たった1冊で
「どうか、警察にだけは⋯⋯!」
気付くと僕は、〈本〉とデカデカとプリントされたエプロンを着た大男に情けない声で何度も懇願していた。
「とりあえずさっきカバンに入れたもん出せ」
僕はカバンに手を伸ばし、数分前に放り込んだ分厚い参考書を取り出した。
「2860円。すげぇ大金だよなぁ。まぁ、金額の問題じゃないんだがな」
お金がなかったんだ。
でも大学には行かなきゃならない。金が安い国公立に行かなきゃならなかったんだ。そのためには勉強が必須だった。
だから、1冊だけ、盗んだ。
それが今見つかってしまった。
「こんな分厚い参考書をパクろうとするってことは、お前受験生だな?」
「はい⋯⋯」
この世の終わりだと思った。
「万引きなんてバレたら、テストで点数取れても関係ないよなぁ?」
大男が僕の座っているパイプ椅子の足を蹴りながら言った。
確かにそうだ。いくら点数が良くっても犯罪者を歓迎してくれる大学なんてあるわけがない。
「ですので、どうか警察だけは⋯⋯」
繰り返し懇願した。このままでは未来が暗いものになってしまう。
「そうだよなぁ。警察は嫌だよなぁ。実は俺もそう思ってたところだ」
大男が哀れなものを見るような目で言った。
一瞬、光が見えた気がした。
「警察なんて、甘っちょろいもんなぁ」
睨まれたショックで少しだけチビってしまった。光なんてどこにもなかったんだ。
「お前、利き手どっちだ」
「えっ」
「どっちだ」
「えっと⋯⋯」
考えなければ答えられないほど、頭が回っていなかった。
「右です」
「じゃあ、左の人差し指置いてけ」
この言葉が本気かどうかは、彼の目を見れば一発だった。
「⋯⋯⋯⋯」
答えるのが怖かった。
確かに万引きで捕まって進学出来なくなるよりはマシなのかもしれないが、本1冊の代償にしてはあまりにも重すぎるのではないだろうか。
「お前、『たった1冊で』なんて思っちゃいねぇだろうな」
心臓が震えた。
即座に反省した。
「で、どうするんだ? 俺は警察を呼ぼうとは思ってないんだ。だからお前が指をここに置いていってくれたらそれ以上はなにも言わねぇ」
指を落とすって、どれくらい痛いんだろうか。
「あの、麻酔ってありますか⋯⋯?」
「バカかお前は。ここは本屋だぞ?」
「すみません」
ナイフを関節の所にあてて、上から重いものでトン、とすれば簡単に切れるというのをどこかで見たことがあるが、簡単でも痛みはとんでもないはずだ。
「んで、どうする?」
「それは⋯⋯」
「はぁ。お前それでもキンタマついてんのか? もういい、ちょっと待ってろ」
そう言って大男は部屋を出ていった。
僕が全然腹を決めないから警察に電話をかけに行ったのだろうか。もしそうなら、僕は終わりだ。大学受験なんてやってる場合じゃなくなる。
でも、案外その方がいいのかもしれない。
指がなくなったら一生そのままだ。人差し指なんて1番使うところだし、なくちゃならない存在だ。
そんなことを考えていると、ガチャリとドアノブが音を立てた。
ロープを持ったさっきの大男と、3ヶ月前から付き合っている彩香が入ってきた。
「え、なんで!?」
さっき別れて家に帰ったはずなのに。
「優介くん⋯⋯」
彼女は怯えていた。この大男が怖いのだろう。
