あくまが俺の元に来る!
きょうもねむれない。
まいにちまいにち、いやなことばかりがむいしきのうちにあたまのなかにながれこみ
きがつけばむねがくるしくなり
きもちわるくなったのちになぞのぜつぼうかんにさいなまれる。
これはきっと、ぼくのこころのなかにひそむあくまのせいだ。
ぼくのあくまはただのあくまではない
「かんぺきしゅぎ」や「せきにんかん」
「すべきしこう」をかねそなえた
ぼくをねがまじめなくろうにんにさせようとしてくるしませる、くろうやどりょくのみがすばらしいなどという
おそろしいかちかんのおしつけをむりやり
してくる、がいあくなあくまなんだ。
ぼくがねむれないのはそいつのせい
いつもよるになるとあらわれてくるから
ぼくはがんばってたのしいことをしておいはらおうとしても、ぼくがむりをしていきぬきをしようとしているのがあくまにばれてしまって
いつもあくまにねかせてもらえない。
そんなあくまのかおはどこかやさしそうにほほえんでいて、それがきにくわない
ぼくははやくこころのふたんをへらしたいのに、あくまはぼくをみてしんぱいそうなかおをしている
どうして?どうしてそんなにかなしそうなかおをしてるの?
ぼくは、もしかしたらかわいそうなこなの?
そんな、うそだ。
ほくは、だってぼくはいままでたくさんがんばって、たくさんむりをして、たくさんくるしんで…なきたいときもたくさんあって……
あれ?
どうしてぼくは、こうなってしまったんだろう
なみだがとまらない。
こきゅうがみだれる、むねがいたい
のどがつっかえるようなかんかくをおぼえてはなんどもおえつしてしまう。
つらい、ひたすらにくるしい
いまのじぶんは、このせかいにいてもいいそんざいなのかな、せっかくずっとがんばってきたのに、むくわれないのかな
ずっとずっと、くるしいきもちのままいきていくのかな。
はてしないぜつぼうかんにのまれて
なにもできないできないむりょくなじぶんがどうしようもなくつらくて…
そんなぼくがこえをおしころしてないていると、あくまはぼくのあたまをそっとなでながらこういった
『もういいんだよ、ヨナカくん。
君はずっとがんばって生きてきたんだから
今からでも好きに休んでいいんだよ
周りの目なんて気にしないで、自分の心に正直になって。』
はじめてだ、そんなことをいわれたのは。
だっていままでぼくは、なにをやってもみんなからみとめてもらえなくて
こんなものはできてあたりまえといわれたり
できそこないだとか、いきはじだとか
そんなことばかりをいいつづけられながらいきてきたから、じふんがむりをしてまでがんばっていたことにきづかなかった。
なにをしてもだめだといわれたから、ひたすらじぶんなりにいろいろやってみて
だめだったらつぎのことをかんがえてどりょくして…
きがついたらつかれきった大人になっていた。
……ははっ、馬鹿らしい。
見下されない為に、誰かの為に
今まで沢山頑張って自分を蔑ろにしたせいで、今の僕はここまで落ちこぼれた。
死にたい、ただひたすらに
惨めだ、何も出来ずにこの部屋で一人で引きこもって…最低限の生活だけをして死んだように布団に潜るだけの日々
本当……僕は無様だ。
『そんな事ないよ、ヨナカくんはね
休まずに頑張ってきたんだから
今はゆっくり休まないと。』
…うるさい
『君はあまりにも真面目過ぎるんだ
いい加減自分の心に正直になりなよ』
…ッ!!
そんなの分かっt…
『ヨナカ!!!
私はずっとお前の事を見てきた
だからこそ言える事がある
ヨナカ、君はね…
ただ頑張ってきた訳じゃない、責任やプレッシャーに押しつぶされながらも必死で自分を変えようと無理して頑張ってきた
だから今の君はそんなにやつれて衰弱しきっているんだ
見てみろ、今の自分の顔を。』
彼女にそう言われ、近くにある鏡を手に取り自分の顔を見てみた。
…なんだこれは
驚いた、前に鏡を見たときはこんな顔じゃなかったのに
今では過去の自分の見る影もない。
目の下には酷いクマができており
目は死んだ魚のようで、表情はまるで生気を感じない
それどころか肌の血色も悪く、青白くなり
前のようないきいきとした自分とはかけ離れていた姿だった。
『…分かったか?これが今の君の姿だ。
君からしたら休んでるように見えるかもしれないが
私からすれば、君は自分を内側から無意識に痛めつけているようにしか見えない
だからこれ以上…無理はしないでくれ
もっと自分の為に好き勝手に生きてくれよ…』
そんな悪魔の発言に僕はハッとさせられた。
…そうか、俺が悪魔だと思っていたのは悪魔なんかじゃなかった。
この悪魔は、ただの悪魔なんかじゃない
心優しい、思いやりを持った素晴らしい心を持った悪魔だったんだ
どうやら、俺の駄目だと思って塞ぎ込んでしまう俺の心の方が悪魔だったんだ。
………ごめん、今まで俺は
自分を偽ってまで無理をして心まで休めきれていなかった。
今はただ、少しずつ自分に優しくなれるように頑張って…いや、ゆっくり休むことにするよ
ありがとう、悪魔。
―今日も今日とて、俺の元に悪魔がくる
そんな日々も悪くない
そう思いながら俺は、今日も自分に優しくできるようになるために生きる
いつか、自分に自信が持てるその日まで。
『…良かった、また前みたいな君に戻れたみたいで。』
悪魔はそう言うと、眼の前からフッと姿を消し、僕はそのまま深い眠りに落ちた。