第二十五話 0級
「....廻星の反応がなくなった...。
死んだか...?」
影捌賢者のリーダーが言う。
「やっぱりダメだな、あんな雑魚に全員殺されてるようじゃ、
アレには勝てない。」
鉄塔の上に立っていたリーダーは道路に
降りる。巨大影霊が現れたことにより、
人気がなくなっており、車一つ通っていない。
「だがこれでいい。少なくともこの世界の人間に
”影”という存在を知らしめることはできた。
あとは計画を進めるだけ....」
「何の計画のことだぁ?」
「!?」
リーダーが気づくと目の前に法師が立っていた。
「何だお前は....」
リーダーは見ただけでただの人間ではないことに気づいた。
放っている影力が半端でなかったからだ。
「俺は0級法師だ。お前の方がなんだ?
一応この事件の主犯格ってことに調べはついてる。」
「...いいだろう。俺の名前は骸雫。
影捌賢者のトップだ。」
「へえ。影捌賢者とやらが何かも知らねえけどな。」
「.......」
骸雫は相手に勝てる自信があった。
相手の影力より自分の影力の方が勝っていたからだ。
「ああ、俺も名乗った方がいいか?
俺の名前は玲。組織の”特別処理課”の0級って言えば通じるか?」
「............................!?」
その一言で完全に骸雫の自信を壊した。
聞いたことがある名だったからだ。
(黒髪.....青い目.....青い服...白いベルト...コイツまさか...!?)
「お前....玲...だと...!?」
骸雫は動揺を隠せなかった。
なぜなら以前と同じ気配を感じてしまったからだ。
「い....いや..だとしても俺に勝つのは不可能だ。
お前は三年前のあの事件で能力の8割を失った。
俺相手に手も足もでないだろう。」
「なんだぁ?さっきから一人でごちゃごちゃと.....。
いつの話をしてやがる。...さっさとかかってこい、三下。」
「.....クッ!!」
骸雫が地面を足で強く叩く。
すると広範囲の地面が影で覆われ、影を纏った骸骨が大量に
這って出てきた。
(この骸骨.....触れれば一瞬で生気を持ってかれるな)
触れずとも玲は気づいていた。
「【"荒廃" ”野を焼け” ”埋め尽くせ”
”記憶” ”雨” ”焦がす酸”】」
(詠唱....!!)
「【魔骸真間】!!」
玲の周りが影と骸骨で埋め尽くされる。
常人__というか大抵の法師であればこの時点で命を失っていただろう。
骸雫の出す骸骨には触れれば相手の能力・強さ関係なく
生気を奪い取るという力があった。
(余裕で死ねるなこの能力。恐らくコイツも0級.....。
しかもかなり上澄みだ。αβの十本指に
匹敵するぐらいには強いな。)
骸骨でできた影は一つの球となり
玲を完全に囲んだ。
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(玲視点)
視界が真っ暗になる。
すると、影と骸骨でできた球が膨張し、広がる。
無限に続くような暗闇が周りへ広がった。
周りのビルにも浸食していく。
床には骸骨と影が蠢いている。
結界の類か。
「やはりこれでは死なないか.....。
だが元より勝とうなど思っていない。」
「.......?」
どういうことだ?
「今から貴様をこの空間に封印する。
貴様さえいなくなればこれからの計画もうまくいく。」
「....その計画とやらも気になるが、
それはお前の部下に聞こうかな。
お前が言ってた影捌賢者とやらの一人を俺の仲間が捕まえたらしいぞ。」
「っ....死んでいなかったのか。」
「死んでた方が都合良かったか?
悪いがここで死ぬのはお前だ。」
足で結界を叩く。
その瞬間、結界が割れ、
影と骸骨が霧散し周りが元の背景へと戻る。
「なっ....!?」
「対策もしてなかったのか?」
骸雫に問いかける。
さーて....どうやって殺すか。
別に苦しませて殺したいとかではない。
だが、こんな力持ってるやつが普通に死ぬとは思えない。
どっちかというと「どうやったら殺せるか」だな。
しゃーない。ゴリ押しだな。
指を鳴らす。
両側のビルが土地から浮き上がり、
骸雫へ向かって吹っ飛ぶ。
「なっ.....!」
ビル同士が骸雫を挟んでぶつかる。
だが数秒後、ビルを粉々にして中から
骸雫が出てきた。
影で壊したか。
「どんな攻撃も俺には効かない。
効いたとしても俺が死ぬことはない。
お前は...いやお前たちは俺の目標達成までの工程を指をくわえて見ていることしかできない!!」
「目標ってなんだよ?」
「...まあ教えてやらんこともない。
俺の目的、夢はただ一つ。全ての箱を集めて世界を支配することだ。
そのために手段は選ばない。そうだな.....工程の途中にはあの娘......
お前の妹も必要だったなぁ?」
「.......クソ野郎が。悪ぃが、お前は俺には勝てない。
世界支配とかいう幼稚園児が考えそうなことを目標にしてる時点で、
お前は俺には、俺たちには勝てない。
後お前、さっき仲間が死んでないことに戸惑って....
残念そうにしていたな。自分のため仲間を切り捨てるようなやつは
そもそもリーダーにゃ向いてねえよ。
それが悪役だとしても正義の味方だとしてもだ。」
「お前等が正義の味方とでも言うのか!?」
「俺らが正義の味方なわけがねえだろ!!
何百人、何千人の命切り捨てて来たと思ってんだ。
今からお前を殺す理由は”今後邪魔になるから”だってよ。
まあ確かに、それぐらいの理由で十分だな。」
先ほど飛ばしたビルに注目する。
よく見ると、ビルが風化しているように見えた。
あの生気を吸う影は無機物にも作用すんのか。
多分、こいつは死なない。
ならどうするか。こうする。
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(神視点)
玲がしゃがみ込み、手のひらで地面に触れる。
その瞬間、地球全体にほんの一瞬だけ巨大な揺れが起こった。
「なんだ....?」
骸雫は何が起こったのか理解できていなかった。
だが、次の瞬間、骸雫は空に向かって落ちて行った。
「なっ.....!?」
まるで地上と空が真逆になったようだ。
骸雫は何とかして宙に体を固定しようとしたが、無駄だった。
数十秒後、骸雫はオゾン層を抜け出し、
宇宙に投げ出された。
(....まずい....!!)
骸雫は地球へ戻る手段も、影の世界に戻ることもできなかった。
影の世界へ戻るゲートを作成するには詠唱が必要だからだ。
だが、宇宙空間には酸素がない。
無重力で動くエネルギーを作る能力もない。
骸雫はこれまで大量の生気を吸ってきたため、死ぬこと
ができなかった。
骸雫は長くあがき続けたが、
その内に動くのをやめ、生気が尽きるのを待った。
無尽蔵に存在する生気を。
この一瞬で何が起きたのか。
玲が手を地面に__地球に触れた瞬間、
地球の自転が0.03秒止まっていた。
地球の自転が止まると自転にかかっていたエネルギーが
慣性の法則で吹っ飛ぶ。地球上は大混乱になる。
玲はその被害を最小限に抑えるため地球に乗っている慣性のかかる対象を骸雫のみに決定し、勢いを加速させ宇宙へと突き飛ばしたのだった。
「.....三年前か。ったく、懐かしいな。
....やっと終わったな。本部に連絡して早く帰るか。」
玲の能力は、まだ闇に隠されている。
つづく