「こいつ、入口んとこにずっといたんだよ。監視カメラに映ってた」
僕が出てくるのを待っていたのだろうか。
ごめん彩香、僕が万引きをしたばかりにこんなことに巻き込んでしまって⋯⋯
「座れ」
彩香は言われた通りパイプ椅子に腰掛けた。
「こいつが俺の店で万引きをした。警察には通報してほしくないと言うんだ」
「万引きを⋯⋯?」
彩香が困惑している。
「それでな、その代わりに指1本置いてくのはどうだって提案したんだがどうも優柔不断でな、お前を人質にして手っ取り早く済ませようと思ったんだ」
そう言って大男は彩香の手を取った。
「あの、彼女は関係ないので帰してあげてください。指はやりますから」
彩香の前でそんなグロテスクなものを見せるわけにはいかない、巻き込むわけにはいかない、という思いから出た言葉だった。
「泥棒の分際で俺に意見するな。黙って座ってろ」
大男の圧はすごかった。
本1冊持ち出しただけで泥棒と呼ばれてしまうのか⋯⋯
結局彩香は両手首を椅子の後ろで縛られてしまった。抵抗はしていなかった。大男が怖かったのだろう。
「僕は腹を決めました。やります。なので、どうか彼女は傷つけないでください」
人質を取られてやっと頑張れるようじゃ僕もダメだな⋯⋯
「意見するなって言ったよな? ていうかお前さ、そんなに彼女が大事なら今すぐ俺に掴みかかってこれば良いんじゃねぇの?」
こんな大男に勝てるはずがない。
「分かりました、もう言いません⋯⋯」
「ああ、それでいい。あんまり俺を怒らせてくれるな。⋯⋯ちょっと待ってろよ」
そう言って大男はまた部屋を出た。
彩香と2人きりになれた。
「ごめん彩香。僕、万引きしちゃって⋯⋯」
「ううん、気にしないで。間違いなんて誰にでもあることだよ。大事なのはこれからだよ」
彩香は天使のようだった。そして、肝が据わっていた。
「でも、なんでここに?」
「こっそり後ろついて来たら本屋さんに入ったから、出てきた時にびっくりさせようと思って」
やっぱりそうだったんだ。
「ごめん⋯⋯」
「いいのいいの。それより、本当に指切る気? 素直に警察に言った方がいいよ」
ガチャ
「待たせたな」
大男が入ってきた。手には小さなノコギリのようなものが握られていた。
「ほらよ」
ノコギリを渡された時、初めて名札が目に入った。店長と書いてある。
ノコギリは包丁と同じくらいのサイズで、刃が半分ほど錆びついていた。
これで指を⋯⋯
「あの」
彼女が口を開いた。
「いくら本人が了承したとしても、指を切らせるなんて犯罪ですよ」
「んなこと分かってるよ。泥棒の女は黙ってな」
「ダメです。そんなこと許されません」
しっかりと店長の目を見つめて彼女が言った。なんて強い女性なんだと思った。
その時だった。
「うるせぇ!」
そう言って店長が彼女の頬を張った。
「やめろーっ!」
僕は我を忘れて店長に突っ込んでいた。
が、すぐに投げ飛ばされ、腰をぶつけてしまった。痛い。
「優介くん⋯⋯!」
彩香が心配そうに言った。
「なんでここまでするんですか!」
そう言って彼女が店長を睨んだ。
店長は呆れたような顔をして僕を見た。
「やっぱり俺のこと知らねぇんだな」
知らない⋯⋯? どういうことだ? 前に会ったことがあるのか? いや、もしそうなら「知らないのか」ではなく「覚えていないのか」と言うはずだ。じゃあ一体⋯⋯
