リア充嫌いなんだよね.......」
「完全に私情じゃねーか。
てかふざけてる場合じゃないんだぞ。」
「はぁ.....しょうがないな.....。」
今度はリンがため息をつきながら
手を自身の横に出した。
手から泥のようなものが流れ落ちる。
泥は三つに別れて人型となった。
「ドローンで探知した暗殺者に
この人形で畳み掛ける。
この人形は勝手に増えたり減ったりするし、
悠真とかと変わらないくらいの戦闘力を持ってるよ。」
「最初っからそうしろよ.....。
まあこれで心配事はなくなったな。」
まあこれで後は大丈夫。
後はあの二人次第だな。
「つーかマナよぉ....」
ガイルが何か言いたげだ。
「何だよ」
「お前は悠真にそういう感情湧かねえのかよ?
一応タッグとしてやってんだろ?」
......................。
「?」
無。
圧倒的、無だ。
アイツがノアと上手くいってるだけでも
良くわかんねえのに、
そういう感情.....?
「........。」
「....何だよその顔は?」
「マナアンタ今すごい顔してるよ」
ガイルとリンがドン引きしている。
「え....?なんだろう....。
何の情も湧いてこない.....。」
「何の情も!?
それはそれで可哀想じゃない!?」
「な....何に近い感覚なんだ....?
お前にとって悠真は.....。」
ガイルに訊かれる。
「うーん....。」
しばらく考える。
「あっ」
「「何!?」」
「銃!銃だな!
セーフティかかってて安心だが、
たまに外れて暴発してるし、
割と役に立つしな!」
「「じゅ....銃...。」」
二人の顔のシワが濃くなったような気がした。
つづく




