第三話 同級生・初任務
「というわけで、一旦組織に帰ってきたんですけれども~」
だが、よく見ると玲さんはいない。「玲さんはどこへ?」
「ああ、終わった後いろいろ後処理とかあるからそれに同行してる。
そんなことより…」神崎さんがこちらを見る。
「明日から君には対影影法師特殊警察附属の教育機関に通ってもらう。
家にご家族はいるかい?」俺は少し口をごもらせた。
「…いません。昔死んだので…」俺がそういうと神崎さんが申し訳なさそうな顔で
「ああ、そうかい。すまないね。組織の寮っていうか社宅に住んでもらうことにしようと思うんだ。」
「ああ…わかりました。大体いつ頃…」「明日!頑張って荷造りしてね」「えっ」「じゃあ!」
神崎さんがそういうと地面が割れ、俺の部屋に落とされた。っていうか家知ってるのかよ…
「明日ここでー!」といって天井からメモを落とした。
「…やるか……」ていうか教育機関?っていってたが新しい学校に行くのか…。
…もういつもの日々には戻れないのか。
あんなにバカ騒ぎしてた日常も、乃亜との帰り道ももう戻ってこないのか?
…でも人を助けることはできる。嘆いてなんかいられない。この力を使いこなせるようになるまでは。
ーーー数日後。
「やあ。昨日はよく眠れたかい?」「…どうでしょう…」
色々ありすぎて眠れなかった。
「はは、愚問だったね。ごめんごめん」
「…それにしてもなんでこんなところで待ち合わせなんですか?」
昨日渡されたメモに書いてあった集合場所はここ、東京のハチ公前だった。
「いやー実はね、もう一人新しく編入生が来るんだ。あ、ちなみに編入って言っても君たち以外生徒0ね。その子がわかりやすいようにここにしたんだ。」
ああ、それで東京か。まあ確かにわかりやすいっちゃわかりやすいけど…こんなところで亜空間移動(?)
みたいなのできんのかな…?
「あ、ちなみに学校は東京にあるからね」「え?」「?どうしたの?」
「いや、てっきり異空間にあるのかと…」「いや、それはあくまでもアジトの存在を隠すためだ。
現実世界はいろいろと調査が入ってしまうからね。本部は異世界の複雑なところにある。
でも学校なら別に調査が入っても問題ないだろう?」
「なるほど…ん?たちって?」「えっ?ああ…あっ来た来た」
神崎さんの視線の方を見ると、キャリーケースを引きずってこちらへ歩いてくる金髪の少女が見えた。
その子はこちらを見ると「・・・え”っ」「えっ?」「…神崎さんこの人は?」
「その子は今回君と一緒に学校に編入する子。自己紹介してあげな」神崎さんがこちらを見る。
「え、えーと阿部悠真です。17です」「で?私一人だったんじゃないんですか?」
…聞いていない……「ほら、悠真君が可哀そうでしょ、反応してあげな、自己紹介もしてあげて」
「逆に傷つくんですが…」「…星野魔奈、17。…よろしく」
「ああ、よろしく」「ごめんね、この子人と話すの苦手で…」「別に苦手ってわけじゃないですけど…」
…人間不信なのか?俺に対してのどことない嫌悪感を感じる…。
「じゃあ学校に行く前に東京を観光しにいこっか!」「え、やった!」
そう言ったのはクール感を出していたマナだった。「えっあっ…」
すぐに表情が元に戻った。「もう~マナちゃんったら、もうちょっと素直になってもいいのに~」
「…う」お前ら、ツンデレが近くにいていいなって思ってるだろ?いま4Mディスタンスされてるからね?この会話があったうえで4Mディスタンスだからね?
「…というわけで、新宿の廃工場にやってまいりました~!」
「「帰ります」」俺とマナの考えが一致した。どう見ても心霊スポットだ。
「いやーこういうところは自〇スポットで有名だからね。影霊も沸くよ」
初任務がこれか…。…というか…
「神崎さん・・・俺ってどうやって戦えばいいんですか?」
「ん?ああ君はこれを使ってくれ」
そう言われて渡されたのはとても小さいレールガンのような銃だった。
「大丈夫!それ引き金引くだけで使えるし…」神崎さんが銃の横のボタンを押した。
すると、銃の形状が変化し、剣のような形になった。
「まあ短射程と長射程を生かして戦ってね」
「じゃ、二人で頑張ってねー」
バタン。俺たちは工場の中に入った。
「で、お前、実戦経験ねぇのか?」「うぇっ?」
意外とこういう男っぽい口調なのか…
「ない。これが初めてだよ」「そうか。じゃあどういう箱だ?」
「…箱?」俺がそういうと、マナは信じられない、という表情で俺を見てきた。
「お前…組織に入ったのにそんなことも知らねぇのか・・・」
あー、、、前に会った男がなんか箱とか言ってたな。
「じゃ、二手に分かれて影霊を祓っていくか」
「え?一人で大丈夫なのか?」「あー、お前と違って実戦経験あるから。」
マナはそういって別の方向へと行ってしまった。
「えー…」「・・・!!」
後ろを振り向くとこの前も見たようなボール状の影霊がいた。
「あー、初討伐はこいつか・・・」
ヒュン。「うあっ!?」ボール状の体から黒い管が生えた。
「変形すんのね…」俺は銃を構える。
「オラァ!」銃弾が影霊の目に直撃した。
「ウオオオン!!」影霊がうなった。「ここ押すんだっけ!?」
俺は銃を剣に変形させ、影霊にとびかかった。
ザクッ。「もういっちょ!」ザアアン!剣が影霊を切断した。
「ふう。影霊討伐完了と…」
なんか箱を吸収する前より体力が上がってる気がする…
「箱って結局なんなんだ…?」
マナ視点…
「あーあ......なんで東京まできてこんなことを…」
私は虚無に愚痴っていた。「しかもなかなか影霊に会わないし…あいつの方は影霊やれたのかなあ…
…!」何かの気配を察知し、私は後ろに下がった。
「【影よ・曝け出せ】」「!!あ"a#」
やっぱりいた。影霊だ。「【光の炎】」
箱の力を使い、影力を手にまとった。
「くらえ!」手から矢が飛び出し、影霊に命中した。
「ウゴオオオオオ!!」
「ふう…」
コイツで終わりっぽいか。
「た、助けてそこのお姉ちゃん!」「!!」
声のした方を見ると6歳ぐらいの男児がこちらへ向かって走ってきていた。
「どうした!?」
男児に近寄ろうとすると、男児の影から人型の影霊が現れた。
「はーい、動かないでねー。」
影霊は男児の首を絞めてナイフのような手を頭に近づけた。
「君…影法師?」「…ああ…」
しまった。油断した。人質をとられてしまっては、攻撃ができない。
「クッソ・・・」どうする・・・?