「ほら、早くやれよ」
そう言って店長が机の上にあったノコギリを僕の腹に向かって投げた。
明らかに手入れのされていない、錆びたノコギリ。刃の一部が変な方を向いている。
こんなの、出来るはずがない⋯⋯
「ちっ、ウジウジしやがって⋯⋯」
店長は不満そうにこぼすと、彼女の制服のボタンに手をかけた。
「ちょっと、やめてください!」
抵抗する彼女に構わずボタンをひとつずつ外していく店長。思わず凝視する僕。
「おいお前、やめてほしけりゃ早くノコギリを持て」
僕はすぐに手に取った。
「引け。根元から全部いけ」
言われるままに指の付け根に刃をあて、歯を食いしばった。ノコギリの刃は冷たかった。
「引け!」
店長の迫力に思わず鋸を引いた。
皮膚がぶちぶちと裂け、手のひらに赤い筋が下りた。
痛い。ダメだ。
怖い。
血が出る。
汚い。
痛い。
怖い。
痛い。
痛い。
痛い。
ダメだ。
「おい、手が止まってるぞ」
涙が溢れてきた。
自分の置かれている状況が絶望的すぎて、泣くしかなかったのだ。
「⋯⋯チッ。もういいよ」
店長はそう呟いて、また彩香のシャツに手をかけた。
ボタンを全て取り、ブラをずらして、彼女の胸をあらわにした。
後ろで手を縛られているせいで、胸が前に突き出されていた。
初めて見る彼女の裸に、少しだけ反応してしまった。
「まだやらねぇのか! やらねぇならコイツを犯す!」
そう言って店長は彼女のスカートに手を掛けた。
「やります! やりまぁす!」
僕はそう叫んで、鋸引きを続行した。
ノコギリを握り直し、力を込めて引く。
ボロボロの刃のせいで、切るというよりは削ぐ感じに近かった。
絶叫を抑えられないほどの激痛に悶えながら、何度もノコギリを引いた。
人差し指の付け根からは錆の混じったコンビーフのような屑肉が次々と溢れ出し、ボトボトと音を立てて血とともに床へ落ちた。
「ぎゃっはっは! 滑稽だなぁ!」
いつか殺してやる。得物が見つかればすぐにでも殺してやる。何度も心で呪詛を唱えながら必死に手を動かした。
「もう⋯⋯やめてください⋯⋯優介くんを助けてあげてください⋯⋯」
彩香はずっと下を向いて泣いている。悲鳴を聞かせたくないのに、どうしても声が出てしまう。
ショックで痛みが無くなるんじゃないかと思っていたが、燃えるような激痛はずっと続き、嫌な汗がびっちょりと背中を覆った。
しばらく切り進めると、刃に硬いものがあたった。骨だ。
「どうした? また手が止まってるぞ?」
ニヤニヤした顔で彩香のスカートをつまみながら店長が言った。
「大丈夫です⋯⋯続けます」
大丈夫だ、大丈夫。
痛いけれど、苦しいけれど、これさえ終われば僕たちは自由だ。それからこいつに復讐をするんだ。
大丈夫。
骨を自分で傷つけるのは初めてだった。
上手くいくはずがなかった。
でも、愛する彼女のために、僕は諦めるわけにはいかなかった。
僕は力いっぱい目を瞑り、歯を食いしばり、ノコギリを引いた。刃は音を立てることもなく、骨の表面を撫でている。
刃が入らない。
そうだ、このノコギリ、錆びてるんだ。
そもそもノコギリで骨なんて切れるのか?
なんで僕が骨なんて切らなきゃいけないんだ?
