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プロローグ 満月とGペン

 23時。

 薄汚れた廊下に上履きが触れる。

 一か月ぶりの実体化だというのに、制服には埃一つ付いていない。

 屋上へと続くドアの周囲は、外の街の灯りと月明かりに照らされて少しだけ輝いて見えた。

 ドアに近づき小さな窓から外を覗いた。特に意味なんてない。

 近くにある掃除用ロッカーは古いので開けるとキキ、と音がした。

 私はそこから用紙と道具を手に取り、腰を下ろす。

「じゃあ、描くかっ」

 静かな校内にペンが走る音だけが響いた。

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