~外~
「やあ、玲くんかい?」
「いやそうですけど…今任務中なんですよ。」
「一級の任務でしょ、片手でできるよ。」
「まあそうですけど…なんの用です?」
「今回入った新人二人だけどね、どっちもすごい才能だ。」
「でも、男のほうは自分の力をしっかり認識していないようですけど」
「この後教える…つもりだけど、あれなら自分で使いこなしちゃうかもね」
「で、もういいですか?」「うん、いいよ。あと君の銃借りたからね」
「え"っちょっ」プーーーーー..........
「さて、二人とも頑張ってるかな?」
「…」俺はいま、目の前に広がっている影の壁を見つめていた。
「ここだけ入れねえんだよな…なんなんだろ」
影のようだから壊せそうだが、コンクリのように固い。
「どうやって壊すか........ん?」
俺は自分に影ができていることに気づいた。
ここは室内だし、光もない。ということは......
「.....これが俺の【影】ってことね」
マナ視点…
「で?どうすんの?君の箱くれるのかくれないのか」
「だから…いま取り出してんだろ....うあ"っ.....」
箱の取り出し方は知っていたが、実際にやってみると苦痛だ。
腹と胸の間の空間から影力を使って「箱」を取り出す。
肉体をえぐられているようだ。
「うっああ!!」
やっと箱が取れた。「とったぞ....人質返せ.....」
「あーありがとう!でもねぇ....もうこの子死んじゃってるんだよねえ.....」
「は?」「これ結構前に殺しちゃったガキ!俺の影法は死霊術なんだよ~」
「じゃあこれもらうね」「ちょっとまて....う"っ!?」
高速で影霊が迫り、腹に蹴りを入れられた。
「チッ......クソが....」箱をとられた。
「いやー箱回収できてよかったー!あ”?」
影霊を見ると、腕が切断されていた。
「なんだよ!! !?」
次の瞬間両腕が切り取られた。
「人型の影霊もいるのか......」
暗闇から出てきたのは悠真だった。
「なにやってんのお前...?」
悠真は床にヘタヘタと座り込んだ私を見た。
「しょうがないだろ...人質とられてたんだから」
「で?その人質は?」「......死んでた」
私はうつむいた。どうしてあれが死体だと気づけなかったんだろう。
もっと早く来てればあの男の子は助けられたのか.....
「まあいいや。はいこれ」「!!」
悠真の手のひらにのっていたものは私の「箱」だった。
「お前......あの一瞬で取り返したのか?」
「ん?ああ.........」
悠真視点
うん.......影の力ってすげぇ.......
うまく使えば移動速度も上げられんのか。
「ありがとな。あとは任せろ」
「え?できんの?」「できるよ」
そう言いながらマナが箱を手のひらにのせて両手でたたいた。
箱が液体となってマナの体に入っていく。
「そうやって取り込むんだな........」
ガシャン。「!!」
「お前ら......よくもやってくれたな.....!!【流磁砲】!!」
影霊が影を弓のようにして構える。
「お返しだ。【創造の箱、〘界・電衝〙】」
マナが影の矢を構える。
「ハァ!!」黄色い光が筒状となって影霊を葬った。
「!!!?」
影霊が構える間もなく........
「......ていうか、その詠唱なんなの?」
「ん?ああ私の箱の力は〘魔術〙なんだ。魔法にも魔術にも詠唱は必要だろ」
ああ......いよいよファンタジーっぽくなってきたなぁ。
~外~
「おかえり!二人ともお疲れ様!」
「お疲れってか......あんなのいるなんて聞いてないんですよ!!」
「あはは、ごめんごめん。でも、君たちだから頼んだんだし、君たちだから今生きてるんだよ。」
「で、神崎さんに一つ聞きたいことがあって....」
「うん?なんだい?」
つづく
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