1冊本を盗んだだけで、なんでここまで⋯⋯
悲しくなってきた。この状況の意味が分からなかった。この上ない理不尽だと思った。
「なんで僕がこんな⋯⋯」
気づくとこんな言葉を漏らしていた。
「なんでだと!?」
店長はそう怒鳴り、彩香の腹を力いっぱい殴りつけた。
「お前は! 昔から! 変わらねぇんだな! いつまで経っても! お前はクズだ! クズの彼女のお前もクズだ!」
店長は叫びながら何度も彩香の腹を殴った。
憔悴しきっていた僕にはそれを止める気力はもう残っていなかった。
彼女は口から赤い吐瀉物を吐くと、僕への恨みつらみを並べ始めた。ごめんよ、僕が巻き込んだばかりに⋯⋯
「そうだ、もっと言ってやれ! コイツに教えてやれ! 自分がどれだけクズかってのをな!」
店長はゲロにまみれた体を触りたくなかったのか、今度はこっちに来て僕の足を踏んだ。
「お前だけだよ⋯⋯」
「なに⋯⋯が⋯⋯ですか」
ストレスと激痛でおかしくなりそうだった。
「清水タケヒロと大場ユウジは謝りに来たぞ。泣きながら土下座して謝ってた」
清水タケヒロ? ユウジ? 聞いたことのある名前だ。昔の同級生だろうか⋯⋯
「お前は今日も一切謝らなかったな。どうせ悪いとも思ってねぇんだろ。小学生の頃から1ミリも変わってねぇんだな」
そうだ、小学生低学年の頃によく遊んでたやつらだ。
「1ミリも変わってねぇんだなぁ!」
そう言って腹を蹴り上げられた。
なんでいきなりキレるんだ。
「僕がなにしたっていうんですか⋯⋯!」
もう、許せなくなっていた。
この理不尽が許せない。
この男が許せない。
「お前俺の娘殺しただろうが」
「えっ」
「いじめて自殺させただろうが」
「知りませんよ!」
いやちょっと待てよ、自殺って言ったか⋯⋯?
「知らねぇわけがねぇんだよ⋯⋯。10年前の夏休み、娘は橋から身を投げて死んだ。お前らのいじめのせいでな」
そうかこいつ、あいつの、今井ハルカの父親か。小学生の頃死んだ、今井ハルカの⋯⋯。自殺だったのか。
「小学2年生だぞ? そんな小さな娘が心を病んで自ら死を選んだんだ。どれだけ辛かったか分かるか? あの子の気持ちがお前に想像出来るか!? なぁ!」
知らねぇよ。
なんでそんな昔のことで僕が言われなきゃならないんだ。
小学2年生なんて自分が人いじめてるかどうかなんて分かる歳じゃないだろ。それをこんなふうに言われたって僕のせいじゃないし、そもそも他の奴もいじめてたし。
そうか、だからさっきアイツらが謝りに来たって言ったのか。
「それから俺はおかしくなった。しばらく仕事も出来なかったさ。だがいつまでもくよくよしててもダメだと思って、アイツらからの謝罪と慰謝料を受け取って終わりにしたんだ」
指が痛い。血が止まらない。
「それで2度とお前らに会わないように、こんな遠くまで引っ越して1人で本屋を始めたんだ。そんな時、お前がうちで万引きをした。捕まえて顔を見た時は驚いたよ。で、それと同時に思ったんだ。『神様が復讐しろって言ってるんだ』ってな」
「うぅ⋯⋯うわぁあああーーっ!」
彩香が泣き出した。
「お前今泣くタイミングじゃないだろ!」
店長が訳の分からないことで怒っている。ずっと痛いんだからタイミングもなにもないだろ。
「だから早く指を切れ。命まで取るつもりはねぇからよ。これで完全にケジメをつけるつもりだ」
恐らく拒否したら殺される。もう本当に覚悟を決めて指を捧げなければ許されないだろう。
刃が入らない。
そうだ、これ錆びてるから切れないんだった。
「なにサボってんだ。早くやれ」
「錆びてて全然切れないんです」
「はぁ⋯⋯」
そうため息をついて店長が彩香のスカートを引っ張った。
「やめてください! じゃあどうすればいいんですか!」
理不尽すぎる。
「ノコギリなんかなくたって指くらいちぎれんだろうが」
「え、この部屋には他に刃物なんて⋯⋯」
「右手があんだろが」
「えっ!?」
こいつ、正気か?
「骨の手前までは切れてんだし、関節なんだし、グリグリやってりゃそのうち取れんだろ」
「簡単に言いますね!」
こっちはもう極限状態だっていうのに!
「俺は娘を殺されてんだ!」
「そればっかり言う!」
「お前、元気すぎねぇか? 反省してんのか?」
そういえば。なんか痛くなくなってきてたから元気になってしまっていた。脳から何かが分泌されているのだろうか。生物の授業で習ったアレが。忘れたけど。
よし、今ならいけるかもしれない。痛くなけりゃあとは力の問題だ!
「分かりました! やります!」
僕は右手で左の人差し指を掴んで捻ってみた。
「いぎぃっ!」
今まで味わったことがないほどの激痛が走った。指だけでなく、全身に響くような痛みだった。
ダメだ⋯⋯こんなの無理だ。
「やるんじゃなかったのか? やらなきゃお前ら2人とも殺すぞ」
なんでそこまでされなきゃならないんだ⋯⋯
元はと言えば本を1冊盗んだだけなのに。
僕は指を握り直し、1回でちぎれるように力いっぱい回転させたが、指はビクともせず、ただ痛みが襲うだけだった。
血でぬらつく指をそれ以上の力で握りしめ、前後左右上下右回転左回転と全ての方向に力を加えた。
ずっと体がおかしな反応をしていた。
汗が出たり止まったり、鳥肌が立ったりおさまったり、目がおかしくなったりした。
「遅ぇなぁ⋯⋯」
店長の方を見ると、彩香のスカートとパンティを脱がせていた。
「今やってんですよ! やめてください!」
痛みのせいで口調が強くなっていた。
「やっぱどうでも良くなってきたんだよなぁ。このままコイツとエッチしてお前ら殺して俺も死のうかなって」
なんてこと言うんだ!
「お前に復讐したってどうせハルカが帰ってくるわけでもねぇし、俺はずっと寂しいままだ」
こっちは痛みでおかしくなりそうになりながら頑張ってるってのに、なんでそうコロコロ予定変更されなきゃならないんだ!
「そんなことないですよ! 生きてれば絶対いいことありますって!」
僕は必死に止めた。指1本で済ませると約束したじゃないか。
「そんなことあるんだよ! なんでお前に決められなきゃならねーんだ!」
「そんなことをして、ハルカさんは喜ぶのでしょうか」
諭さねば、諭さねば死!
「喜ぶに決まってんだろうが! 自分をいじめたやつが死んで、大好きなお父さんに会える! 喜ぶだろうが!」
くそ、どうすれば⋯⋯!
もう、手はないのか⋯⋯
「うぅ⋯⋯うぅ⋯⋯」
泣くしか出来なかった。
「うあああああああああ」
店長も泣いていた。
それからしばらく2人で泣いた。
「俺も本当はこんなことしたくねぇのに⋯⋯」
店長が呟いた。
「お前が現れなかったら、俺はこのまま本屋を」
「そうしましょうよ。頑張って指ちぎるんで、そうしましょうよ」
いつか絶対復讐するけどな。
「そうか⋯⋯」
店長は目を瞑り、眉間に皺を寄せて考えている。
そんな中、彩香が口を開いた。
「あんたさ、こんだけしてタダで済むと思ってるの?」
そうだった、彩香も暴行を受けていたんだった。
「彩香、僕は大丈夫だから警察には言わないでほしいんだ」
「は? あんたじゃなくてあたしの傷よ! それに警察なんて頼らないわよ! アッチの人に頼んだ方が速くて確実なんだから!」
アッチの人⋯⋯?
どんなコネがあるんだ。
「じゃあもうダメだな。お前らを殺して俺も死ぬ。決めた。そう決めた」
せっかくさっきまとまりかけたのに!
「死ね!」
店長は持っていたボールペンで彩香の喉を刺した。
「ひぐっ⋯⋯! 許さない! あんたら絶対地獄に落としてやる! 死ね! 死ね! 死んじゃえー!」
彩香は首と口から血を吐きながら僕たちに罵詈雑言を浴びせた。なんで僕まで。
店長が何度か繰り返すと、彩香は動かなくなった。
そして、店長はこっちを向いて笑った。その目は完全に狂っていた。